日立製作所(以下、日立)は22日、センサ技術を用いて組織内のコミュニケーション頻度や活動状況を測定し、データを地形図化して表示する組織活動可視化システム「ビジネス顕微鏡」の試作を発表した。

これまで組織内のコミュニケーションの実態を把握するには個人の感覚が頼りだった。しかし「ビジネス顕微鏡」では、日常の組織活動を測定/データ化し、地形図の形で図面に表示するシステムを用いて業務プロセスを振り返ることにより、恣意的な判断ではなく、事実に即した問題点発掘や改善方法の提案を行うことができる。日立は、組織運営に伴うリスクの低減、生産性向上への活用が期待できるとしている。

組織活動可視化システム「ビジネス顕微鏡」は、赤外線センサ、3軸加速度センサ、マイクセンサ、各員が装着した名札型のセンサネット端末からデータを収集する。試作された名札型のセンサネット端末は無線通信デバイスと小型電池が搭載されている。重さは約60グラム。複数の赤外線センサの配置を工夫し、時間をずらして駆動制御する技術により、水平/垂直方向約30度、距離2メートルの範囲で名札型センサネット端末を検出している。

名札型センサネット端末

赤外線センサデータから収集/解析された対面頻度データは、社員どうしの相互影響の度合いを地形図上に表示する「組織ダイナミクス像生成技術」を用いて「組織地形図」に表示される。この「組織地形図」は非常にユニーク。まず、組織全体を島で表現し、活発にコミュニケーションがとられると地形図の内側に突き出した岬が形成される。メンバ間の対面頻度に基づき、つながりの強い人どうしが集まって山を造り、等高線で表現される。大きなグループは高く裾野の広い山に、小さなグループは低く小さな山に、これらがつながりあうとグループ間の複合的な関係が山脈状に表現されるのだ。

ユニークな組織地形図。活動状況が一目で把握できる

これにより、従来の組織図では見えない組織の構造が、センサによる実測値のみを用いて画像化され、組織の動的な変化が一目でわかる。対面時間だけでは捉えきれない社員間の行動や意思疎通上の相互影響度は加速度センサで解析。これを組織地形図上に重ね合わせて表示することも可能だ。

本システムの実証実験は、今年1月から日立総合計画研究所と日立製作所基礎中央研究所の37名で行われた。その結果、プロジェクト内で不具合が発生したときに組織状態が変化する様子や、チーム内の意思疎通が改善が必要な部分把握できたという。

日立は今後も生産性改善やリスク予測サービスの事業化に向け、社内外で「ビジネス顕微鏡」の実証実験を進めていく予定だ。