著名企業や有名人、ブランド名などを包含するインターネットのドメイン名を他者に先駆けて登録し、本来の商標の持ち主に高値で譲渡を持ちかけたり、当該ドメインのページに広告を貼り付けてアクセスを稼ぎだす――こうした行為は「サイバースクワッティング(Cybersquatting)」と呼ばれている。インターネット草創期によく見られた現象であり、その行為はたびたび裁判を引き起こす原因となっていたが、1999年に米国でサイバースクワッティングを禁止する法律が成立したのを機に減少していった。だがドメイン名紛争の仲裁を行っているWIPO(World Intellectual Property Organization)によれば、ドメイン名問題の仲裁件数は2004年以降再び増加をはじめ、2007年には前年比18%増の2156件を記録したと警告をしている。
WIPOはスイスのジュネーブを拠点にする団体で、知的財産や商標に関する啓蒙活動や問題解決を行っている。1999年12月にはインターネットのドメインやIPアドレスを管理するICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)より委任される形で、初のドメイン名問題の仲裁を行っている。以後、ドメイン名に関する各種の仲裁を続けており、そのような形で取り扱った苦情の受け付け状況が表1だ。WIPOが3月27日(現地時間)に発表したデータによれば、2007年のドメイン居座り行為、すなわちサイバースクワッティング行為に起因する苦情件数は2156件となる。これは前年比で18%、2年前の2005年との比較で48%増の水準だ。
表1 WIPOによるサイバースクワッティングに関する苦情件数(ccTLD/gTLD)
年 | 仲裁件数 |
---|---|
1999 | 1 |
2000 | 1,857 |
2000 | 1,857 |
2001 | 1,557 |
2002 | 1,207 |
2003 | 1,100 |
2004 | 1,176 |
2005 | 1,456 |
2006 | 1,824 |
2007 | 2,156 |
「これら数字の増加は、"サイバースクワッティング"が本来の商標保持者にとって大きな問題となっていることを示している」とWIPOのDeputy Director GeneralのFrancis Gurry氏はコメントしている。2008年末には新しいgTLDの運用が開始されることになっているが、もしこうしたサイバースクワッティング行為が蔓延し、ペイ・パー・クリック(Pay-Per-Click)のコンテンツで埋め尽くされるような状態になった場合、本来役立つべき新しいドメインが台無しにされてしまう可能性があると同氏は警告する。新ドメインのプロモーションのためにドメインをばらまくのではなく、量とクオリティのバランスをとった形で適切に運用されるべきという意見だ。これは商標の問題だけでなく、DNSシステムの信頼性そのものにも通じるとGurry氏は付け加える。
サイバースクワッティングだけでなく、現在ドメイン登録に起因する問題としては「ドメインテイスティング」などの行為も懸案事項として話題になっている。根本的な原因の1つは、ドメイン登録の容易さと維持手数料の安さにあるといえる。ICANNではこうした問題の対処の1つとして、ドメイン登録に一定のルールと登録手数料を課す新ルールの制定を行っている。