ドイツの複合企業Siemensが汚職事件に揺れている。今回の汚職疑惑が持ち上がってから約5カ月、4月に会長とCEOが相次いで引責辞任、さらには米国でも新たな調査がはじまるなど、騒ぎは一向に収まる気配をみせていない。巨大企業を汚職に追いやったのは何だったのだろう。

公開入札での契約獲得のため20億ユーロの贈賄口座?

ドイツ最大の雇用者数を誇るSiemens

補聴器から発電システムまで幅広い事業分野を持つSiemensは、ドイツが誇る大企業だ。創業は1847年。160年の歴史を持ち、全世界に約40万人の社員を抱える。

そのSiemensで今回の汚職疑惑が浮上したのは2006年11月中旬のことだ。まず持ち上がったのはドイツ国外での公開入札における収賄行為。たとえば、2004年のアテネ五輪に関連した公共事業で、Siemensは関係者に賄賂を贈ってセキュリティシステムの受注を獲得したとされている。

本国ドイツのミュンヘン本社や各地オフィス、幹部の自宅を皮切りに、スイス、イタリア、ギリシャなど数カ国で捜査が行われた。その結果、同社のコミュニケーションズ部門などが契約獲得のために国外に賄賂用の口座を持っていたことが明らかになった。この贈賄行為は1999年から数年にわたって行われていた模様で、賄賂資金の規模は当初の2億ユーロとされていたのが20億ユーロ以上とも報じられており、Siemensの内部調査でも支払った賄賂金額は4億2,000万ユーロにものぼることが発覚したという。すでに逮捕者も出ており、元・現社員数人がこの贈賄行為に関与した疑いにかけられている。

Siemensはまた、今年1月には、電力発電機器の公開入札でカルテルを行ったとして、欧州委員会に3億9,600万ユーロの罰金支払いを命じられている。

汚職スキャンダルはこれだけではない。今年3月には、Siemensが労働者をまるめこむために、ドイツの大手労働組合に賄賂を贈っていた疑いが持ち上がり、当局は役員1人を拘留している。

Siemensの汚職問題は、大西洋を越えた米国にも波及している。米司法省(DoJ)、そして4月に入り米証券取引所委員会(SEC)が、賄賂口座に関する調査を開始しているのだ。