初日から約4万5000人が詰めかけた「Interop Tokyo 2007」。2日目となった14日も、非常に示唆に富んだ2つの基調講演が行われた。1つは「光ブロードバンドの発展とNGNへの取り組み」と題したNTT副社長の山田隆持氏の講演。もう1つは、APNICチーフ・サイエンティストのジェフ・ヒューストン氏が講演した「通信統合の神話に迫る」。2つの講演内容をレポートする。

2日目最初の基調講演は、NTTでCTO的な役割を果たす山田氏が、2007年度末にも商用サービスを始める同社のNGNへの取り組みを話すとあって、多くの聴衆が集まった。講演ではまず、日本における光ブロードバンドの発展ぶりが各種データで示された。NTT東日本では2006年12月、NTT西日本では2007年3月に、FTTHの累計加入数がADSLを上回った。山田氏は「2008年の6~7月には、東西合わせて加入数が1000万を突破するだろう」との見通しを語った。NTTが中期経営計画において大目標に掲げ、NGN成功のメルクマールとされている「2010年で3000万のFTTH加入」も決して大げさな数字ではなくなってきたといえる。

山田氏は続いて、NTTが目指すNGNの姿、取り組みについて説明。「フルIP・光化するNGNでブロードバンド、ユビキタスへの対応を進めるのは当然として、ITCの課題克服、社会・経済の課題解決への貢献も大きな柱となる」と強調した。

ITCが抱える主な課題とは、トラフィック急増、セキュリティ、不正利用、大規模災害への対応。IP放送などがさらに普及してくれば、今以上にトラフィック増加は緊切な課題となり、NGNでも相当に高いコストパフォーマンスが求められる。だが、山田氏は「過去15年間で光ファイバー通信のコストは数十分の一になったが、まだまだ技術革新は可能」と対応に自信を見せた。一例として、NTT未来ねっと研究所が開発した最新WDM(波長分割多重)技術をデモ映像を交えて披露し、同技術を使えば、光ファイバ1芯を1000波(1波長当たり2.67Gbs)に多重化できると述べた。

不正利用への対策としては、「発信者ID認証」技術を用いて、回線レベルの認証を実現するとし、「オンラインバンキングなら自宅回線でしか振り込みをできなくする制御も可能」と例をあげた。また、大規模災害への対応については、「固定電話網で築いてきたノウハウを継承し、通信単独ではなく、CIP(重要インフラ保護)政策の観点から交通・金融・電力などの他の社会インフラとも連携していく」と語った。

社会・経済の課題解決への貢献とは、例えば、少子高齢化社会に対応した高度な通信アプリケーションを提供することを指す。家庭でもオフィスと変わらないように勤務できたり、遠隔でも高度な医療・介護を受けられる環境をITCで実現していくという。NTTのNGNには、「SNI(Application Server - Network Interface)」が用意されており、サービス事業者がNGNを利用して各種サービスを自社サーバーから提供できる。この仕組みを利用したNGNアプリケーションの開発が活発になりそうだ。

山田氏は「4段階のQoS(サービス保証)を取り入れるNGNでは、従来なら専用線を使わざるを得なかったような高品質な通信アプリケーションを低コストかつ簡単な仕組みで提供できる」として、ハイビジョン映像によるテレビ会議、遠隔病理診断、子供の行動をネット上で見守る「ユビキタス見守り」など、パートナー企業のNGNアプリケーションを紹介した。NGNと言えば、VODなどコンテンツ配信に目が向きがちだが、幅広いアプリケーションが生まれてきそうな気配だ。