日本オラクルは、物流システムの効率化を支援するアプリケーション「Oracle Transportation Management 5.5(以下、OTM)」を積極展開していく意向を示した。「OTM」は、米オラクルが2005年11月に買収を完了したG-log社の、グローバルにわたる輸送管理を支援するアプリケーション「G-Log」を機能強化し、2006年9月からは「Oracle Transportation Management 5.5」としてオラクルから提供している。同社では「OTM」を、大手製造業、物流専門会社のほか、世界的規模で物流を展開する中堅製造業などにも裾野を拡大していく方針だ。

「OTM」は今回、初めて日本語化されるとともに、同社の中堅企業向け業務アプリケーション「JD Edwards EnterpriseOne」の業務プロセスとの標準連携、分析機能の追加や標準Webサービスのアーキテクチャで他のビジネスアプリケーションとの容易なデータ連携を実現している。

日本オラクル 製品戦略統括本部 アプリケーションビジネス推進本部 ディレクター 塚越秀吉氏

企業の全世界的な事業展開が進み、物流が国境を越えているなか、企業は、物流の一元管理、いっそうの効率化やコスト削減を求められている。OTMは、輸送手段、経路やコスト、配送物の移動や静止の状況、出荷時期や納期について、組織と拠点を横断的に統合管理することが可能で、「モノ」の流れを可視化するため、企業は物流計画を最適化でき、輸送費や在庫の削減、納期短縮につなげることが可能になるという。同社製品戦略統括本部アプリケーションビジネス推進本部ディレクターの塚越秀吉氏は「OTMは、世界的な視点で、モノをムダなく届けることができる。また、遅延が発生した場合などの解決策の実行、当初決められたルールに付加される条件への適合など柔軟性も備えている」と話す。

OTMは、統合ロジスティクス管理ソリューションと位置づけられており、製品構成は、輸送オーダー管理、輸送料金管理、輸送進捗状況などのサプライチェーンイベント管理、業務処理自動化など物流業務全般を支援する機能を統合的に提供する「Oracle Transportation Management」を中核に、複数オーダーの一括輸送計画、輸送コンテナ容量シミュレーション、倉庫業務計画を支援する機能を担う「Transportation Operational Planning」、輸送費支払、顧客への請求、クレーム管理を行う機能をもつ「Freight Payment, Billing and Claims」、各拠点での在庫状況をリアルタイムに把握することができる「Logistics Inventory Visibility」などのオプション製品機能が用意される。

オプション製品機能のうち、今回強化されたのは、運送会社の入札準備や過去のビジネス実績を分析、運送会社との交渉支援、契約更新支援についての機能を提供する「Transportation Sourcing」、輸送経路やコストの計画支援や積載効率向上支援を行う機能を備えた「Transportation Cooperative Routing」、見積管理、作業管理、混載管理やグローバルでの取引管理を行う「Forwarding and Brokerage Operations」、平均輸送コストや所要日数などのKPI管理、パフォーマンス分析やレポーティングが可能な「Fusion Transportation Intelligence」。

OTMによる、物流の効率化の流れは、まず「輸送計画の最適化」から始まる。納期の遵守とコスト抑制が主眼で、船舶、航空機など輸送手段や輸送経路の選定から、コンテナ、トレーラーへの関差効率の最適化、出荷サイズの決定などに至るまで、最も合理的な手法を導き出す。

「グローバル輸送コラボレーション+実行管理」の段階では、製品などの供給側、LSP(Logistics Service Provider: 物流業者)、届け先の顧客が、円滑に連携できるよう、出荷数量、スケジュール、経路、輸送状況といった情報の共有や、双方向のやりとりの実現を図る。

OTMにはBIの機能も盛り込まれている

OTMは輸送計画を最適化し、モノの動きを管理、可視化する

日本オラクル 製品戦略統括本部 アプリケーションビジネス推進本部 シニアマネジャー 船戸麻衣子氏

さらに、効率化の軸となるのは「ビジネスプロセスの自動化」だ。ITの活用により「ワークフローが組める。マニュアルによる作業を自動化することで、手入力でのミスなどを防ぐことができる」(同社製品戦略統括本部アプリケーションビジネス推進本部シニアマネジャー 船戸麻衣子氏)ことが大きな利点となる。効率化のもう1つの柱は「ロジスティクスネットワークの完全な可視化」だ。原料調達から最終販売拠点までのサプライチェーンを可視化、モノの動きを監視、追跡する。

ERPは企業内のシステム統合で効果を上げたが、今後は「(仕入先、顧客など)企業の外にある環境への対応」(塚越氏)が重要になってきており、同社では、このような取り組みを「Beyond ERP」と定義しており、今回の物流コントロールと可視化への試みは「Beyond ERP」の一環でもある。同社が照準をあわせているのは「500億円規模の企業、ERPの大手ユーザーとほぼ重なる」(同)層で、同社では、ITによる物流の効率化を、新たな企業競争力強化の要諦と捉えている。