コンテンツ振興策などを議論している政府の知的財産戦略本部 コンテンツ・日本ブランド調査会 コンテンツ企画ワーキンググループ(WG)は1日、第4回会合を開き、「ニコニコ動画」や「YouTube」など、動画投稿サイトの"適法化"を推進する方針を示した。これに対し同WG委員からは、「国が認めるなら、違法投稿者へのアプローチも必要ではないか」との意見も出て、同サイトの適法化推進へ今後の課題を示した形となった。

コンテンツ企画WGでは、昨年10月から12月にかけ、日本のコンテンツのグローバル化推進や新たなビジネスモデル、海賊版対策などについて、3回にわたって議論を重ねてきた。4回目となる今回の会合では、これまでの議論をまとめた「デジタル時代におけるコンテンツ振興のための総合的な方策(案)」が、同WGの事務局から提示された。

同案では、動画投稿サイトなどのコンテンツ共有サービスの適法化の推進について、「既存の枠組みにとらわれない新しいビジネスに挑戦する」とする第1の基本戦略の中で、動画のネット配信ビジネスの成長を支援するための案として示された。

動画投稿サイトは、個人の創作物や多種多様なコンテンツを閲覧できるサービスとして利用者が急増しており、個人の楽しみの場として利用されるだけでなく、宣伝用の動画や放送番組を投稿することにより、新たな宣伝や視聴者獲得の方法として商業的に利用するケースも増加している。

一方、投稿されているコンテンツの中には、他人の著作物を利用しながら権利者の許諾を得ていないものや、商用動画のコピーなどの違法コンテンツが含まれており、このようなサービスが著作権侵害の被害拡大の温床となっているという現状も指摘されている。

同WGでは、「こうした問題を解決しつつ、うまく取り込んでいく方法はないか」(過去の会合での意見)との視点から、動画投稿サイトの適法化を推進するための議論を展開してきた。今回事務局から提示された案では、以下の取り組みが提言された。

  1. サービス事業者と権利者との包括的な契約を促進
  2. サービス事業者が提供する技術的手段によるフィルタリングを活用し、違法コンテンツの排除と適法利用のための許諾の効率化への取り組みを促進
  3. サービス事業者の法的責任を明確にするため、著作権侵害として差止請求の対象となる範囲を法律上明確にすることを検討

こうした案に対し、同WGの委員で、小学館キャラクター事業センター センター長の久保雅一氏は、「現在、BitTorrentでは英文字幕が付いた違法の日本アニメ映像のファイル交換が、1週間に600万ダウンロードも行われていると言われている。この影響を受けて、北米地域での日本アニメのDVD販売は大きく落ち込んでいる。その結果として、アニメ番組の海外における販売価格が著しく下がると同時に、国内でも、2008年4月のテレビ番組改編後は、アニメ番組数が大きく減ることが予想されている」と日本のアニメ産業の窮状を説明。

その上で、「外国語字幕を付けたアニメ映像をYouTube、BitTorrentなどのサイトに打ち上げているファンは10人前後おり、彼らの翻訳能力はプロより高い。今後、国がYouTubeなどを正式に認めていこうとするならば、彼らに対してなんらかのアプローチが必要ではないか」との意見を述べ、動画投稿サイトの適法化推進へ向け、課題を示した形となった。