韓国で開発された無線ブロードバンド技術「WiBro」Wireless Broadband Internetが、3G規格として国際規格に採択された。

WiBroがIMT-2000に

韓国政府の情報通信部によると、10月18日にスイスで開催されたITU(国際電気通信連合)による電波通信総会で、WiBro技術(公式名称は「OFDMA TDD WMAN」)が、IMT-2000規格に採択されたという。韓国で独自開発された移動通信技術では、初めて国際規格に採択されたものだ。

WiBroの国際規格案は、2007年初めに提案されていたもの。以降、論議や審査などを経て今回の電波通信総会で最終決定がなされた。

IMT-2000採択への大きな原動力となった理由として同部では、2007年8月のITU特別会議(WP8F Special Meeting)をソウルに誘致したことを挙げている。この際、世界各国の専門家がWiBroを直接体験することができたことが、今回の結果につながったと情報通信部では述べている。実はWiBroの国際規格採択については「一部の国が意義を提起したことで難航もした」(情報通信部)ということなので、ソウルでの特別会議がなかったらさらに難航していたかもしれない。

情報通信部ではWiBroが国際規格として採択された意義として、ロイヤリティ収入の向上や国主導で進めるR&D事業の模範事例の提示、さらに4G標準への採択可能性の拡大を挙げている。

特に4G採択においては、現時点のWiBroを進化させた技術である「WiBro Evolution」を提案する予定だ。情報通信部によると「4Gの標準採択においても有利な位置を確保している」ということで、次への期待も既に高まっている。このWiBro Evolutionは現在、韓国電子通信研究院や韓国のSamsung電子などが開発に当たっている途中で、2008年までには開発を終える予定。

WiBroとWiBro Evolutionとの相互比較(情報通信部提供)

広がるWiBro市場と韓国での現状

今回WiBroがIMT-2000として採択されたことで、市場は当初の予想より拡大する見通しだ。情報通信部によるとWiBro装備市場は、同規格がIMT-2000として採択されたことにより、今後5年間で29兆4,779億ウォン(約3兆7,010億6,774万円/1円=0.1255ウォン)もの規模が追加拡大するなど、当初の予想を上回る市場拡大が見られるようになるという。

今後5年間のWiBro装備市場規模の展望。単位は億ウォン。「標準採択後 市場規模」は「当初市場規模」+「標準採択後 純増市場規模」のこと。(情報通信部提供)

装備市場が拡大すれば、Samsung電子やPOSDATAなどWiBro関連の装備を扱っている企業による輸出も増える。情報通信部ではWiBro関連装備の輸出量が、5年間で9兆7,000億ウォン(約1兆2,178億7,357万円)程度市場規模が拡大すると述べている。

今後5年間のWiBro輸出展望。単位は億ウォン。「標準採択後 輸出額」は「当初 輸出額」+「標準採択後純増輸出額」のこと。(情報通信部提供)

一方、韓国でのWiBroサービスは、世界初となる2006年6月から開始されている。現在はソウルをはじめとした首都圏を中心に、全国25都市でのアクセスが可能だ。これは全人口の50%をカバーするものだという。2008年まではこれを人口カバー率70%となる84都市に拡大する予定だ。ちなみにソウル市内ではどこでも利用可能で、自宅や会社、バスや地下鉄での走行時など場所を問わないWiBro通信が可能となっている。

WiBroサービスを行っているのは、通信会社のKTと携帯電話事業者のSK Telecomだ。会員はKTが圧倒的に多い。KTはWiBroサービスに大変積極的で、広告やサービス攻勢だけでなく、豊富な端末も提供することで知名度も広がってきている状況だ。

WiBroの韓国内の普及状況(情報通信部提供)

KTがソウル市内で運営しているWiBro体験型ショップの「W Style Shop」

KTがもっとも最近発表した、WiBroのUSBモデム。USBメモリ機能をもつタイプや、音楽プレーヤー機能を持つタイプなどがある

さらにKTでは、ACCA NetworksやNTTドコモが参与しているWiMAX事業にパートナーとして参加している。こうした協力体制により、グローバルローミングや端末の共同開発と調達、マルチメディアサービスの共同開発など、多用な分野に効果が期待できるとしている。

同社では、Mobile WiMAXの商用化を予定している米Sprint Nextelとも端末の共同開発やローミングなどで協力するためのMOUを締結しており、世界的な活動に少しずつ力を入れてきているところだ。

WiBroが国際標準採択ということで勢いづく韓国。しかし足元の自国ではまだまだ活性化が必要だといえる。4Gへとつなげるためにも、まずは韓国内での普及率や認知度の拡大が課題の1つといえよう。