日立製作所と日本オラクルは28日、両社によって検証された"大規模Webシステムの拡張性および可用性に関するベストプラクティス(最適な指針)"を公開した。この検証はオラクルのグリッド検証センター「Oracle GRID Center」にて、日立のブレードサーバ「BladeSymphony」、オラクルの「Oracle Application Server 10g」「Oracle Database 10g」を組み合わせたLinux環境上で行われたもの。大規模システムにおいては、拡張性と可用性は"相反する関係"と言われがちだが、今回の検証結果はその既成概念を打破する数値として注目されそうだ。

日本オラクル システム製品統括本部 営業推進部 シニアマネージャ 北島伸安氏は「次世代のビジネスソリューション実現において、"業務の継続性(BCM: Business Continuity Management)"は欠くことのできないインフラ基盤。仮に災害などが起きた場合でも、継続してサービスが実行されることが重要になってくる」とし、そのためには「データベースサーバ単体だけの可用性を高めてもダメで、システム全体における最適性を見出さなければならない」とMAA(Maximum Availability Architecture)の重要性を強調する。今回の日立との共同検証では、大規模なシステム上でも可用性を大きく損ねることなく、高いスループットを実現できたという。

今回行われた検証は「拡張性の実証」「可用性と性能」、検証システムは以下の通り。

  • アプリケーションサーバ…RHEL ES4 / Oracle AS 10g / BladeSymphony BS320(8ブレード)
  • データベースサーバ…RHEL AS 4 / Oracle Database 10g、Oracle RAC 10g / BladeSymphony BS1000(8ブレード)
  • クライアントマシン8台
  • 検証Webアプリケーション…JPetStore

「拡張性の実証」では、データベースサーバ/アプリケーションサーバそれぞれ最大8ノードを組み合わせたグリッド環境上でWebアプリケーションによるベンチマークを実施し、ノード追加におけるスケーラビリティが検証された。結果、8ノード時のスループットは1ノード時におけるそれの7.88倍という拡張性を実現した。

「可用性と性能」では、Oracle AS Clusterのレプリケーション機能をオンにした場合とオフにした場合のスループットを比較、ノード数が増えた場合でもレプリケーションオンで1割程度のオーバーヘッドしか生じないという結果を得ている。なお、このレプリケーション設定に関するチューニングポイントは、日立のサイトにてベストプラクティスとして公開されている。

両社は「今回の検証結果をオープンにすることによって、顧客の検証コストを下げることが可能になる」と、公開の意義を強調する。検証アプリケーションにSpring FrameworkのJPetStoreを選択したのも、オープンソースで大規模OLTPシステムの実現が容易なことに加え、「Oracleに特化した設計ではなく、一般的な設計」であることも重要だったという。両社によるグリッド検証は今後も継続的に行われ、9月ごろには「Webシステムの拡張性/高可用性」についての結果が発表される予定だという。