富士通は9日、同社の組み込みソフトウェア「Inspirium」シリーズのラインナップ強化として、新たな機能を搭載した2製品と機能強化を図った2製品、計4製品を5月14日より販売開始することを発表した。

新製品は「Inspirium 辞書検索ライブラリ V1.0」ならびに「Inspirium HomeNetwork ライブラリ for ネットTV V1.0」の2製品。

Inspirium 辞書検索ライブラリ V1.0は組み込み機器向け電子辞書検索エンジンで、広辞苑クラスの大規模辞書機能を追加することが可能となる。インデックスおよび本文テキストの圧縮技術の開発により、辞書コンテンツサイズは広辞苑第五版(テキストのみ)で比較した場合、EPWING形式で143MBであったものが、69MBまで圧縮されており、メモリ容量が少ない機器への搭載を可能としている。

全文検索に対応し、マルチメディア電子辞書としても利用できる

富士通 ソフトウェア事業本部 組込みソフトウェアテクノロジ事業部 長田格氏

また、圧縮検索技術を採用することにより、全文検索を可能としており、「400MHzのCPUを用いた機器の場合、23万項目の辞書(広辞苑)での全文検索は1~2秒以内で行うことができる」(富士通 ソフトウェア事業本部 組込みソフトウェアテクノロジ事業部 長田格氏)という。

Inspirium HomeNetwork ライブラリ for ネットTV V1.0は、デジタルテレビ情報化研究会が策定した「ネット家電操作機能」を実装した"ネットTV端末"や"ネット家電機器"の開発を支援するソフトウェア。同ソフトを用いることにより、デジタルテレビから給湯設備やエアコンなどの生活家電の設定や操作を行うことができるようになる。

ネットTV端末"や"ネット家電機器"から給湯設備やエアコンなどの生活家電の設定や操作ができるようになる

機能強化された製品は「Inspirium UI マネージャー V2.0」および「Inspirium UI ライブラリ V2.0」の2製品。

Inspirium UI マネージャー V2.0は、組み込み機器のUI実行基盤ソフトウェアで、XMLによるUI定義データとプログラムロジックを分離したソフトウェア構成を採用することにより、デザイナとプログラマの平行開発を可能としている。

また、エイチアイの提供する3Dレンダリングエンジン「MascotCapsule」を使用することで、3次元空間の自由度を生かしたリスト形式を実現する3D-UIを1つの定義だけで2D-UIと切り替えて使用することが可能だ。

3DのUIを使用することも可能

さらに同ソフトでは、1つの定義でさまざまな文字サイズを使用した最適な画面レイアウトを作成することができる。「これにより、これまでレイアウトに合わせC言語で作成する必要があった手間を省くことが可能となった」(長田氏)という。

1つの定義でさまざまな文字サイズを使用した最適な画面レイアウトを作成

Inspirium UI ライブラリ V2.0は、家電製品や産業機器、事務機器などの表示パネル向けのGUIを実現するためのライブラリ。コア部分をオープンソースの開発ツール「WideStudio/NWT」のランタイムライブラリを組み込み向けに高品質化したもので、LinuxやITRONなどの異なる環境でも、1本のソースコードで同じルックアンドフィールを実現することができる。

また、Eclipse NABプロジェクトが提供するプラグインにより、Eclipse統合開発環境を利用して、GUI開発を直感的に行うことができる。

さらに、GUIアプリケーション動作後のリグレッションテスト(出荷確認試験)にかかる工数を削減することが可能な自動化テストツールをソフトウェア開発キット(SDK)の1部として提供している。実際の例では、「人手で20日かかっていたものが2日に短縮された」(長田氏)としている。

なお、4製品の販売に際し、同社ではInspirium全体で今後3年間で60億円の売り上げを目指すとしている。