「エネファーム」ロゴ

水素と酸素を化学反応させて発電する燃料電池。ホンダが新型燃料電池車「FCXクラリティ」の生産を開始するなど、自動車への搭載の話題でご存知の方も多いだろう。この燃料電池が、分散型で持続可能性の高い家庭用電源として、表舞台に立とうとしている。経済産業省資源エネルギー庁が主体となり、2005年度から大規模な実証実験を継続しており、2007年度までに2,187台が一般家庭に設置された。耐久性や省資源/低炭素性についての実証データが蓄積・公表される中、2008年度も新たに1,120台が追加設置され、2009年度から世界初の量産販売が開始される。

本レポートでは、資源エネルギー庁、新エネルギー財団を始めとする行政団体やシステムメーカーに取材した内容を元に、家庭部門におけるCO2排出削減の切り札と目される家庭用燃料電池コージェネレーションシステム「エネファーム」を徹底解説する。

初めに、エネファームの基礎知識を押さえておきたい。エネファームは家庭用燃料電池コージェネレーションシステムの統一名称で、各家庭に設置して使用する自家発電&給湯装置だ。装置は、都市ガス/LPガス/灯油のいずれかから水素を取り出し、酸素と化学反応させて発電する発電ユニットと、排熱であたためたお湯を貯めておく貯湯ユニットからなる。ちなみに、コージェネレーションシステムとは、エネルギー資源から複数のエネルギーを取り出し総合的なエネルギー効率を高めるしくみの総称。エネファームの場合は、燃料から熱エネルギーと電気エネルギーを取り出す。他にも、東京ガスのエコウィル(都市ガスを燃焼させタービンを回して発電し、排熱を給湯に利用するガスエンジン式システム)が実用化されている。

左上から時計回りにENEOSセルテック製/パナソニック製/荏原バラード製/トヨタ自動車製/東芝燃料電池システム製

発電ユニットの定格出力は1kWまでが主流で、足りない分は電線からの電力供給を利用する。また給湯についても、貯湯ユニットにはバックアップ給湯器が付随しており、お湯を使い切ったときには給湯器に切り替わる。需要に対する供給量は、電気が約4割でお湯が約7割となっており、前出の実証実験で、購入電力量が43%減少したグループも出現している (3~5人世帯相当の消費世帯207世帯の平均/2005年度実績、以下同) 。

買電や給湯バックアップが必要になってしまうにもかかわらず、定格出力を1kWまでに設定されているのは、お湯の生産量を、使い切れる量に調整することを前提にシステムを設計しているから。つくったお湯を余らせては、省エネ効果が相殺されてしまう。電気に関しても、余剰分を電力会社が買い取る体制が整っていないため、太陽電池(4kW前後が一般的)と同レベルの高出力ではかえって、燃料の無駄になってしまうのだ。ENEOSセルテックの親会社である新日本石油 新エネルギーシステム事業本部 FC・ソーラー事業部長 山口益弘氏は、「キャパシティを小さくしてフル回転させたほうが効率がよく、小型化低価格化しやすい」とも説明する。

なお、実績データの対象世帯を見てもわかるとおり、効果が得られるのは比較的エネルギー消費量の多い家庭。経済産業省資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギー対策課 燃料電池推進室(以下、燃料電池推進室)によれば、「電力使用量が600kWh/月以上、熱エネルギー使用量が都市ガス換算で40m3/月以上が目安。それ以下の、例えばワンルームマンションでの一人暮らし世帯など電気やお湯の使用量が比較的少ない世帯では、かえって増エネになるので、エコジョーズ(せん熱回収型高効率給湯器)などの方が向いている」とのことだ。

さて、エネファームが通常(火力発電(※1)+従来の給湯器(※2))のエネルギー供給に対して優れているのは主に

1 省資源性が高い
2 低炭素性が高い
3 水素はさまざまな原料から取り出せる

の3点だ。ここからは、各メリットごとに解説を深めていきたい。

※1重油を燃料とする火力発電と液化天然ガスを燃料とする火力発電の平均 ※2従来の給湯器とは、灯油やガスを燃焼させた熱エネルギーでお湯を温めるタイプの給湯器を指す