情報処理推進機構(IPA)は11日、「第29回 情報処理産業経営実態調査報告書」を公表した。情報処理産業の財務・経営状況の現状を把握し、今後の経営の参考に供することを目的に、1978年以降毎年実施しているもので、今回の調査ではアンケート調査にヒアリング手法を加え要因分析に力点を置いたこと、ITスキル標準V2の活用状況および組込みスキル標準(ETSS)の活用状況について調査・分析したことが特徴。2007年12月に4,000社を対象に実施し、有効回答数は723社。
売上高の状況を見ると、2006年度の情報処理産業の売上増減率は+2.5%と4年連続プラス成長となり、2005年度の増減率0.8%を上回った。情報セキュリティ分野/コンテンツ関連分野/日本版SOX対応による一時的需要増などが貢献しているものと見られ、規模別では大企業の売上高の伸びが+3.7%となったが、中小企業の売上高は-0.9%と減少した。
受注ソフトウェア中心のソフトウェア開発を行っている企業において、元請けと下請けそれぞれの労働生産性を比較すると、労働生産性は元請けの方が下請けよりも高い。その理由として、元請け企業は労働集約的な業務を下請けに外注化する傾向があることが考えられる。
下請けの中でも「元請会社は系列会社(あるいは親会社)である」と回答した企業の労働生産性は際立って低い。
売上高増減率
2005年度 | 2006年度 | 増減率 | ||
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情報処理産業全体(723社) | 金額 | 2兆6,965億9,400万円 | 2兆7,640億9,900万円 | +2.5% |
大企業(69社) | 金額 | 1兆9,949億3,700万円 | 2兆688億7,300万円 | +3.7% |
中小企業(69社) | 金額 | 7016億5,700万円 | 6952億2,600万円 | -0.9% |
ソフトウェア業(587社) | 金額 | 2兆1,352億400万円 | 2兆1,538億2,300万円 | +0.9% |
情報処理サービス業(105社) | 金額 | 4,118億9,500万円 | 4,311億5,800万円 | +4.7% |
情報処理の売上以外が 総売上の過半(31社) |
金額 | 1,494億9,500万円 | 1,791億1,800万円 | +19.8% |
ITスキル標準V2について「詳しく知っている」、または「ある程度知っている」と答えた企業数の割合は36.5%であり、「公表されたことも知らない」とする24.4%を上回った。企業規模別では大企業での認知度が高い。
ITスキル標準V2の認知度
詳しく知っている (2006年3月以前) |
詳しく知っている (2006年4月以降) |
ある程度知っている (2006年3月以前) |
ある程度知っている (2006年4月以降) |
公表されたことは知っているが、内容はよく知らない | 公表されたことも知らない | |
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全体(794社) | 3.4% | 5.0% | 9.7% | 18.4% | 39.1% | 24.4% |
大企業(79社) | 13.9% | 16.5% | 17.7% | 29.1% | 13.9% | 8.9% |
中小企業(715社) | 2.2% | 3.8% | 8.8% | 17.2% | 41.8% | 26.2% |
組込みソフトウェアの開発を実施している企業は29.7%、計画中の企業は7.5%だった。組込みスキル標準(ETSS)の認知度は、「詳しく知っている」「ある程度知っている」を合わせて17.8%だった。
組込みスキル標準(ETSS)の認知度
詳しく知っている | ある程度知っている | 公表されたことは知っているが、内容はよく知らない | 公表されたことも知らない |
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3.2% | 14.6% | 42.1% | 40.1% |