アドビ システムズは、WebサイトやWebアプリケーション開発環境の最新版となる「Adobe ColdFusion 8」を21日に発売した。今回の製品は、従来よりも少ないコードで開発できるようになるとともに、「.NET」「Microsoft Exchange Server」との連携機能などを追加。また「Microsoft Windows Vista」「JBoss」に対応するなど、プラットフォームを拡大した。開発したアプリケーションは、同社のほかの技術や製品と連携させることができる。同社では本製品を「RIA(Rich Internrt Application)のためのWebサービス統合ハブ」と位置付けている。
エンタープライズ版とスタンダード版を用意
本製品は「エンタープライズ版」と「スタンダード版」の2種類の製品で構成される。大企業向けのエンタープライズ版は、単一あるいは複数のサーバーや、既存のJ2EEアプリケーションサーバー環境で複数のWebサイトやアプリケーションを運用するための高性能な製品となっていえる。参考価格は通常版の場合は1,029,000円で、従来製品に比べ約18%値下げしている。
スタンダード版は個人や中小企業向けの製品で、Webサイトやアプリケーションの管理および設定が容易に行えることが特徴である。従来のライセンス販売に加えて、パッケージ販売やダウンロード販売も行うなど、販売経路を広げた。
そのほか、開発目的に限り利用できるデベロッパー版と無償体験版も用意しており、どちらも無償で利用できる。「ColdFusion MX 6/7のライセンス」を保有するユーザーは、89,250円の特別価格でアップグレードが可能。スタンダード版では、エンタープライズ版にて無制限で利用できる機能が限定的に使えるようになっており、企業の状況に応じてエンタープライズ版へのアップグレードが行いやすくなっている。
主な機能
本製品の大きな特徴の1つに「サーバモニタリング機能」がある。この機能により、開発者は実稼働環境でのアプリケーションの状態がどうなるかを確認できる。また、アラート機能により問題点の特定が可能で、これを調整することで開発効率を向上させることができるという。そのほか、新たなデバッグ機能として「Eclipse plug-in」を追加し、ブレークポイントの設定や変数の監視、コードのステップ実行などにより、アプリケーションコードを容易にデバッグできるようにした。
本製品は、「.NET」「Microsoft Exchange Server」との統合も目玉のひとつである。.NETのオブジェクトはローカル/リモート双方に対応しており、本製品で開発したアプリケーションでネイティブに利用できる。またMicrosoft Exchange Serverとの連携機能は、メールの送受信だけではなく、作成、編集、カレンダーなど、さまざまな機能に対応した。
同社によると、本製品はよりリッチなアプリケーションを開発するためにAjaxやFlexにも対応した。Ajaxの多様な機能を十分に活用できるように、新しいタグを備えており、アプリケーションのレイアウト、表示の制御など、ユーザーインタフェース関連の作業が行えるほか、サーバー - クライアント間の通信を管理することにより、コードのやり取りの障壁が低くなり、アプリケーション開発が行いやすくなった。
次の段階への進化を目指すColdFusion
米Adobe SystemsのColdFusion担当シニアプロダクトマーケティングマネージャーであるティム・バンテル氏は「1995年に、最初のColdFusionが投入された頃は、データベース上のデータへのアクセスというほどの役割しかなかった。しかし今回発表した最新版では、企業の持つさまざまなリソースの深い層にまで対応でき、Exchange Serverや.NETなどのプラットフォームとも接続しており、広範なクライアント技術も包括するようになった」と話した。
守備範囲が大きく拡大したColdFusionは次の段階への進化を目指している。アドビ システムズのマーケティング本部フィールドマーケティングマネージャーである夏秋朋史氏は「ColdFusion 8は、企業の既存インフラをそのまま用いて、アプリケーションを開発できる。ColdFusion側からは、Javaと.NETとの差異も特に意識されず、同一のコードでアクセスが可能だ。また、PDFもRIA(Rich Internrt Application)のインタフェースとして使用できる。ColdFusion 8は1つのロジックであらゆるクライアントへの情報配信が可能だ」と述べ、「RIAの核として位置付けている」としている。
同社の製品には、異なるOSのアプリケーションランタイム「Adobe Integrated Runtime(AIR)」がある。OSの差異に左右されることなく、Webアプリケーションを開発することが可能になるとともに、これらは、別々のOS上でも稼動する。さらに、オフライン環境でも利用できるようになる。ColdFusion 8はAIRとの組み合わせで、アプリケーションやサービスの適用範囲がさらに広がる。同社によれば、ColdFusionによるアプリケーションの事例では、社内ツールとして顧客データ分析や、顧客情報をポータル化して表示、予算、実績を集計するものなど、一種のBI(Business Intelligence)かと思われるものまですでに登場しているという。