総務省の「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」が今年6月に公表した「情報通信法(仮称)」の中間取りまとめ案に対する第2回公開ヒアリングが8月27日に行われ、NTTグループ、KDDI、ソフトバンクグループの代表者が意見を述べた。KDDIは大枠に関して賛成、NTTグループは「プラットフォーム機能に事前規制を課す必要はない」と意見表明するなど、通信業界の中でも意見が分かれていることが浮き彫りになった。

第2回公開ヒアリングは、第1回の日本経済団体連合会と日本新聞協会に続き、同研究会の第14回会合として東京都千代田区の総務省で開かれた。NTTグループはNTT、NTT東日本、NTT西日本、NTTコミュニケーションズ、NTTドコモを代表して、NTTコミュニケーションズ副社長の有馬彰氏、KDDIは渉外・広報本部本部長の長尾毅氏、ソフトバンクグループはソフトバンク、ソフトバンクBB、ソフトバンクテレコムを代表してソフトバンクテレコム専務取締役の弓削哲也氏が意見を述べた。

プラットフォーム機能の定義が不明確と指摘

NTTグループを代表して有馬氏は、中間取りまとめ案の基本的な考え方について、(1)現行法上でどのような具体的な問題点が存在しているか、(2)新たな法体系に見直すことによりそれらの問題の解決が可能となり、利用者に対してどのようなメリットが生まれるのか、検討を進めてほしいとし、「レイヤー型法体系に反対というわけではない」としながらも、早急な法整備には慎重な姿勢を示した。

また、レイヤー型法体系における3レイヤーのうちの1つとされたプラットフォームレイヤーについて、「具体的に何がプラットフォーム機能に該当し何が該当しないかを明確にすることが難しく、事業運営に混乱をもたらす可能性がある」と指摘し、「事業活動については、事業者の自由な事業戦略に委ねるべきであり、仮に競争制限的な事象が生じた際には事後的に対応を行うなど規制は最小限にとどめるべき」と、事実上の反対意見を表明した。

こうしたNTT側の意見に対し、研究会の構成員からは、「例えば、iモードなどの携帯サイト事業においては、現状では実質的に3社の寡占であり、ある者には公式サイトを認め、別の者には認めないといったような恣意的な選別がありうる。そうしたことがないよう、利用者にとってどういう制度が望ましいのかという観点がある」との説明があった。

こうした考えを反映し、中間取りまとめ案では、「プラットフォーム機能は伝送インフラとともに伝送サービスの一部として提供される場合があり、その場合、伝送サービスにおける規律をプラットフォーム機能まで適用されることが考えられる」とし、伝送サービスに関し現在導入されている「市場支配力濫用規制」(指定電気通信設備制度)をプラットフォーム規制に及ぼす可能性を示唆している。

NTTの有馬氏はこうした考えについて、「これまでの局舎・線路施設設備などのボトルネック部分のオープン化によって伝送インフラ部分のボトルネック性による影響は遮断されており、伝送サービスの一部であるという理由でプラットフォーム機能について事前規制を課す必要性はない」と強く反論した。

有害コンテンツ規制でもKDDIは賛成

コンテンツレイヤーに関してNTTは、「規制のないインターネットの世界を前提に、自由なコンテンツ流通や多様なサービスが生まれてきたネット社会に対して、規制を導入すれば、新たなビジネスの創造が阻害される恐れがある」とし、(1)有害コンテンツなどに対する何らかの規制は必要であるとしても、通信・放送の法体系の枠内で対応することが適切か、(2)社会的影響力が増大することにより規制が強化される枠組みを導入することは、コンテンツ流通促進を阻害する恐れはないか、などについて検証が必要だと訴えた。

一方、KDDIは、現行法体系のレイヤー型法体系への転換や、有害コンテンツやプラットフォーム機能への規制について大枠で賛成、NTTグループとの立場の違いが浮き彫りになった。

KDDIの長尾氏はまず、「法体系をレイヤー型に転換し、規律をできるだけ簡素化することに賛成する」とした上で、「現在のNTT法や電気通信事業法、その他のガイドラインなどにより整備されてきた、NTTに対するドミナントルールなど累次の公正競争ルールが、新しい法体系においても引き続き担保されることを前提にすべき」と述べ、NTTを強く意識したといえる見解を表明した。