「UCC(User Created Contents:一般人が撮影、編集した動画や写真)」の流行で韓国では、一般の人たちによる情報発信が急激に増加した。基本的には遊びや趣味を目的としたUCCが多いが、報道の特性を持ち社会的に話題を振りまくケースも目立ってきた。報道目的のUCC作りを支援するWebサイトも登場している。
南北首脳会談、国際映画祭を一般人が取材
10月2日から4日まで行われた南北首脳会談は世界的にも大きな注目を浴び、韓国内でも報道合戦が過熱した。そんな首脳会談に一般人からなる記者団が派遣され、彼らによる映像がインターネット上で配信された。
一般人記者団による映像を配信したのは、UCC動画ポータル「Pandora.TV」だ。同社ではソウル市内のホテルに用意されたプレスセンターへ「UCC記者団」を派遣し、彼らが撮影した動画を配信した。
UCC記者団は単に映像を撮るだけでなく、アナウンサーとして登場したり編集をしたりと、プロと同様の仕事内容をこなした。しかし映像内容は、プロとは異なる目線で撮られた興味深い作品が多い。
とくに注目を浴びた動画は、外国人記者の視点で南北首脳会談を伝える「外信記者が考える首脳会談」、首脳会談を裏で支える人たちをとらえた「首脳会談進行要員のインタビュー」など。速報性があるわけではないが、新鮮な切り口で南北首脳会談を見ることができる。Pandora.TVによると一般人記者団の映像について、ネティズンからは「新しい視点で(見られて)面白かった」という感想も送られてきたという。
南北首脳会談の取材企画の好評に次いで、Pandora.TVでは同様の企画を現在も進行している。10月4日から12日まで開催されている「第12回 釜山国際映画祭」に、UCC記者団36人を送り込んでいるのだ。
大物俳優や監督へのインタビューだけではなく、観客の声、現場の様子など大型メディアではなかなかカバーできない興味深い映像が伝えられている。
Pandora.TVで観られる動画は、アマチュアが投稿してくる楽しくユニークな内容のものがメインとなっている。しかし上記のような報道活動を地道に支援していけば、いずれPandora.TVも、ディアとしての性格を強めていきそうだ。
実際、南北首脳会談のような政治的に重要なイベントを、UCCサイトが派遣する一般人記者団が報道するというのは「業界初」(Pandora.TV)のことであり、こうした行為が認められたこと自体「UCC動画が既存のメディアとはまた異なる、もう1つの新しいメディアとして認められていることを意味すると評価できる」と、Pandora.TVでは述べている。
全市民記者時代の到来
2007年8月、ソウル近郊の映画館で撮られたUCC映像が大きな話題を呼んだ。その動画は、深夜映画を観た人たちが一気に出てきたにも関わらず、下の階にある出口まで行く方法がエレベーター1つしかなかったため、映画館内が数十分間、人であふれ閉じ込められるような状態となった場面を捉えたものだ。
これがインターネット上で公開されるやいなや、映画館のWebサイトにはネティズンからの抗議が殺到。韓国の大型メディアもこの事件を取り上げ、高層階にある映画館の安全問題について、考えさせるきっかけとなった。
ほとんどの人がカメラやカメラ付き携帯電話を持つ時代。持つ理由は取材目的ではないにしろ、偶然出くわした事件の場面を撮ってスクープとなることもある。インターネット利用が盛んな韓国ではとくに、動画や写真が公開されることで話題になったり、社会問題にまで発展することが多い。
こうした傾向をよく現しているのが、日本進出も果たしている「Oh My News」だ。ここでは、一般の人たちが取材した多くの記事が伝えられている。政治や芸能など目立つ話題もある一方、ローカルだが興味深いニュース、知る人は少ないが考えさせるような投稿なども多い。
ただしOh My Newsの場合は、同サイトを運営するスタッフにより許可がおりた記事だけが掲載されるという特徴がある。一方UCC映像の場合は、基本的にその映像自体が報道目的ではなくとも大きな話題を呼んで、スクープになりうることもある。
Oh My Newsの副題に「すべての市民が記者だ」と書かれている。この、すべての市民が記者になりうる機会を、UCCがさらに広げているようだ。