IT投資に対する効果が見えにくくなっていると言われる。従来型の単純なインフラ整備、業務効率化に向けたIT投資が減り、ビジネス戦略と不可分なIT投資が増えているからである。こうした状況の中で、企業は何を拠り所に投資判断を行い、ITの効果を見極めるべきなのか。上流ITコンサルティングの第一線で活躍する、日本HP コンサルティングインテグレーション統括本部のシニアコンサルタント、清水幸弥氏に話を聞いた。

--企業のIT投資に対する姿勢に変化はありますか。

多くの企業では、すでにIT投資が一段落しており、個別にシステムを導入/改善するというより、ITをどうやって使っていくのか、どうビジネスに貢献させていくのか、といった本質的なことを考えながら全体最適を図るフェーズにきています。そのため、テクノロジー中心のHPでも、我々のようなコンサルティングチームが支援に入るケースが増えています。つまり、IT自体を経営課題として認識し、ITでビジネス価値を生み出そうとする企業が増えつつあるわけです。

--企業がITに対して抱えている課題とは何でしょうか。

大きく分けて、2つあると思います。1つは、ITコストの引き下げや適正化。もう1つは、ビジネス戦略にITをマッチさせていくことです。

コストの問題は、絶対額の多寡というよりも、その内訳であり、経営層から効果が見えにくいということが本質でしょう。一般に既存資産の運用費がITコストの7割を占めると言われますが、経営層としては「コストが有効に使われているのか」という疑念を抱くはずです。

ビジネス戦略とITの関係で言えば、ビジネス戦略が明確になっていたとしても、それに呼応する"IT戦略"が不在しているというケースが多く見受けられます。IT部門としても、どうやってITでビジネス戦略をサポートしてゆけばよいのか、迷っているのが現状でしょう。例えば、商品開発競争が激化している金融系ならどこでも、新商品をいち早く投入したいと考えているでしょうが、レガシーなIT資産が多くて、そのビジネスの要求へ迅速に応えられない場合が多いようです。