Samsung電子は4月28日、記者会見を開き、同社のBlu-ray(以下、BD)戦略について明らかにするとともに、新製品の発表を行った。

「Blu-ray市場が急速に成長」の理由

Samsung電子は今後、Blu-ray市場を活性化させ、次世代光学メディア市場をリードする計画であることを明らかにした。同社がBDプレーヤーの販売に本腰を入れていくという意思志表示であり、今後同社を通じて多様な製品が登場してくることが予想される。

同社がBDプレーヤーの販売に本腰を入れるのは、市場の需要が増すと見込まれるからだ。今回の記者会見で戦略の説明を行った、Samsung電子 デジタルAV事業部長で副社長のチョン・ドンス氏によると「BD全体の市場は2012年までに、年平均80%以上成長したこととなる5,100万台水準になると予想される。今年は控えめに見ても前年比で3倍以上成長したこととなる500万台水準と予想されるが、それ以上に活性化させることは可能だ」と自信を見せた。

このようにBD需要が急速に増加すると同社が自信を持つ理由について、いくつか説明がなされている。

ひとつはすでに広く知られているように、BDが東芝陣営のHD DVDとの競争にを勝ち抜き、今後次世代光学メディアの主役になることがはっきりしたためだ。これまではHD DVDかBDかということで、メーカー、コンテンツプロバイダ、顧客ともに市場を慎重に見守る姿勢だったが、BDに絞り込まれたことで市場が活性化することが予想されるのだ。

普及のためにはプレーヤーの価格やタイトル数も重要だが、これに関してチョン氏は「DVDはプレーヤーが299米ドル水準になり、タイトルが1,000個を突破した時点から、関連市場が形成された」と述べている。BDもこれと同様と考えられるわけだが、そうなるであろう時期が2008年末と見られている。1,000タイトルに達するまでの予想期間は、DVDが約4年半、BDが2年半とBDが圧倒的に速い。

さらに同社ではHDTVの需要の増加も、BDの普及要因になると説明する。チョン氏によると韓国内でのHDTVの普及率は28%程度だという。世界的に見てもHDTVは急速に普及してきている。HDTVユーザーは、テレビの表現能力に見合うような映像が見たいという欲求があるため、これに伴ってBDの需要も増すと見込んでいるのだ。

このほか自社の技術力にも、Samsung電子は自信を持つ。「Samsung電子は1998年から、次世代光学メディア分野の研究開発を継続してきた」とチョン氏が述べるように「ハードウェア技術からファームウェアなどのソフトウェアソリューションまで」(チョン氏)幅広い技術を確保し、その成果として「2006年6月、世界で初めてBDプレーヤーを販売した」(チョン氏)ことで、BD市場を拡大するための大成は整っているといえる。あとは「どう売っていくか」が大事になってくる。

Samsung電子のBlu-ray戦略について説明をしている、同社デジタルAV事業部長で副社長のチョン・ドンス氏

DVDおよびBlu-ray市場の変化について示した折れ線グラフ(単位:1,000台)。左がDVD、右がBlu-ray。黄色の棒グラフがある部分が、1,000タイトルを越えた/超えるであろう時点

Blu-rayのタイトルは、現在約540種販売されている模様だ。2006年6月時点で10タイトルだったものが、2008年末には1,000タイトルが予想される。最も多くタイトルを出しているのはSony/MGMの133種で、合わせたシェアは24.6%となる

HD TVの需要増加を、青の棒グラフで示したもの(単位:1,000台)

テレビ/プレーヤーなどをセット販売で市場拡大

先のチョン氏によると「これまではテレビはテレビ、AV機器はAV機器と、別々に売られていたが、今後はセットとして販売されていくだろう」と述べている。

テレビだけ良くてもスピーカーがいまひとつだったり、プレーヤーが高機能でもテレビの画質が劣るのでは意味がない。ということで、テレビやプレーヤー間のバランスが取れたものが求められていくということだ。そのためSamsung電子ではテレビやプレーヤーなどがセットになった製品を、積極的に販売していく考えだ。ちなみにこうした販売方法で「現在、(Samsung電子は)LCD TVでシェア1位となっているが、今後はBDプレーヤーでも1位を狙う」(チョン氏)姿勢を見せている。

また機器だけでなく、多様なサービスも連携することで「競合他社と差別化を図りたい」(Samsung電子)としている。BDプレーヤーやホームシアターと、Full HD TVやカムコーダなどと連動して、インターネット経由で画像をアップロードしたり共有できたりできるようなサービス連携を目指す。コンテンツを単に再生するのではなく、「作り・再生し・見せられる環境」を提案するのが、Samsung電子の狙いだ。

今後はFull HDカムコーダの販売も予定しており、当日、製品を公開していた。

記者発表会場で公開されていたFull HDカムコーダ

Blu-ray新製品2種

こうした戦略の下、Samsung電子ではこの日、2種の製品を発表した。

1つはプレミアムモデルである、4世代BDプレーヤー「BD-P1500」だ。デュアルデコーディングを通じた「BONUS VIEW」機能が最大の特徴。これにより映画の本編を視聴中に、俳優へのインタビューやメイキングシーンといった内容を、Picture in Pictureで見ることができるほか、内蔵フラッシュメモリを通じて、ゲームの進行途中までの状態を保存しておいたりすることができる。

さらにインターネットやUSBメモリを通じて、ファームウェアをアップグレードすることも可能だ。

BD-P1500

また2世代BDホームシアターの「HT-BD2F」は、BDの本格的な普及拡大のために投入する製品だ。5.1チャンネルのスピーカーを採用し、価格を999米ドル程度と抑えてあるのが特徴だ。ブラックハイグロッシーのデザインにもこだわっているのが、普及型モデルの特徴となっている。

HT-BD2F

Samsung電子では今回の製品を「攻撃的なマーケティングの始まりを飾る製品」と述べる。これにより「BD事業を、売り上げ基準で2008年で4,000億ウォン規模に、2010年には1兆ウォン以上までに育成していきたい」(Samsung電子)と目標を掲げた。

慎重に動いていた市場が、急激に動き出したことが感じられる。Samsung陣営の新たな動きに対して、Sonyなど競合他社はどう迎え撃つのか、市場の覇権争いの行方はどうなるのかなど、BDに関して今後注目すべき点は多そうだ。