いい記事、いいコンテンツとは? アクセス数と質のギャップに悩む毎日


――魅せるニュースサイトをつくるために必要なものは

片山 先日、MSN産経ニュースのスタート報告で米ワシントン州にあるMSNBC(※)を訪れて、編集現場を見せてもらいました。テレビ局が主体なだけあり、動画コンテンツが多く、その使い方の巧さや読者投稿などが特徴的でした。キャプションのつけ方や編集方法など、効果的なディスプレイの手法を勉強していかなければならない、と思いましたね。

とはいえ、我々はその前に"日本の新聞社がつくっているサイト"としての地盤を固めていく必要があります。いい新聞をつくれば、いいサイトができる。同じようにいいサイトをつくれば、いい新聞ができるということに尽きると考えています。

MSNBC
米国の大手放送ネットワークNBC(National Broadcasting Company)とマイクロソフトが共同で設立した同名のニュース専門放送局のWebサイト。米国内のニュースサイトとしてYahoo!、CNN.comとトップ3を争う。。
――具体的に"いいサイト"とは何でしょう?

片山 この定義は非常に難しいですね。なにげない記事でもアクセス数の多さに驚いたり、逆に自信を持っているコンテンツなのにアクセス数が伸びなかったり。まさに思い悩む毎日ですよ。

井口 10月の1カ月間であれば、沢尻エリカ騒動に代表されるエンタメ系、亀田一家のようなエンタメ性を持ったスポーツニュースが圧倒的に強い。防衛省の守屋問題について、どれだけしんどい取材をして記事を掲載してもあまり(PVが)伸びないんですね。これまで自分たちが"これはニュースだ"と思ってやってきたことが、過信だったり、傲慢なことだったんじゃないかな、と考えさせられるきっかけにもなりました。かといって、沢尻エリカと亀田一家がこの世の全てか、と問われたらそれは違うと思うわけです。

(世間の)絶対的な需要と、新聞社として我々が提示したいネタにギャップがあるんですが、この食い違いを、ネットという媒体を通じて自覚したことの意義は大きいと思います。今後、我々がその差をうまく加味していけば、新聞社としての役割を果たし、存在感を増していけるんじゃないかと感じています。

片山 エンタメニュースをトップページの目立つ部分に置いておくと、確かにアクセスは増えます。でも、新聞社が果たしてそれでいいのかと。非常に悩まされますね。ある時期、アクセス数を狙ってエンタメニュースを増やしたこともありましたが(笑)、これではMSN産経ニュースの媒体価値を下げてしまいますから控えるようにしています。バランスの問題ですね。