インスタント・メッセージング(IM)クライアントを開発するオープンソース・プロジェクトのGaimは、自身のウェブサイトに4月6日付けで「Important and Long Delayed News」と題するエントリを掲載した。"重要なお知らせ"と題されたエントリには、Gaimブランドの「Pidgin」への名称変更報告とともに、その背景に商標問題を巡るAOLとの確執の経緯がつづられている。人気IMクライアントが名称変更を行うまでに、どのような動きがあったのだろうか?
Pidginの前身となるGaimは、AIM(AOL Instant Messenger)、ICQ、MSN Messenger、Yahoo!、IRC、Jabber、Lotus Sametimeなど、幅広いIMシステムをカバーするIMクライアントとして人気を博してきた。IP-PBX「Asterisk」の作者としても知られるMark Spencer氏によって開発されたGaimは、WindowsやLinuxをはじめ、BSDやMac OS Xなど幅広いプラットフォームをサポートし、多くのユーザーに利用されている。いまでこそMSN MessengerとYahoo! Messengerが相互接続を表明するなどの動きを見せているが、各社のIMサービスは個々に独立しているのが一般的で、ユーザーはサービスごとにアカウントを取得して専用クライアントで接続する形態をとらざるを得ない。このため1つのソフトウェアで複数のIMアカウントに同時ログインできるIMクライアントは便利な存在で、Gaimもまたオープンソースソフトウェアであると同時に、こうしたIMクライアントの1つとして人気を得ていた。
前述の「名称変更のお知らせ」によれば、今回の問題の始まりは何年も前に遡るという。Gaimは当初「GTK+ AOL Instant Messenger」の名称でソフトウェアが公開されており、これにAOL Instant Messengerサービスを提供するAOLがクレームをつけたことで、作者のSpencer氏が名称を「Gaim」へと変更した。
その後しばらくは平穏な日々が続くものの、Gaimへの名称変更の数年後にAOLが「AIM」の商標を獲得すると、同社は再びGaimプロジェクトへとクレームをつけてきたという。こうした問題はSlashdotの本家でも話題となり、Gaimの開発者らは同時に弁護士らのアドバイスを受けることになる。弁護士を構成するメンバーは何度か変更があったものの、それぞれが「問題が解決するまで事を明らかにせず、秘密裏に進めること」とアドバイスしている。今回の話題がギリギリまで表沙汰にならなかったのも、これらアドバイスに加え、事情を知るメンバーの数が少なかったことも挙げられる。
こうした動きの中で一時的に止んだAOLからの圧力も、Gaim 2.0.0 betaの最初のバージョンが公開されたのと前後して、さらに強いものへと変化した。具体的には、GaimプロジェクトリーダーのSean Egan氏を訴える直前にまで事態が悪化していたと振り返る。こうした動きはGaim開発者の別のメンバーにも及び始めたことから、プロジェクトは事態解決に向けた次のような方策に乗り出した。
- Instant Messaging Freedom Corporationを設立し、Gaimに関する責任の所在を明確にする
- 問題解決まで新しいベータバージョンのリリースを停止する
- 以上の活動を、すべて秘密裏に進める