ガートナー ジャパンは、「ガートナービジネス・インテリジェンス&情報活用サミット」を開催、初日の基調講演には、ガートナーリサーチバイスプレジデントの堀内秀明氏が「BIトレンド2008」と題して登壇。米国の大手IT企業による相次ぐBIベンダーの買収、新技術の導入による変化など、新しい時代を迎えているBIの現状と、今後の方向性について解説した。堀内氏は「BIはもはや、単なるツールではなくなっている」と指摘、企業内でのBI活用促進のためBIのコンピテンシーセンター設置を提案、BIもSaaS、クラウドコンピューティング型の利用形態が広がることなどに言及した。
同社によると、世界ではすでに、CIOが優先する技術要素の1位はBIだという。日本でも2007年には9位だったが、2008年には3位になった。BIの重要性は国内でも認識が広まっているわけだが、「無秩序な拡大」が進んでいるようだ。結果指標の確認や報告が中心となり、非効率で企業全体の戦略にも基づいていない状況がみられる。「情報は資産、資源でなければならない。使ってみてはじめて価値が生まれる。使われない遺産であってはいけないのだが、BIツールの導入そのものが目的になってしまう例もある」(堀内氏)。
それでは、BIとは何か。データ利用の典型的な形態としては、まず帳票がある。日々の業務に必要であるが、そのニーズは固定的ではない。一方、エンドユーザーコンピューティングは日常業務に有用であるかどうかは必ずしも明確ではないが、一定のデータにより、その範囲内で自由な分析が行われる。さらに、ビジネスクリティカルな領域では、分析アプリケーションにより、高度な統計・解析の手法を駆使したデータ利用が実行されている。BIとは「これらのデータ活用の視点で、かゆいところに手が届くものではないか」という。BIはエンドユーザーコンピューティングの延長線上にあり、分析アプリケーションは、扱うべき対象が拡大しているというわけだ。
BIは、情報を分析することにより、判断やパフォーマンスを最適化することを目的とするものと考えられるが「ツールは重要ではあるが、BIのごく一部でしかない。最も重要なのは、ビジネス戦略であり、これに基づいて分析が行われなければならない。さらに、情報管理基盤、やはり、人、プロセスが重要であり、その強化のため、当社では、BIコンピテンシーセンター(BICC)の設置を提案している」。ビジネス、IT、分析、この3つのスキルがバランスよく発達するよう、組織的に取り組むのがBICCだ。しかし、同社の調査では、BICCを設置して大きな効果をあげているのは2%にすぎず、ある程度の効果があがっているのは19%、他方、BICCを知らないが26%、興味はあるが設置していないが25%あったという。
技術の面からみて、BIアプリケーションはどのように進化していくか。堀内氏は「意思決定プロセス」「情報へのアクセスと分析」という2つの軸の下に、次の4つの方向性を示す。「意思決定工場」との発想では、事前定義型で、アクセスすべき情報、すべきことは決まっている。「情報ビュッフェ」という概念では、情報は限定的だが、意思決定がそのつど変わる。マネージャクラスが求められる部分だ。次は「新世界の開拓」で、意思決定はそのつど変わるとともに、アクセスすべき情報はきわめて多い。「ここ数年、この部分では、グーグル、ヤフーによる検索で、そこそこの情報は得られるようになった」(堀内氏)。最後に「仮設の検証」という視点では、すべきことは決まっているが、見るべき情報は幅広くなるという。
検索はインターネットのなかでは、キーワードの設定で、それなりの答えが出るが、最近では検索とBIの融合が語られているという。「検索は漠然としたもののなかから探すのには有効だ。BIは、特定の情報をきっかけに、参照情報を拡大する。大量のレポートのなかから、必要なレポートを探す場合、現状の検索エンジンでは十分ではないが、今後、キーワードで、売り上げ比較できるレポートを見つけ出せるような技術が実現するかもしれない」。
同社は「2012年までに、新規ビジネス・アプリケーションの75%に、BIプラットフォームがサービスとして組み込まれる。『クラウド』ベースのBIサービスやアプリケーションが、広く採用されるようになる」との仮説を立てている。
2007年に、大手IT企業がBIベンダーを次々買収したが、むしろ「独立系ベンダーの取り組みが革新を牽引する」と堀内氏はみている。ただ、現実には有力な製品をもつ大手企業からBI製品を購入しなければならない局面もあるだろう。その場合、メンテナンス、アップグレードなどの点で、そのベンダーに依存することになるが、「機能面で不足する部分で、特徴のあるベンダーの提供している要素を取り入れるなどの措置をとれば、囲い込まれることは免れる」。最近ではBIツールは、アプリケーションのなかに埋め込まれていたりするようになっているが、「1つの企業内で、それとは別途にBIへの取り組みをしているなど、同じことを2箇所でやってようなこともある」ことから堀内氏は、「IT部門には、全体のコーディネートの役割がより求められる」としている。