アクセンチュアは19日、各国政府の顧客サービス成熟度ランキング調査を発表した。同調査は、同社が2000年以降毎年実施しているもので、今回が8回目。今回の調査は、2007年1月に、日本をはじめ、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、マレーシア、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、シンガポール、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、米国、英国の22ヵ国を対象に、各国で任意に抽出された18歳以上の男女約9,000名に対して行われた。

調査は、政府サービスのオンライン化の提供レベルを測る「サービス成熟度」、顧客視点に立った政府サービスの実現度を問う「顧客サービス成熟度」、国民アンケートによる直接評価を反映した「国民の声」の3点を柱に、総合的な評価を算出し、各国を比較した。なかでも「顧客サービス成熟度」は、50%の加重比率が与えられ、今回調査を左右するカギとなるポイントとなり、各国政府が顧客サービスにおける「サービス実現が国民中心のものか」「多チャンネルになっているか」「行政府全体の横断的なものか」「積極的なコミュニケーションや啓蒙活動はあるか」の4つの柱への対応度がチェックされた。また、"国民の声"は、それらに対する国民の主観的な評価として、今回調査から採用され、評価全体の40%の加重を占める。

調査の結果、総合評価のランキングトップは、前回(2005年)4位のシンガポール。結果、前回1位のカナダ、2位の米国がそれぞれ2位、3位へと順位を下げるかたちとなった。また、4位から7位に、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドのスカンジナビア諸国が順にランクインし、ランクアップした。

同社によると、今回の評価プロセスでは、評価ポイントのうち「国民の意見」がより重視されたため、首位に立ったシンガポールをはじめ、スカンジナビア4カ国がスコアを伸ばした要因だとしている。「過去3年間で顧客サービスが向上した」と回答した割合が、米国で41%に留まっているのに対し、シンガポールでは79%に達し、評価ポイントが大きく左右された。

一方、日本の総合評価は前回5位から10位に後退。日本は「サービスの成熟度」において、他国と比較して高い水準にあり、オンライン化の整備は進んでいるものの、行政サービスのユーザビリティの向上やインセンティブ制度の導入、広報活動などのサービスの利用促進のための取り組みが乏しく、サービスの利用が進んでいない状況のため、顧客サービス成熟度"が相対的に低い評価となり、評価全体を大幅に低下させる結果となった、と今回の調査結果を同社は分析している。

また、「過去1年間に行政機関に問い合わせを行った際に利用したチャネル」として、日本は96%が「行政機関窓口」、対し「インターネット」と答えた割合はわずか5%で、行政窓口としてのインターネットの利用が進んでいない実態を裏づける結果となった。これに対し、総合ランキング1位のシンガポールでは、37%が「インターネット」と答え、「行政機関窓口」と答えた31%を上回り、日本との歴然とした差が示された。

総合評価トップはシンガポール、日本は第10位

日本ではインターネットの行政窓口利用が進んでいない実態が明らかに

さらに、「行政機関への問い合わせに利用したいチャネル」として、日本は「インターネット」が25%、「行政機関窓口」が30%となり、実際の利用度と希望との間に大きな隔たりがあることがわかった。これに対し、シンガポールは、それぞれ22%となり、現実と希望にあまりギャップがなく、これが行政サービスに対する国民の満足度につながり、"国民の声"の高評価ポイントのひとつになっていることが伺える。

アクセンチュア 官公庁本部エグゼクティブ・パートナー 後藤浩氏

この結果について、同社官公庁本部エグゼクティブ・パートナーの後藤浩氏は「行政機関の窓口の利用が1/3になり、インターネットの利用が5倍になると、チャンネルに対する期待と希望のギャップが埋まるイメージだ」と説明する。

また、「行政機関が重点的に投資して改善を行うべきチャネル」として、日本は31%が「インターネット」と回答し、他の選択肢を上回り、利用への期待度の高さに準ずる結果が示された。

同社の官公庁グループCRM担当エグゼクティブ・ディレクターのデビッド・T・ロバーツ氏は、今回の調査結果について「多くの国において国民への情報発信のための新しいテクノロジーの導入が進んでいるものの、窓口となるバックエンドのインフラがそれに追いついていない。もっとも画期的な顧客サービスプラットフォームとは、フロントエンドの顧客サービスとそれを可能にする優れたバックエンドとを結びつける極めて総合性の高いものだ」と語っている。

また、政府の顧客サービスに対する総合的なアプローチを支える要素として、「顧客(国民)のニーズを知る」「関連部門やシステム間のつながりをつくる」「スタッフを効果的に配置する」「単独で行わず、周囲と協力する」の4点を挙げ、これらの継続的な改善を念頭に、顧客サービス戦略の進化の必要性を提言した。