調査会社の米Gartnerの技術動向調査部門のディレクター Brian Prentice氏によると、デジタルデバイスやコンテンツおよびサービスの激増に伴うITの消費化が増大するにつれ、組織における力関係は個人へとシフトしつつあるという。そして、人々の生活にITが入り込むようになった昨今、従来の「自宅」と「オフィス」といった境界線が曖昧になり、近い将来、「デジタルフリーエージェンシー(digital free-agency)」という新しいワークスタイルが登場するだろうという予測を5月30日(現地時間)発表した。

「デジタルフリーエージェンシー」とは、在宅勤務や非常勤労働といった、特殊な労働モデルを実現するために、仕事用と個人用のコンピュータがいかに混在して必要かを表すために、Gartnerが作り出した用語。

Prentice氏はさらに、2015年までに、企業は有能な人材を確保するために従業員の労働時間を短縮することになるという。というのも"9時 - 5時"というような従来の就労形態では公私を両立させるのが難しく、団塊世代の退職者や子育て中の労働者世代の女性、米国において「ジェネレーションX」と呼ばれる1959年から1980年生まれの世代たちは、「良いワークスタイル」を求めているからだ。また、「一家の大黒柱」や「家事担当」が家族内でただひとりという伝統的な家族観や、定年が労働生活の終わりだという価値観が社会的に変化していることも影響していると分析している。

Prentice氏は、政府やビジネス界ではこうした世代を潜在的な労働力として世界的に評価しており、社会的観念や技術の変化、政策転換も伴い、今後ワークスタイルは確実に変化していくだろうと分析している。そして企業は、こうした潜在的な労働者から有能な人材を確保するために、現在の週40時間労働を20時間に半減すべきだと提言する。

Prentice氏によると、週20時間労働制の導入は、すでに確立された状態の企業の管理体制を根本から再編することなく、労働者の雇用問題を解決するシンプルで有効な方策だという。また、全従業員の労働時間を半減すると言うよりも「週20時間労働制」という言い方のほうが、労働者にとっての企業イメージは高く、優秀な人材を維持しやすいという。同氏は企業のCIO(最高情報責任者)らに対して、週20時間労働制移行のために要する長期的な計画を早急に立てるべきだと促している。

また、デジタルフリーエージェンシーについては、「挑戦的な試みだが、明確な管理戦略の展開を可能にし、将来的に一般市場でのイニシアティブを取ることができる、ビジネスにとって価値ある機会」だと捉え、その採用を奨励している。