"法廷ライブ"こそ「新聞社×Web」の醍醐味


――注目コンテンツのひとつに"法廷ライブ"があります

法廷でのやりとりをすべて伝える"法廷ライブ"。複数の記者が交代で記録し、MSN産経ニュースに随時アップしている

片山 "法廷ライブ"は社会部のキラーコンテンツで、MSN産経ニュースの主力商品になりつつあります。記者たちが裁判の傍聴席でとったメモをそのままおこし、一問一答形式で載せています。とくに秋田県連続児童殺害事件の畠山鈴香被告の公判を伝えたときは大きな反響がありました。

「秋田法廷ライブ」を読むと、その場で彼女が何を聞かれ、何を言ったのかが手に取るようにわかるので、非常にアクセス率が高く、読者の評判も良好です。法廷の中にTVカメラは入れませんし、録音も不可能、写真撮影も冒頭しか許可されていません。そんな制限があっても、(Web媒体なら)注目度の高い事件をリアルに読者に伝えることができますからね。

井口 検察側、弁護側、鈴香被告のやりとりをリアルタイムに報じる手法はネットならでは。この発想は、記者自身が慣れない端末を操作して記事をアップする作業を経験していなかったら、生まれなかったと思います。

産経新聞東京本社内。社会部などの編集局があるフロアにWeb掲載作業をする端末が並ぶ。やはり記者のみなさんも最初は端末の操作に苦労したそうで

片山 被告人質問は、原稿にすると1回あたり4,000行(44,000字相当)。でも、こんな長文を載せるスペースは新聞にはないんです。それがWebなら分割して掲載できる。これまでの我々には想像ができなかった情報伝達ツールができた、というように考えています。

――Web媒体の特徴のひとつである"速報性"は、最重要原則なのでしょうか

片山 事件発生からなるべく早く速報を流すことは、新聞社がニュースサイトを持つうえで、ある種の使命であり、意義のあることでしょう。以前は(朝刊や夕刊の)締め切りまでに原稿を書けばよかったのですが、発想が根底から変わりました。ただし、Webだからといってやみくもにスピードを追求すればいい、というほど単純なものではありません。

そういう意味でも、"新聞社がニュースサイトをつくる意義"を追求したページづくりを意識しています。我々は他のメディアより、取材網の広さ、深さ、解説性、分析性を持っている自負がある。それを最大限に生かしたサイトをつくっていきたいんです。

――他に力を入れているジャンルはありますか?

片山 ストレスが多い世の中なので、憩いや癒し、潤い、レクリエーションなどの文化面、生活面の記事も求められると思います。以前のニュースサイトでは有力視していなかったのですが、今後はゆとりを与えられるコンテンツも大事にしていきたいですね。

ニュース性の高い速報と、新聞でいう中面的なゆとりを持ったコンテンツを両輪に、エンジン部分には法廷ライブのようなネット特有のコンテンツを盛り込む。そうすればバランスのとれたサイトになるのではないか、と考えています。