米Adobe主催の開発者カンファレンス「Adobe MAX 2007」が米イリノイ州シカゴで10月1日より開始されている。もともとはMacromediaのFlash技術をベースに開発者を集めたカンファレンスとして開催されていたが、近年ではWebアプリケーション開発やビジネスシステムとの連携も重視されるようになり、Webデザイナー向けのカンファレンスから、よりWeb技術者向けの色合いが濃くなりつつある。

1日に開催されたオープニングセッションで挨拶した米AdobeチーフソフトウェアアーキテクトのKevin Lynch氏はまずAdobe Developer Connection(ADC)を紹介しており、開発者コミュニティへの参加や活用を訴えている。Flash技術の開発者は昔から存在しているが、これを1つの大きなコミュニティにまとめていこうとする動きは比較的最近のものだ。「UIだけではなく、コンテンツそのものに価値がある」と米Adobe社長兼COOのShantanu Narayen氏が言うように、インタラクティブ・アプリケーションの1つとして注目を集めたFlashが、RIAに代表されるアプリケーション開発技術の1つとして成長しつつある。ADCのアピールは、Adobeからのそうしたメッセージの1つなのだろう。

米Adobeチーフソフトウェアアーキテクトで、プラットフォームビジネス部門シニアバイスプレジデントのKevin Lynch氏。GoogleやSalesforce.comのカンファレンスなど、近年はあちこちのイベントで引っ張りだこの人物だ

Flash 9.1 "Moviestar"、Flex 3 Beta 2、Flash Lite 3

カンファレンスの冒頭でまず最初に紹介されたのは、Flash 9.1として開発された「Moviestar(開発コード名)」だ。その名の通り、動画再生機能が大幅に強化されたのが特徴のMoviestarでは、Flash上でのH.264による動画再生を初めてサポートする。Lynch氏は「インターネット上にある動画の70%がFlashベース」であることを紹介しつつ、FlashがH.264をサポートするメリットを強調する。H.264は従来のMPEG-2方式などに比べて非常に圧縮率が高く、またHDから携帯等の無線デバイス向けまで幅広いビットレートの形式をサポートする。前述の理由によりBlu-rayプレイヤーのほか、携帯電話までさまざまなデバイスでのサポートが進められており、次世代の動画圧縮形式の主流になりつつある。H.264のサポートをうたうことで、これらマルチメディア市場でのFlashの地位を確固たるものにする狙いがあるのだろう。

現在インターネット上に存在する動画のうち、実に70%がFlashベースで閲覧されているという

Blu-rayプレイヤーから携帯デバイスまで、さまざまな機器に広がりつつあるH.264フォーマット。Flash 9.1 "Moviestar"ではH.264サポートがうたわれている

パフォーマンス強化も重視されており、1080pでのHD動画再生ほか、マルチコア・プロセッサを使った再生支援、フルスクリーンモードや縮小モードでのパフォーマンス低下防止など、基本機能の強化がうたわれている。またFlashをサポートするのはPCだけではない。1日にリリースが発表されたFlash Lite 3では、携帯向けのFlashでFLV形式の動画再生をサポートする。現在Flash Lite 3のサポートをうたっているのはNTTドコモとNokiaの2社で、年内には対応端末が登場することになるとみられる。Adobeによれば、2010年までに1億台のFlash対応携帯電話が市場に登場することになると予測する。

MoviestarやFlash Lite 3とともに提供が発表されたのが、次期FlexのFlex 3 Beta 2だ。すでに何度もプレビューが公開されているFlex 3だが、同バージョンでの最新機能はアプリケーションの稼働状況を監視するProfilerの提供、グラフ等を作成するビジュアライゼーション・ツール、そしてFlex Framework Cachingだ。Flex Framework Cachingでは、一度クライアントに読み込んだFrameworkのコアモジュールをキャッシングし、以降の多重ロードを防ぐことでアプリケーションのサイズを劇的に軽減、実行速度の高速化というメリットを享受できる。

Moviestarの強化ポイント。主に動画再生におけるパフォーマンス改善が図られていることがわかる

HD画質の動画をフルスクリーン再生してもパフォーマンスは落ちず、一方でFlash Liteを使って携帯上でFlash動画の再生も可能に