日立製作所 代表執行役 執行役副社長 情報・通信グループ長&CEO 篠本学氏

日立製作所は、17、18日の両日、東京国際フォーラムにて「Hitachi uVALUE CONVENTION 2008」を開催している。17日の初日には、日立製作所 代表執行役 執行役副社長 情報・通信グループ長&CEO 篠本学氏による「新たな協創がひらく情報社会ルネサンス - 人、地球にやさしい知的創造社会をめざして -」と題する基調講演が行われた。

篠本氏は、まず現代社会における新たな課題として、地球温暖化、都市鉱山、情報爆発とITデバイドを挙げた。

都市鉱山については、「日本には資源はないが、機器や部品に含まれる量は相当ある。ドイツの独立法人が試算した資料によれば、日本のレアメタルの量は、世界の埋蔵量の1割を超える。これは、まさに都市鉱山と呼べる。一度使われたものをいかに有効に活用するか。資源消費型から資源循環型への転換が必要だ」と語った。

情報爆発とITデバイドについては、経済産業省の「内閣府イノベーション25戦略会議」での、情報流通量は、2025年には2006年の190倍になるとの予想資料を示し「まさに情報大爆発の時代である。一方、このような情報をうまく活用できない人もいるという問題もある」と述べた。

独立法人 物質・裁量研究機構(MIMS)が発表した日本の蓄積量

経済産業省 内閣府イノベーション25戦略会議によれば、2025年の情報流通量は2006年の190倍になるという

そして、このような現在の課題を解決し、人にやさしい、地球にやさしい社会を実現するための解決の鍵は「知恵」であると述べ、「ものと情報を中心とした取り組みだけでは、打開は難しい。それに知が融合することにより問題解決できる」と語った。

篠本氏は、もの、情報、知が融合し、それらが連携することによって、地球規模の問題も解決できると語った

そしてさらに、「情報、もの、知の融合を図り、他の知と連携して協創を進め、新たな価値を創出して社会に貢献していく、これが今後の企業の使命である」と述べ、このような新しい協創の時代になるにあたり、企業は「競争」から「協創」へ、「Winner Takes ALL」から「Win-Win」の関係へ、「主張」から「調和」へ、「囲い込み」から「強調連携」へ、「個別最適」から「全体最適」へ、「イノベーション」から「リノベーション」へ転換する必要があると語った。

我々は「新たな協創の時代の入り口に立っており、企業は狩猟社会型から農耕社会型への転換が必要だという

篠本氏はこのような協創が新たな価値を生んだ例として、マイコン、電気機器、自動車が融合したハイブリットカー、入退出管理、電子マネー、乗車券が融合したICカード乗車券、トラック・鉄道、GPS、物流ノウハウが融合した物流の最適化などを挙げた。

協創が新たな価値を生んだ例

日立が取り組んだ協創の例。富士重工業と共同で開発した車載用ステレオカメラ。2つのカメラで前方の車や人を検知し、衝突を回避する

環境への貢献では、農業情報管理システムが紹介された。衛生写真をもとに小麦の水分量を測定し、最適な刈り入れ時期を判定する。これにより、小麦の乾燥時間を短くしたり、刈り入れ時のコンバイン移動の最短ルートを算出するなど、燃料を節約する

そして最後に、「従来のサービス提供モデルは、リアルな社会にサービスを提供する一方向の形態であった。これからは、提供したサービスの結果をフィードバックして、さらに高付加価値サービスに変換して、次の新たなサービスを提供する形態になる。まさに、知を創出するKaaS(Knowledge as a Service)が、これからのサービスの形態だ」と語った。

KaaS(Knowledge as a Service)による高付加価値ビジネス