ネットアップは10日、他社製ストレージ製品を含む異機種混在環境でも、同社ストレージOS「Data ONTAP」による一元管理が可能なストレージ仮想化専用システム「NetApp Vシリーズ」を、本日より提供開始。同製品に関する記者発表会を開催した。

異機種混在環境でのストレージ仮想化を実現

今回発表された「NetApp Vシリーズ(以下、Vシリーズ)」は、エンタープライズデータセンターの異機種混在環境において、ストレージの仮想化を実現する専用システムだ。最大の特徴は、他社製ストレージのボリュームを認識し、同社のストレージOS「Data ONTAP」のストレージプールに組み込めること。

異なる管理インタフェースやデータ管理ツールにより構造が複雑化した従来環境

これにより、Vシリーズを他社製ストレージのヘッドユニットとして搭載することで異機種混在環境での一元的管理が行えるほか、同社が提供する豊富なストレージ管理機能を利用可能になる。また、既存のストレージ資産を有効活用できるため、運用プロセスの単純化を含めてコスト削減効果も見込めるという。

資産を有効活用しながら段階的な環境移行が可能

Vシリーズには、他社製FC SANストレージをNASシステムに変換する「NASゲートウェイ」、他社製FC SAN製品にData ONTAPの機能を提供する「SANシステムへの機能拡張」、iSCSI化が行える「iSCSIゲートウェイ」という3つの用途が備わっている。各企業の環境に応じて使い分けることで、既存のストレージ統合と利用効率の向上、管理の共通化とリソースの再配分、SnapshotやDR機能による強固なデータ保護機能の提供が可能になり、効率性・柔軟性・信頼性を兼ね備えたデータセンターが実現できるわけだ。

Vシリーズによる提供機能と対応範囲

Data ONTAPが備えている多彩な機能性

Vシリーズの主なターゲットとしては、異機種のストレージ混在により管理が困難な企業のほか、ストレージインフラ全体の仮想化を実現したい、同社のストレージ管理機能を活用したい、既存のストレージ利用効率が低い、SANストレージをNAS変換したい、といった企業などが挙げられた

マーケティング本部 ソリューションマーケティング部 部長の阿部恵史氏

マーケティング本部 ソリューションマーケティング部 部長の阿部恵史氏は「最新バージョンのData ONTAPでは、他社製と自社製のストレージが混在して接続できるようになった。これにより、他社製品が混在した環境でもWAFL、FlexVol、Snapshotなど弊社独自の機能提供が利用できるほか、資産を有効活用しながら段階的にData ONTAPメインの環境へ移行することも容易」と語る。

また、ストレージインフラとしての仮想化ポートフォリオについては「弊社では仮想化対応ストレージインフラとISV/IHVアライアンスパートナーのソリューションを連携し、今後もデータセンター全体のインフラ仮想化に取り組んでいく」とし、Vシリーズのインプリメンテーションに関しても必要な場合にはプロフェッショナルサービスが提供されるという。

Data ONTAPが持つ数々の管理機能も利用可能

ソリューションマーケティング担当 シニアマネージャーの瀧川大爾氏

Vシリーズの詳細解説については、ソリューションマーケティング担当 シニアマネージャーの瀧川大爾氏が担当した。瀧川氏は「ストレージの異機種混在環境では、仮想化のしづらさや管理の難しさが大きな問題になっています」と語る。

確かに、従来の異機種混在ストレージ環境にはそれぞれ異なる管理インタフェースやデータ管理ツールが使用されており、結果的に環境自体が複雑なものとなっていた。しかし、Vシリーズではマルチプロトコル対応のコントローラにより、異機種混在のストレージ環境をData ONTAPで一元管理することが可能。

ストレージインフラ仮想化ポートフォリオにおけるVシリーズの位置付け

シンプルな単一の管理インタフェースを利用できるほか、ファイルおよびブロックシステムを単一システムに統合したり、急速なパフォーマンスや容量に対する要件変化にも柔軟な対応が行える。

Vシリーズでは、ベンダー各社が作成したストレージLUN(Logical Unit Number)を利用することで、ストレージリソースをストレージプールとして管理可能。仮想ボリュームを切り出す工程自体はFASシリーズと同様で、ボリュームの作成や複製も簡単かつスピーディーに行える。

ストレージについてはIBM、HP、日立、EMC、富士通、3PARなど各社の製品に対応。Data ONTAPを用いた一元管理により、仮想ボリュームとシンプロビジョニング、Snapshotによる高速バックアップ、仮想クローンによる高速な複製、重複排除機能(Deduplication)、マルチプロトコルゲートウェイ、災害復旧(DR)機能なども利用できるという。

Vシリーズに対応する他社製ストレージ製品

最後に顧客事例として、テレコム系の米国企業における例が紹介された。この企業では総容量1000TBにおよぶ異機種混在環境により、管理の複雑化に加えてデータバックアップ時の低い信頼性とボリュームの逼迫が問題となっていた。ここにヘッドユニットとしてVシリーズを接続したところ、ストレージの利用効率は2倍に向上したという。さらに、従来70%のバックアップがSnapshotで100%に向上、6時間-1日がかりのリカバリ時間が1時間に短縮、ストレージ管理者数が3人から1人に削減、テープバックアップ接続用HBAを削ることでホスト接続数が1/3に削減、500以上ものNetBackupソフトウェアエージェントを削減、といった数々の成果を発揮したという。

Vシリーズは同社ストレージシステム「FAS3000」「FAS3100」「FAS6000」に対応する形で、管理可能な最大ストレージ容量が168-504TBの「V3000」が3機種、420-840TBの「V3100」2機種、840-1176TBの「V6000」4機種というラインアップが用意されている(エントリーモデル「FAS2000」には非対応)。

参考価格は、最大ストレージ容量168TBの「V3020」が1120万7000円、1176TBの「V6080」が5414万9000円だ。

Vシリーズの全製品ラインアップ