18日に開催された宇宙開発委員会の計画部会・月探査ワーキンググループ(WG)において、小惑星探査機「はやぶさ」の後継機が海外のロケットで打上げられる計画であることが明らかになった。同委員会の松尾弘毅委員長の質問に、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の川口淳一郎教授(月惑星探査推進グループ推進ディレクタ)が答えたもの。

計画中の「はやぶさ2」と「はやぶさMk-II」のイラスト

小惑星探査機「はやぶさ」は、M-Vロケット5号機で2003年5月に打上げられた。重量は約510kg。2005年9月には小惑星イトカワに到達し、世界初のタッチダウンなどに成功、現在、地球に向けて帰還中だ(到着は2010年6月を予定)。サンプリングのための弾丸は発射されなかったとされるが、イトカワ表面の物質が再突入カプセルに収められている可能性はある。

「はやぶさ2」(仮称)はその後継となる探査機で、一部の改修は予定されているものの、基本的には「はやぶさ」の同型機となるという。川口教授は以前、講演で「プログラム的(繰り返し)探査」の重要性を訴えており、JAXA・月惑星探査推進グループ(JSPEC)もこれをシリーズ化して、より大型となる「はやぶさMk-II」(同)まで計画していた。

今回明らかになったのは「はやぶさ2」に関してで、同WGにて松尾委員長が現状について質問したところ、川口教授は「国際協力により外国のロケットで打上げることを前提として検討するよう指示されている」という旨の返答をしたという。海外との共同プロジェクトならともかく、自国単独実施を前提にすでにかなり検討が進んでいる探査機において、改めて他国のロケットを使おうとするのは世界的にも異例だ。

「はやぶさ2」を打上げる予定の2010年~2012年といったスパンで考えると、国内で使用できるロケットは事実上H-IIAしかない。GXロケットは開発がズルズルと遅れて見通しが立たず、次期固体ロケットでは能力的に足りない。海外に比べて割高とは言え、他の衛星との「相乗り」という手もあり、この段階からH-IIAの選択肢が外されているのは少し不可解だ。

過去には、J-Iロケットで打上げる予定だった光衛星間通信実験衛星「きらり(OICETS)」が、ロケット開発中止に伴い、ロシアの「ドニエプル」ロケットで打上げられた例がある。しかし「きらり」は商業打上げとして、JAXAがロシア側に打上げ代金を支払った。一方「はやぶさ2」は国際協力ということなので、探査の成果を共有する代償として、外国に無料で打上げロケットを提供してもらう道を探っていることになる。つまり川口発言からは、JAXAが自前の資金で「はやぶさ2」を打上げる気がないことが読み取れる。

宇宙開発に詳しいジャーナリストの松浦晋也氏は、「『指示されている』という言い回しが気になる。言葉通りに受け取ると、海外ロケットの使用は強制されたもので、『はやぶさ2』検討チームは、ロケットを提供してくれるパートナーを見つけなければ、計画中止になる状況に追い込まれていることになる。ただでさえH-IIAロケットは、今後しばらくは打上げ機数が足りず、製造と打上げを担当する三菱重工業が、打上げ事業の継続に苦心しているところ。打上げ機数が1機でも増えれば、それだけH-IIAは安定して運用できることになる。貴重な打上げペイロードを海外で打上げようとするJAXAの態度は不可解だ」と指摘している。

ネットでは「はやぶさ2を実現させよう勝手にキャンペーン」という運動が起きているほど、一般の「はやぶさ2」への期待は大きい。「はやぶさ」はこれまで、通信途絶になるほどの大きなトラブルを克服してきた。「はやぶさ2」にもピンチを乗り越えて、なんとか実現してもらいたいところだ。