技術の誇示から営利そのものが目的に

悪質なウイルスが産業化されたのは、ウイルス作成者が単純な技術力の誇示から、より実際的な営利を目的とするようになったことが原因だ。ネット応急処理センターの黄氏は、「前者はできるだけ多くの人にウイルスを知ってもらおうとするが、後者は、より多くの利益を得るためできるだけウイルスを隠そうとする」と話す。ウイルスの作成から販売に至るウイルス産業チェーンの各過程では、れっきとしたビジネスモデルが確立されている。現状では、ネットユーザーたちに、インターネット闇経済からの攻撃を防ぐ有効な手段はない。

中国におけるネットワーク犯罪はすでに高度に組織化されており、作業プロセスから流通システムまでが一体となって形成されている。灰鴿子を例に挙げると、作成者は1回限りの役割で、販売ルートには直接参画せず、気持ちばかりの謝礼を受け取るにとどまる。

ウイルス小売商が実働部隊を訓練、感染PCの転売も

ウイルス完成後、多くの場合は作成者の友人やインスタントメッセージQQの仲間からなる「ウイルス問屋」がこれを購入し、自分達の取り分を上乗せした後、「ウイルス小売商」に販売する。小売商は、サイト管理者またはQQグループのボスなどがその役割を果たすことが多いという。その後、小売商は親方として弟子を募集、トロイの木馬のコントロール技術やパスワード窃盗技術を教え込み、訓練(養成)費を徴収する。

これらの弟子は、他人のパスワードや個人データを盗む。彼らが操るトロイの木馬に潜入されたPCは、ユーザーの個人データ、口座番号、ゲームで得た資産、プライベートな写真や映像などが盗まれ、ネット上の取引サイトで販売される。

時には感染PCを広告業者に転売することもある。そうなると、コントロールされているPCには、広告業者が出した広告が勝手に出てくることになる。ひどい場合には、直接そのPCに広告サイトをクリックさせたりする。このように、感染したPCのすべての行動がコントロール下に置かれてしまうわけだ。