2月下旬、韓国では新しい大統領の政権がスタートした。
これに伴って、新大統領の方針により政府機関の再編成も進められている。これは「小さな政府」を目指す新政権の方針下、より身軽で効率的な政府組織に再編成することを目指したものだ。
IT分野もその例外ではない。これまでIT政策全般を担当していた情報通信部は、通信、放送、情報保護、コンテンツなどといった機能別に、さまざまな政府機関との統合が進められていた。
しかし情報通信部のこうした「解体」については当の情報通信部も反対の意思表明をしていた。情報通信部は「(放送と通信の融合という大きな命題がある)にも関わらず、IT関連政府組織を改変するというのは時代に逆流するものであり、大変当惑している」(情報通信部)と主張した。また日本など海外の例も取り、これらの国がIT関連政策を一元化する動きが出ているのに、なぜ韓国は今この時期になくしてしまうのか、とも主張した。
それでも結局2月29日、情報通信部の機能は分離されることとなり、これによって新しく設けられた政府機関も登場した。
新設されたIT関連の政府機関としては、産業資源部の産業政策や科学技術部の産業技術R&D、情報通信部の通信産業育成政策などが合わさった「知識経済部」や、情報保護機能など安全政策業務を行う「行政案全部」、コンテンツ事業を担当する「文化部」などがある。
とくに注目度の高い機関として、韓国のIT推進政策「IT839」の核心部分の1つ、放送と通信の融合に関して「通信放送委員会」が発足した。この機関は、既存の放送委員会による放送政策および規制、情報通信部による通信サービス政策や規制を統括する機関だ。
同委員会が取り扱う、もっとも大きな命題としてはやはり、地上波 / 衛星DMB(日本でいう、ワンセグ / モバイル放送)やIPTVなど、通信と放送との融合政策だろう。
地上波 / 衛星DMBは収益モデルを確保することや、地上波DMBのネットワークでリアルタイムの交通情報をナビゲーションに送信する技術「TPEG」の普及、IPTVの場合は市場の拡大や、リアルタイム放送のための法令整備など、課題は山積みだ。
折りしも韓国最大手の携帯電話事業者であるSK Telecom(以下、SKT)が、固定電話・ブロードバンド通信会社としては韓国で二番手のHanaro Telecomを買収したことで、これまでKTが1位を独走していた固定回線の通信業界に地殻変動が起きつつある。
これは韓国公正取引委員会や、同委員会の全身である情報通信部が条件付で認可したものだ。これによりSKTの市場独占状態が進みすぎることが、通信業界や政府機関の憂慮事項となっている。情報通信部の後を引き継いだ同委員会としては今後、市場の均衡を保てるような介入も必要となってくるかもしれない。情報通信部から引き継いだ課題は大変多く、1つ1つの密度も高い。
とはいえ、じつはまだ同委員会の役員などは決まっていない状態だ。これは10日の週に決定することとなっている。組織改変の直後で本格的な業務はできない状態だが、すでに課題は山積み状態の同委員会。融合傾向の強まるIT技術を、市場に成功裏に定着させるために大変重要な機関となるのであり、今後の韓国IT事情をチェックしていくうえでは欠かせない存在になりそうだ。