F5ネットワークスジャパンは9月5日、東京都内で"F5 Customer Conference 2007"を開催した。今年で2回目の開催となるユーザーカンファレンスで、ゼネラルセッションに続いて3トラック計9コマのブレイクアウト・セッションが行なわれた。ここでは、ゼネラルセッションの模様をお伝えする。
F5ネットワークスジャパン 代表取締役社長 長崎忠雄氏 |
まず開会の挨拶に立った同社の代表取締役社長の長崎忠雄氏は同社の事業概況について紹介し、同社が継続的な成長を維持していることを示した。また、ユーザーをサポートしていく責任上、事業の成長に合わせた増員が必要であるとし、現在の日本国内での社員数が63名に達したことも明らかにした。
同社では日本市場を極めて重視していると言い、「西日本支社の設立」「日本市場専任の品質管理担当者の配置」「開発者向けコミュニケーション・サイトDevCentralの日本語版の提供」「Prime Members向けの双方向コミュニケーション」など、日本市場向けにさまざまな施策を展開し、ユーザーとの距離を縮め、情報を提供するための努力を重ねていると語った。
BCN 週刊BCN編集長 谷畑良胤氏 |
続いて基調講演を行なった週刊BCN編集長の谷畑良胤氏は、「最新アプリケーション動向とネットワークへの期待」と題し、SaaSの現状を概説した。同氏は「手組みのソフトウェアの市場はなくなる?」「日本でも5年後の手組みのソフトウェアの市場規模は半分に」といった予測があることを紹介しながら"地殻変動"とも表現されるSaaSのインパクトを丁寧に説明した。
さらに同氏はSaaSに関する懸念点としてSLA/契約上の問題点をいくつか指摘した。最後に挙げられたのが「レスポンスの遅延」だ。SaaSは本来的にインターネット上でのアプリケーション配信であり、インターネットやWANを経由することに伴う遅延の問題を抱えていることを忘れてはいけない、という指摘である。これは、F5が取り組むアプリケーション・デリバリー・ネットワーク(Application Delivery Network)のテーマであり、SaaS普及という動向から見ても、F5の技術の重要性が明らかになる、という趣向であった。
F5ネットワークスジャパン シニアプロダクトマーケティングマネージャー 武堂貴宏氏 |
最後に、F5のシニアプロダクトマーケティングマネージャーの武堂貴宏氏が「アプリケーション配信における課題とF5の製品戦略とソリューション」と題する講演を行なった。同氏はまず、「アプリケーションの特性を考えないとアプリケーション配信はうまくいかない」という原則を紹介し、アプリケーション配信に求められる「安全」「高速」「安定性」という要件全てをコスト効率よく満たしていくのはかなり困難な課題であることを述べた。そして、この課題に対応するためのF5の中核技術が同社のソフトウェア共通基盤である"TMOS"であることを明らかにした。
TMOSはF5のネットワーク機器内で動作し、機器を通過する全部のパケットの中身までつぶさにチェックしている。往復するパケット全ての中身を見ることから、たとえばクライアントからのリクエストに対してサーバがエラーを返した場合、このエラーをクライアントに返すのではなく、リクエスト自体を冗長化された他のサーバに再転送し、正しい処理結果が得られたところでクライアントに戻す、といったインテリジェントな処理が可能になり、極力クライアントに対するサービスを停止させない運用を実現しているのだという。
また同氏は「WebアプリケーションはWANを経由した途端に遅くなる」と説明する。高品質な回線で通信を行うと東京~大阪間での遅延は約20ms程度。通常の感覚で考えると、この遅延はごくわずかに思えるかもしれないが、Ethernet LANでの遅延は通常1ms以下であり、この時点で既に20倍の遅延が生じているという。さらに、1枚のWeb画面を表示するためには何十ものオブジェクトの転送を要し、Webブラウザが繰り返しリクエストを発行することから、この遅延が何十倍にも拡大していく。武堂氏はこの点が問題だと指摘する。こうした遅延に対処するため、F5ではサーバの負荷を軽減するための"Dynamic Data Offload"やクライアントに対するキャッシング技術である"Intelligent Browser Referencing"といった技術を駆使し、動的なWebページに対して効果的なキャッシングを可能にすることで転送量そのものを減少させ、快適なアプリケーション利用体験を実現しているとのことだ。
なお、プログラムには一切記載がなかったのだが、サプライズ・イベントとして「お手玉の会」の会長/副会長によるお手玉に関する講演と実演が武堂氏の講演に続いて行なわれた。お手玉は脳の活性化、いわゆる脳トレになるとのことで、来場者にも土産としてお手玉が配られたのだが、F5とお手玉の関連は不明なままだった。とはいえ、お手玉の実演で披露された見事な技には感嘆の拍手が沸き、会場全体がなにやらほのぼのとした雰囲気に包まれるなど、なかなかユニークなプログラムとなっていた。
お手玉の会による講演/実演 - 目線はお手玉を投げ上げる頂点辺り、上方に向け、手元は見ない。手元を見ずにキャッチしたり投げ上げたりするのが脳の活性化に効果的らしい |