独Software AGの日本法人、ソフトウェア・エー・ジーは、レガシーシステムについての戦略、当面の日本市場での施策についての基本方針を示した。国内大手企業の基幹部分に依然として、多く存在する大型汎用機(メインフレーム)の資産を全面的に排除することなく活用し、Web化とともに、SOAと結び付け、企業のシステム刷新のためのコストを軽減化するとともに、競争力強化を支援していくことを同社では目指している。

独Software AG エンタープライズ・トランザクション・システム事業部 プロダクトストラテジー バイスプレジデントのギドー・ファルケンベルク氏

独Software AGエンタープライズ・トランザクション・システム事業部 プロダクトストラテジー バイスプレジデントのギドー・ファルケンベルク氏は「大企業のトランザクションシステムは現在、メインフレーム上で稼動していることが多い。トランザクションプロセスについては、パフォーマンス、信頼性、安全性などの点で、メインフレームと同等といえる技術は、未だにないのでは」と話す。一方で企業が置かれている環境は大きく変わっている。「さまざまな規制により、法令順守により厳格に対処しなければならない。新製品をいち早く市場投入しなければならない」(同)など、課題は山積している。

問題解決のための策として、一つは旧来のシステムを廃棄して、新しいものへと完全に変容させてしまうことだが、同社はもう一つの解「アプリケーション・モダナイゼーション」を提案している。これは、基本的にはメインフレームを存置したまま「システムの中核を生まれ変わらせ、エンドユーザーが使いやすい環境にすることができ、パッケージとの相互運用性も確保できる」(同)手法だ。「企業は変化への対応のため既存システムの改編という選択を迫られているわけだが、システムの総取替えは費用が高くなり、危険もともなう。メディアにはあまり出てこないが、総取替えの失敗事例は少なくない」(同)という。

「アプリケーション・モダナイゼーション」の基軸となる製品が、「webMethods Application Modernization スイート」だ。既存システムの機能をWeb上から利用できるようにする「Web Edition」、データの統合化を図る「SQL Edition」、SOAとの橋渡し役となる「SOA Edition」の3つの構成要素からなる。

「Web Edition」は「まるで、ブラックボックスとでもいうようなユーザーインタフェースの画面を、Webインタフェース向けに新しくすることができる。この機能により「バックエンドがメインフレームであるか、Javaスクリプトであるかを、エンドユーザーに意識させない」(同)ようにでき、複数のアプリケーションの操作環境を単一のインタフェース画面に集約することも可能だという。

ビジネスプロセスは「いくつかのアプリケーション、プラットフォームを介し、さまざまな部門間に渡って実行される」(同)。これらのデータと、「メインフレームやレガシーのアプリケーションを統合させる」(同)機能を担うのが「SQL Edition」だ。「SQL Edition」は、データソースに対し、SQL標準に則ったアクセスが可能で、いわば、企業内のデータ全般が、一つのデータベースに格納されているのと同様な環境を構築でき「360度の視界で、一つのビューでデータをみることができる」(同)。

今後、企業が競争力を強化するうえで、最も重要な要因の一つは、やはりSOAだろう。「SOA Edition」は、既存のアプリケーション資産を基本的に、大規模なプログラミング変更をすることなく、Webサービスに変換することが可能だ。最新のプラットフォームとの接続の中心となるのは「webMethods ESB(Enterprise Service Bus)」だ。「ESBは多様なアダプタを持っており、メインフレームを、オラクルやSAPのアプリケーションと統合する」(同)機能を備えている。

SOA化は、システムの自動化や統制を可能にし、全体的な監視が実現する。ファルケンベルク氏は今後のビジネスプロセスのあり方として、目標達成、業務改善のためビジネスの流れを管理・制御するBPM(Business Process Management)とSOAのつながりが重要になると指摘、「『webMethods Application Modernization スイート』が大きな意味をもってくる。メインフレーム上のアプリケーション、データをBPMに取り込んで、活用することが可能になる」と述べた。

ソフトウェア・エー・ジーの福島徹社長

ソフトウェア・エー・ジーの福島徹社長は「日本は、メインフレームの設置数が多く、世界でも上位3つにはいるほどのメインフレーム大国といわれる。Software AGはもともとメインフレームの技術に強かったが、(2007年に)SOAに通じている米webMethodsを合併し、メインフレームとSOAという二つのメリットを提供していけるようになった。メインフレームが稼動している企業のなかには、何とか新しく改編したいが、リプレースは困難、いっぺんに実行するのは危険、というような問題を抱えているところがある」と語り、そのような企業に、同社の技術の価値を伝えていきたいとの意向を示した。