マイクロソフトは、今後のエンタープライズサーチ(企業内情報検索)戦略について発表した。「Microsoft Office SharePoint Server 2007」のもつ検索機能を一部抽出し、無償で利用できるようにした「Microsoft Search Server 2008 Express」を投入、企業の検索機能強化を支援する。現状、多くの企業で、業務時間に占める検索時間の比率が高く、生産性向上の障害になっていることから、企業内の検索機能を強化、洗練化することで、経営全体の効率化、変化への迅速な対応につなげることを目指す。

マイクロソフト インフォメーションワーカービジネス本部 IWソリューションマーケティンググループ マネージャの吉村徹也氏

同社の検索ソリューションは、「情報の迅速な取得/活用」「変化に柔軟に対応できる拡張性」「セキュリティと管理」を機軸としている。企業が事業を展開するにあたり、情報はまず探して、共有、それを分析し、意思決定の判断材料などに用いる、というのが、一般的な流れだ。「検索は、これらの3つの課題のうちの一つでしかない」(同社 インフォメーションワーカービジネス本部 IWソリューションマーケティンググループ マネージャの吉村徹也氏)が、同社が1,032社を対象に調査したところ、検索の非効率性が業務の妨げになっていると感じている層が少なくなかった。吉村氏は「エンタープライズサーチは、検索についての不便な環境を改善することがまず根本にある」と話す。

「Microsoft Office SharePoint Server 2007」の検索機能は、ドキュメントを検索するだけでなく、企業内のすべての情報、人を対象に、複数のリポジトリを横断的に検索できる。ファイル共有、Webサイト、SharePointサイトなどのパブリックフォルダのほか、「Lotus Notes データベース」を既定値のまま検索し、検索対象をサードパーティのソースやファイルタイプに容易に拡張できる。また、「ビジネスデータカタログ機能」により、業務アプリケーション、リレーショナルデータベース、その他の構造化コンテンツの情報についてのインデックス作成、検索、表示を実行する。

大きな特徴としては「人の検索機能」の充実化を図っていることが挙げられる。同社がここに重点を置いたのは、検索する--すなわち情報を探す場合、インターネットでの検索以外に、特定の事項について詳しい知識を持つ「人」に聞くことも重要な手段となるからだ。「人の検索機能」では、部門や組織内での肩書きに留まらず、専門分野、社会的距離、共通の関心事も、人の検索基準として使用している。各ユーザーがそれぞれのプロフィールを登録しておくことで、このような検索ができる。面識がなく、いきなりメールを送ることがためらわれるような場合、当該の「人」との「共通の面識のある人」を表示、その人を介して連絡をとる、といったこともできるという。

キーワードによる検索の結果表示では、Word、Excel、Powerpointなど、情報の種類をあらわすアイコンが横に表示され、識別しやすくしている。Powerpointのファイルでは、スライドの1枚1枚を検索でき、必要な資料を、そのまま、各自のユーザーのデスクトップ上の作業領域に引用することも可能だ。また、複数の重複した検索結果が得られると、自動的に一つの項目に集約され、探している項目を絞り込みやすくしている。一方、重複した結果すべてを表示することもできる。

管理機能の面では、セキュリティ、内部統制に配慮、企業内エンドユーザーの所属、役職などに応じ、特定のサイト、リストに対し、アクセスの許可、操作の権限を制御、検索結果に表示されるコンテンツを制限することができる。さらに、特定のアドレスを検索結果から除外することもでき、不要な検索結果を減らすとともに、一定の権限を付与されていないユーザーが、不用意に重要なコンテンツを検索してしまうことを防ぐ。

マイクロソフト インフォメーションワーカービジネス本部 IWソリューションマーケティンググループ エグゼクティブプロダクトマネージャの昇塚淑子氏

同社 インフォメーションワーカービジネス本部 IWソリューションマーケティンググループ エグゼクティブプロダクトマネージャの昇塚淑子氏は「エンタープライズ サーチでは、SQLサーバーからWebサーバーまで、さまざまな検索ソースを対象としており、みつけたものを次の業務に活かし、検索から、共有、全体の管理までを担う。エンタープライズ サーチを基盤として、生産性向上の基盤を提供する」と述べている。

「Office SharePoint Server 2007」は全社的な検索の要という位置づけだが、部門向けには、「Microsoft Search Server 2008」と、「Microsoft Search Server 2008 Express」が配置される。両者は、人やデータベースの検索はサポートしないが、「検索フェデレーション」と呼ばれる機能により、検索の範囲を広げることができる。検索のクエリーを外部の検索エンジンに送り、結果を示す。

Microsoft Search Serverを導入することで検索の範囲を広げることができる

「Microsoft Search Server 2008」はライセンス販売する製品だが、「Microsoft Search Server 2008 Express」はシングルサーバー構成に限定されており、無償でダウンロード配布される。これらはいずれも「Office SharePoint Server 2007」にアップグレードすることが可能だ。「Search Server 2008 Express」の評価版(英語版)は、ダウンロードによる提供が開始されている。日本語版を含めた製品版は、2008年上期に提供される。また、「Office SharePoint Server 2007」に検索フェデレーション機能が追加される。