手のひらの静脈を読み取る
銀行の現金自動預払機(ATM)を中心に、非接触型の手のひら静脈認証技術の採用が進んでいる。富士通フロンテックでは、同技術を用いたPCログインキットを開発、法人向けを中心に提供を行っている。
手のひら静脈認証技術は、手のひらの静脈に含まれる還元ヘモグロビンが近赤外線を吸収する特性を利用している。センサ部より近赤外線を照射、反射光をセンサで撮像することによりパターンを撮影し、誰の静脈であるかを識別する。手のひらを走る静脈は、人によって異なり、大きさ以外は変わらないと言われている。また、体内情報のため複製することが困難であり、偽造による"なりすまし"といったことを防止することができる。
静脈認証には、手のひらのほか、手の甲や指を用いたものもあるが、手のひらの静脈は、手のほかの部位に比べ血管の本数が多く複雑であることから、人を識別する場合の認証精度を高くすることができる。また、血管が太く、寒さによる血管の収縮、体毛や色素による影響などを受けにくいため、安定した認証が可能といった特長を持つ。
静脈認証を手軽にPCで実現
富士通フロンテックの提供する「手のひら静脈認証PCログインキット」は、これまでサーバや専用端末を用いて行っていた手のひら静脈認証をPCで行うことを可能にしたもの。主に、「Windowsのログオン」「ID/パスワードを要求するWebサイト、アプリケーションへのログイン」「ロック状態の解除」「ファイルの暗号化/復号化」といった4つのシーンで生じるパスワードの入力を手のひら静脈認証に置き換えることが可能だ。
ハードウェアはUSBで接続され、"マウスにセンサを取り付けたタイプ"と"据え置き型のスタンダードタイプ"の2種類が用意されている。静脈認証を行うソフトウェアには米Softexのセキュリティソフトウェア「OmniPass」を採用。Windowsのログオン画面などパスワードが要求される場面で自動的に同ソフトウェアが立ち上がり、ハードウェアに手のひらをかざすだけで認証が行われ、ログインが行われるため増え続けるIDやパスワードを覚える必要がなくなる。
また、ファイルの暗号化/復号化では、ファイルそのものに暗号化を施すことから、ファイルを開く際に本人確認が必要となり、ファイルの機密度を向上させることが可能だ。
ソフトウェアのインストールから静脈の認証まで通常30分もあれば完了するという。また、複数人での使用も可能だが、複数の静脈パターンを比較、検証することから、パソコンの処理性能が落ちてしまう。そのため、3人くらいまでの使用が快適に使えるレベルとなっている。
一度登録した各種Webサイトのパスワードなどを確認、変更する場合は静脈認証を用いて管理ソフトを起動する。登録されているデータは暗号化のほか、独自の機能により保護されており、仮に盗難などの被害にあっても、データが盗み見られることがない設計となっている。
同キットの販売は同社の営業を通じてか、同社の直販サイト「フロンテックダイレクト」にて行われている。現在は、法人向けに提供を行っているが、将来的には個人向けにも提供していければとしており、「2010年度には20万台の普及を目指す」という。