独SAPは19日より3日間、ドイツ・ベルリンで年次カンファレンス「SAPPHIRE 2008 Berlin」を開催した。業務アプリケーション市場での戦いが激化する中、最大手SAPはどのような戦略で勝ち抜くのか。20日、次期CEOのLeo Apotheker氏が基調講演を行った。
新しい技術が次々と出てくるが、ビジネスを取り巻く環境も大きく変化している。Apotheker氏はこれをフラット化とまとめる。インターネットが普及して情報が入手しやすくなると、消費者にパワーがシフトする。一方で、新しい競合が思いがけない分野から現れ、少し先を読むことが難しくなっている。さらには、新興市場の影響は大きくなっており、経済環境も先行き不安な状態だ。「より高速で、不安定」 --- これが、いまの時代を形容する言葉となる。この状態は当分は続くだろう、とApotheker氏は続ける。
このような環境では、何が起こっているのかを理解し、問題を識別することが必要となる。そうすれば、迅速に行動に移し、チャンスに変えることができるからだ。
SAPは業務アプリケーションからこれを支援する。環境の変化に自社ビジネスを柔軟に合わせるためには、1社では無理だしリスクが高い。SAPはここで、「ビジネスネットワーク」を提唱している。ビジネスネットワークは、企業(個人)であれば、誰もが関係あることだ。これなしには市場参入が難しいし、製品開発を効率よくできない。
ビジネスネットワークの"入場券"となるのが、優れたオペレーションだ。そして、ビジネスネットワークが威力を発揮するためには、自社のプロセスか他社が実装したプロセスに適応できることも必須となる。最後に必要になるのが洞察だ。
「ビジネスネットワークを活用すれば、自社のビジネスモデルを変換できる。最終的にはビジネスネットワークそのものが変換する」(Apotheker氏)
これを支援するのが、主力製品「SAP Business Suite」とインテグレーションプラットフォーム「SAP NetWeaver」だ。ビジネスネットワークの活用とエンドツーエンドでのプロセスを可能にし、効率と柔軟性を備えた屋台骨として、プロセスの拡大を支援する。
Business Suiteでは、「SAP ERP 6.0」はすでに1万社がマイグレーションした。24の業界でベストプラクティスに基づくソリューションがあり、2,800種以上のサービスがある。今後も顧客、パートナーと協業し、競争力強化のための機能を開発していく。NetWeaverではSAP、SAP以外の統合が可能となり、事業戦略に合わせてプロセスを自在に組み合わせることができる。
Apotheker氏はSAP技術を利用して変革を実現した顧客として、ゴム製造から携帯電話に、現在はサービス/ソフトウェアにフォーカスを移しているNokia、ビジネスプロセスを標準化することで、グローバルでのビジネス展開を大幅に改善したいうColgate Palmoliveらの代表者をステージに招き、事例を紹介した。
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Paul McGarry氏 |
中でもColgateでEMEA・APACグローバル情報技術担当のPaul McGarry氏は、SAP製品により、「ビジネスを合理化し、サイクル時間を削減、顧客満足度を改善している」と話す。
同社のシステムは、SAP ECC 6.0を土台に、GRC(ガバナンス、リスク、コンプライアンス)を間に挟みメタデータ管理の層を置く。この上にSCMやPLMなどのアプリケーション、そしてBI・レポーティングを乗せるという構造だ。世界中に拠点を持つ同社はこれまで、全社的なSAP導入を進めてきた。1996年には25%だったSAP導入率が、2002年には75%、昨年には99.6%を達成。基盤が揃ったところで、今後は、新しい技術を導入しながらネットワークを拡大していく目標だという。
SAPはまた、会期中、独Daimlerからの受注も発表している。SAPはDaimlerのグローバルパートナーとして、グローバルにSAP技術を実装することになった。これにより、3万5,000人の新規ユーザーを加えることになる。