--MSNにとって、環境の変化にともなうサービスとは何か。どのようなポータルになっていくのか

「MSNは次世代のポータルになる。大きな変化といえば、ブロードバンド環境といわれて久しいが、配信システムや再生ソフトもまだまだ進化の途中だ。もう少し先になるが、パソコンをいわばHub(中核)として、テレビで視るインターネットや、モバイルでのサービスを提供する。パソコンだけで完結するのではなく、Hubとしてさまざまな要素を取り込み、広がりをもたせる。MSNはそれに対応できるものをつくりたい。パソコンの分野では、リビングルーム向けパソコンは当たり前になっており、ポータルもそれ(インターネットを、リビングでみているという状況)に対応したものを考えないといけない。MSNもサービス、コンテンツを見てもらいたい層、ターゲットをみすえていく」

「モバイルは、もう少し先をにらんで計画していきたい。マイクロソフトは、パソコン向けではWindowsが大きなシェアをもっているが、携帯電話は日本はユニークな市場になっている。マイクロソフトとしては、Windows Mobileの普及も視野に入れてサービスを開発しなければならない。モバイルでもサーチは重要な位置を占める。マップ機能などは強化したい。モバイルといっても、携帯電話だけでなく、デジタル音楽プレーヤーなどのように、コンテンツを持ち歩けるデバイスもモバイルと位置づけられる。CGMともかかわるが、マイクロソフト版YouTubeといえる『Soapbox on MSN Video』の日本語版を今年度は立ち上げていきたい。将来的な利用シーンを考えると、会社や学校に行く前に動画をダウンロードして、それを電車内でプレーヤーを使って視聴するといった形態があたりまえになるかもしれない。モバイルとの連動性が出てくる」

ITの世界は進化の速度が著しく速い。犬の1年は人間の7年に相当するといわれることから、この高速な動きを指してドッグイヤーという言葉が、かなり以前から使われてきた。

しかし、最近のインターネットの領域は、これまでのドッグイヤーよりさらに速く変動しているように思われる。CGMをはじめとするインターネットの利用手法、技術として、これまでにはなかったものが次から次へと現れてくる。今回、笹本氏は、「環境の変化」「変化への対応」との発言を何度も繰り返した。ドッグイヤーをも凌ぐような速さで激変しているインターネットサービスの最前線にある人物としては、至極当然のことだ。

笹本氏は、同社に参加する以前に、レストランガイドのサイトを展開していたことがある。「ユーザーが投稿してくる批評を基礎にした、コミュニティをつくりたいと思っていた。それぞれが自分の食べた料理、受けたサービス、あるいは舌の志向/嗜好を文章にして書き込む。それらが蓄積され、コミュニティに集まる人々がサーチして閲覧すれば、自分の志向とあった人々に出会えたり、自分はそのレストランにはいったことがないが、気に入った食のタイプが一致している人がみつかるかもしれない。書かれているさまざまな文章と、自分の投稿した文章を、多変量解析などを利用してマッチングできると、趣味があっている、ということになる。その頃はまだベンチャーだったので、資金も不足しており、実現できなかった」──コンテンツとサーチを連携させることの有効性を、この頃から強く感じていた。

いま、マイクロソフトは、多彩なコンテンツ、サーチなどの多様な情報提供サービスを車の両輪とする施策を中心に、オンラインサービス事業を展開している。かつて、笹本氏が構想していたことが具現化されようとしているともいえる。ただ、「変化への対応」を柔軟に実行していくことが、この市場での成功につながるとすれば、基本政策もまた変容していくことはありうるだろう。