世界最大のBSDカンファレンス
5月18日および19日(米国東部標準時)の2日間、カナダの首都オタワにあるオタワ大学SITEビルディングにおいて、BSDの国際会議「BSDCan 2007」が開催される。BSDCanは、BSDに関係するOSや、それに関わるプロジェクト/研究の成果を発表/議論する国際カンファレンス。今回は3トラックが用意され、2日間で30を超えるセッションが催される。
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カナダの首都オタワにあるオタワ大学 - 年に一度、主要なBSD関係者が集合する |
同カンファレンスではさまざまなテーマのセッションが用意されているが、ユーザという視点で注目のセッションを挙げると以下のようになるだろう。
- FreeBSD SD/MMC cards - 組込み分野でのFreeBSDの普及に伴って必要になってきたSD/MMCカードデバイスに関する開発オーバービュー。同デバイスおよびブリッジ、またその周辺は現在開発が進められている最中
- Scan after one year - Coverityによって発見された問題やその傾向などの発表
- Enterprise Package Management - ITマネージャが必要となるエンタープライズレベルのFreeBSDパッケージ管理に関する発表
- Recent Improvements To The FreeBSD Ports Monitoring System - Portsモニタリングシステムと最近実施した改善に関する発表
- Network stack virtualization for FreeBSD 7.0 - FreeBSD 7.0におけるネットワークスタックの仮想化に関する発表
- The Varnish HTTP accelerator - HTTPアクセラレータVanishに関する実装技術の紹介ほか
- Delivering IT Examinations -- BSD Style - BSDスタイルを適用した廉価でセキュアなIT検定試験の実現に向けた取り組みの発表
- How Open Source Projects Survive Poisonous People - FLOSSプロジェクトにおける不定因子の扱いについての発表
- AutoFS - Automounting Filesystem for FreeBSD 6.x - FreeBSD 6.xで実装された新しいAutoFSの設計と実装
- Works in Progress Sessions - 現在進展中のプロジェクトなどのショート発表会。BSDCan 2008の内容や今後の方向性を探るうえで重要
FreeBSD 7向けに開発されたネットワークスタックの仮想化は特に興味深い。性能を保ったままネットワークスタックの仮想化を実現し、jail(8)の採用をさらに推し進める技術になるのではないかとみられている。FreeBSDの採用分野を考えるともっとも注目されるところだ。また、エンタープライズにおけるオペレーション要求に答えるEnterprise Package Managementや、高速なHTTP通信を実現するVanishも関心は高い。
特に興味深いセッションについては、追ってその概要をお伝えしていく。ただし、2007年3月開催のAsiaBSDCOn 2007で発表された研究/開発は割愛するので、それらについては掲載済みの記事を参照されたい(本稿の最後にある関連記事からたどれる)。
BSDCan 2007ではZFSやHPCクラスタリングのセッションもある。ZFSはいままさに開発が進められている注目技術なのだが、AsiaBSDCon 2007と時期が近いこともあり今回は取り上げない。ただし、同技術はエンタープライズレベルやビジネスレベル、ホビーレベルにおいてもきわめて重要な技術であり、今後も注視していくべきものであることは覚えておこう。