米YouTubeの共同創業者でCTOのSteve Chen氏は6月14日(現地時間)、Google Blogに「The state of our video ID tools」と題したエントリを掲載し、YouTubeが違法コンテンツアップロード対策のための新しいツールのテストを開始したことを明らかにした。同社が以前に導入した米Audible Magicの音声認証技術とは異なり、今回の新ツールは動画部分の"特徴"を抜き出してコンテンツ・データベースとの比較を行い、アップロードされた動画が著作権に抵触するものかどうかを判定する。

同社が違法アップロード対策のための新ツールの導入テストを開始したことは、すでにWall Street JournalやReutersなどの一部メディアが報じている。Chen氏はこの件に触れ、アップロードされるコンテンツの認証をより効率的に行うための技術を数カ月前から開発しており、自動認証システムのテストを開始したことを認めた。技術的なハードルは高いものの、「そう遠くない将来にも"革新的"なソリューションを発表できると確信している」と同氏は結んでいる。

前述のAudible Magicの技術では、音楽コンテンツ・データベースとの照合でアップロードされる動画が著作権に抵触していないかを判定している。すでにWarner Music、Sony BMG、Universalなどのレコード会社との提携で違法ファイルの排除に乗り出しており、一定の成果を上げている。テスト中の技術はこれを発展させたもので、動画の特徴を抜き出してバックエンドのデータベースと照合し、違法コンテンツの判定を行う。だが動画の自動判定は音声のケースよりも難しく、成功の保証はないことをChen氏も認めている。

現在YouTubeでは、ポルノや暴力動画、著作権違反などのコンテンツのアップロードを利用規定で禁じている。ポルノや暴力動画に関しては、YouTubeコミュニティのユーザーがフラグを立てると運営が内容をレビューし、すぐに排除に乗り出すという形でうまく循環している。これらのコンテンツは内容を把握しやすいため、容易に判別できる。ところが著作権侵害を正確に判別するのは難しい。数が膨大なうえ、最終的な判断はコンテンツホルダー次第という面もある。現在でも、利用規程に違反したコンテンツはホルダー側の通報によって削除され、違法アップロードの常習者はアカウントごと抹消される。こうした経緯で削除されたコンテンツは"ハッシュ"が記録され、同じコンテンツが再アップロードされないようになっている。

またデータベース構築における課題も多い。ホルダー自身によってコンテンツの削除や再アップロードが日々繰り返されるケースがあるほか、ネット上にアップロードされないコンテンツもある。最新のコンテンツを常に把握することも課題だ。Chen氏は「どんなに優れた技術を開発しようとも、それが著作権ホルダーの意図を汲み取ることは決してないだろう」ともコメントしている。