アイログは11日、日本国内で各種製造、流通/小売業を対象としたサプライチェーン・アプリケーション事業を開始すると発表した。中核となる製品群は、2007年2月に発表されたLOGIC TOOLS社買収(買収完了は2007年4月)によって獲得されたもので、アイログの製造業特化型ソリューションなども含まれる。
同社は従来からBRMS(Business Rule Management System)や最適化エンジン、ビジュアライズといった技術に強みがあり、サプライチェーンの分野でも同社の最適化技術を活かしたカスタムソリューションの提供を行っていた。今回、サプライチェーン分野における特定領域向けのソリューションをアプリケーション製品として日本国内でも提供を開始する。
まず提供開始されるのは、以下の3製品。
ILOG Plant PowerOps(PPO)
向上の生産計画/スケジューリングが対象。最新バージョンとなる3.0を6月に出荷開始する予定。
ILOG LogicNet Plus EX
戦略的ネットワーク計画立案を対象とし、倉庫や工場、生産ラインの最適な数や場所、規模などの決定を支援する。出荷開始は今夏の予定。
ILOG Inventory Analyst
在庫の最適化を対象とする。出荷開始は今夏の予定。
ILOG 会長兼最高経営責任者(CEO) ピエール・ハーレン氏 |
取り組みの概要について説明を行った同社の会長兼最高経営責任者(CEO)のPierre Haren(ピエール・ハーレン)氏は、まず発表会場を見渡し、集まったプレスが持っているカメラがそれぞれ異なる機種であることを指摘し、「日本はバラエティに富んだ製品を製造している国だ」としてサプライチェーン・アプリケーションの市場として日本に期待していることを表明した。
また、この分野では現状SAPとOracleの2社が大きな存在感を発揮しているが、同社はこの両社に対してコンポーネントを提供するなどの協業関係にあり、特にSAPに関しては同社の大口顧客でもあり、かつ株主でもあるということもあって、これらERPベンダと競合する意図はなく、補完的な関係を維持するとした。同氏は、「かつてサプライチェーン分野では35種以上のコンポーネントが市場提供されていたが、現在SAP/Oracleによって提供されているのは10種程度で、この両社が手がけない分野が残っている」とし、同社は最適化技術を活かした機能の提供に特化し、既存のERPやSCMを補完する形での導入を狙うとした。
アイログ 代表取締役ゼネラルマネージャー 和多田茂氏 |
続いて、日本法人の代表取締役 ゼネラルマネージャーの和多田茂氏が国内での事業方針について説明した。同氏は、国内での対象業種として特に金属(主に鉄鋼)、自動車、飲食、化学、製薬、流通/小売業に注力する方針を示した。また、日本企業が製造拠点をアジア地域に展開している現状を指摘し、同社のサプライチェーン・アプリケーション製品によって「日系企業によるアジア/グローバルSCMの再構築を支援する」とした。
なお、ILOG LogicNet Plus XEに含まれる「グリーン・ロジスティックス・モジュール」では、最適化のパラメータに輸送手段等が排出するCO2量も含めており、CO2排出量を最小化するためのプランの提案などが可能であることも紹介し、国内でのCO2排出量削減やグリーンITの実現にも貢献するという。同氏は国内での事業目標として「初年度案件受注目標は10件で、3億円程度を見込んでいる」とした。
余談ではあるが、Haren氏は日本通でもある。「以前、秋に日本に来たときの紅葉の美しさには感銘を受けたが、今回の桜もまた素晴らしい」と語り、さらに続けて、「今回の来日ではもちろん桜は印象的だが、もっと重要なこととして3G携帯電話のローミングサービスが開始されていたことだ」と言う。同氏がフランスから持ち込んだ携帯電話が日本国内でも通話可能になっていたということらしく、「海外のビジネスマンにとって日本での活動が容易になった。素晴らしい改善だ」と語った。日本人には気づきにくい点だが、海外のIT企業の活動環境がより便利になっているらしく、今後同社の日本での活動もより活発化することになるのかもしれない。