米Microsoft会長のBill Gates氏は3月12日(現地時間)、首都ワシントンDCで開催された米下院科学技術委員会(Committee on Science and Technology, US House of Representatives)の公聴会に出席し、米国が今後もイノベーションの分野で競争力を保っていくための提言を行った。同氏が改善点として挙げたのは3点。充実した教育、基礎研究分野への投資の拡大、高いスキルを持った移民の積極的な受け入れだ。

今回の公聴会は科学技術委員会の設立50周年を記念したもので、Gates氏がMicrosoftのリーダーとして同所でスピーチを行うのはこれが最後になるとみられる。公聴会開催を前に同氏は「われわれはみな、米国がイノベーションにおいて世界の中心であり続けたいと望んでいる。だが、われわれの世界のリーダーとしてのポジションは危機に瀕しているのが現状だ。もし国がそうであり続けたいと思うのなら、議会や行政、そして次期大統領は断固とした行動をとらなければならない」と述べ、競争力維持のためによりオープンで進歩的な措置を執るように訴えた。

Gates氏がまず掲げたのは、教育の改善と基礎研究への投資の増加だ。同氏によれば、近年の米国企業は高いスキルを持った研究者やエンジニアの不足に悩まされており、これが将来的な競争力の低下や高賃金労働者の減少に結びつく恐れがあるという。こうした対策を行うのは民間の個々の団体や企業だけでは難しく、国を挙げて教育をより効果的なものとし、その効果測定を行ってほしいと要望する。一方で基礎研究への投資も重要で、2005年以来減少している政府の基礎研究予算を復活させ、今後数年にわたって年間10%まで増加させるよう訴えた。こうした投資が次世代の研究者やエンジニアを育てるほか、結果として民間企業の活力につながるという。

さらに同氏が強く訴えるのが移民政策の条件緩和だ。米国の大学を卒業した外国人や海外企業からの米国への移籍など、外国人が米国内の企業でエンジニアとして働くためにはH-1Bのような労働ビザが必要となる。2000年前後のバブル景気を受け、米政府はH-1Bの発給数を一時期19万5000まで引き上げたものの、2005年以降から3分の1程度の6万5000まで急減少させた。こうしたビザ発給数の急激な絞り込みが特にIT産業を直撃し、米国内での就職をあきらめて本国への帰国を決めた外国人学生が多いことがシリコンバレー内の調査で報告されている。昨年度から特別措置として米国内の大学を卒業した学生に限り最大2万人までビザ枠が拡大されたものの、依然として不足しているとの声が聞かれる。Gates氏は労働ビザで働ける期間の延長と発給枠の拡大、そして永住権獲得への道を広げることを訴えた。こうした優秀な学生や労働者を米国内につなぎ止めることで、結果として前述のような研究者やエンジニア不足による競争力低下を防止できると考えている。