こんにちは。吉政でございます。本連載は、起業した初年度に年収2000万円を達成して、その後、13年間の大半を増収増益を実現した筆者が「100歳まで現役労働」を続けるため、自分の忘備録として書いています。前回に続き、今回も中高年が起業後に消えていく理由を説明します。

前回までのおさらいをされたい方は以下をご覧ください。

「自滅していく」ことが原因で、起業後に消えていく話は本当に多いです。今生き残っている社長の方々はさまざまなドラマを見てきたのではないでしょうか。

起業して軌道に乗せるのが第一の関門ですが、その次に持続させるという関門があります。 自滅と一言で言っても、そのパターンはいろいろあります。筆者はそうならないよう、自分へのチェックポイントとして本稿を書いています。

ちなみに、東京商工リサーチの調査によると、ベンチャー企業で10年後に生き残る割合は6.3%だそうです。20社起業して10年で1社しか残らないという状況です。厳しいですよね。筆者の会社はこの4月で15年になります。100歳まで現役で働くために、後55年はこの会社を存続させるつもりです。では、自分への戒めを兼ねて、起業者の自滅パターンを紹介していきます。

自滅パターン(1)惰性に陥っていく

起業してもサラリーマンでも、いずれにせよ、人間であればほぼ全ての人が陥るのが惰性ですよね。努力を結実させるには習慣化が重要ですが、その習慣化の先にあるのが惰性です。起業して軌道に乗ったら、その良いモデルや業務フローを習慣化して継続している方は多いと思います。

しかし、その習慣を続けていると、そのモデル自体が陳腐化したり、業務フローの実行時に注意力が散漫になったり、少しづつ品質が悪化していったりします。そして、会社は軌道に乗れば乗るほど、社長に対して忠告してくれる人が減っていくので、その惰性に気が付かないことが多いです。

これが有名な「ゆでガエル」現象です。ゆでガエルは自分がゆでられてることに気が付かないまま、気がついたらゆであがっているような状況を指します。起業後、惰性に陥って、自滅するパターンがまさにそれです。

自滅を防ぐには、ちょっとした変化に気が付くセンサーが備わっていること、数値で管理してその変化を数値でも確認できるような運営にすることが大事です。結果がわかり切った数字でも、毎回分析していると気が付くことが多いです。数値管理と自分の勘で気が付くことの両方が必要です。

勘の話は日ごろからチェックしておかないと鈍っていきます。どんなにAIが進歩しても、自分の勘は結構大事です。勘とAIやデータ分析の結果があれば万全です。成功するビジネスの種には匂いがあると思っています。筆者はこの嗅覚を大事にしています。

ちなみに、勘と数値以外に、顧問も重要と思うようになりました。若いころは仕事をしないで会社を回遊する顧問の人をあまり好きではありませんでした。しかし、社内の利権に関係がなく、ストレートに意見を言ってくれる人は結構重要なものたと気づきました。

個人的に思う優秀な顧問とは、「重要なことを客観的な表現で言える人」「ビジネスの嗅覚、経営センスと経営経験がある人」「いろいろなことに気が付く人」「いろいろな解決方法の引き出しが多い人」です。もし、そういう人がいたら大切にしたほうが良いかもしれません。

ちなみに、筆者も顧問業をしていますが、現在定員に達しており、この後も大型の仕事の順番待ちもあるため、数年間は新規契約ができません。ほんとありがたいことです。

また、惰性に陥らないように、気分転換にいろいろな場所で仕事をします。会員制ライブラリーの契約をしたり、コワーキングスペースに行ったり、ホテルに缶詰めになったりなどです。

また、最近では自宅で仕事をする際にもワイシャツやスーツを着ることもあります。これは意外に効果的でした。また、カミさんにスローガンを書いてもらって飾ってます。長年連れ添っているカミさんは筆者のことをよく知っています。

「テキパキやる」という文字はまさに惰性にならないための言葉だとも思っています。特に年を取っていくと頭の回転が落ちたり、体力が落ちたりします。老いるとテキパキできなくなりがちです。朝起きて、ストレッチして、やるべきことをテキパキするとその日の生産性は高くなります。

自滅パターン(2)生活習慣が乱れていく

これにもいくつかパターンがありますが、一番多いのは、一日の仕事を止めるタイミングがつかめず、気が付いたら睡眠不足になり、体調を崩して自滅するパターンです。

起業して軌道に乗ると、依頼も多くなり、ついつい仕事を受けてしまいがちですよね。ちなみに、「もう受けられません」というと、お金を積まれて、単価がどんどん上がって行くようなことも経験しました。その依頼に応えるために、業務プロセスを改良して、より生産性を上げることもしました。

しかし、体力にも健康にも限界があります。人を増やせばよいという考えもありますが、経験上、人が増えると、リスクが上がり、社長の役員報酬は落ちていくことが多いです。そして、少し古い本ですが、『イノベーションのジレンマ』に組織を大きくするときに50名と100名の壁があると書いてありますが、まさにその通りです。組織の規模に応じて仕組みの変革が必要になり、その変化には痛みを伴います。興味がある方は同書を読まれるとよいかもしれません。

しかし、今はクラウドの恩恵を受け、さまざまなサービスを安価に利用できるので、スタッフをむやみに増やさなくても、ある程度事業を拡大できる時代になりました。ちなみに筆者の会社「吉政創成株式会社」は12社の会社のマーケティングアウトソーシングを行い、Python試験、PHP試験、Rails試験、IPv6検定などの合計10の認定試験の事務局を担当していますが、総スタッフは非常勤スタッフ13名です。フロントに立つのは筆者1名です。効率的に回っていると思います。

人を増やすとそのための管理者が筆者以外に必要になってきますし、管理部門も必要になりますので、利益は一気に下がります。それゆえ、これ以上の組織規模にはしないようにしています。

もう一つの生活習慣の乱れによる自滅の話をします。めったにないことですが、サラリーマンが起業して軌道に乗ると、飲みに行く回数が増え、派手な生活になり、細かい仕事をしなくなり、業務を社員に任せて、自分はあまり仕事をしなくなるのです。確率としては少ないですが、まああることです。

「飲むのも仕事」と言う人が多いです。本当に仕事で飲むこともあるかもしれませんが、非効率な営業だと思いますし、飲み屋まで往復の時間と飲んでいる間の非生産的な時間、その後の酔った時間を考えると、飲みに行くたびに何十万円も損失する計算になします。遊びの時間も必要ですが、「飲むのも仕事」と言っている社長の会社が業績を伸びている例をあまり知りません。

自滅パターン(3)は「老けによる総合的自滅」なのですが、長くなりそうなので、次回に書きますね。

筆者が経験したことと筆者が気を付けなければならないことを紹介しましたが、少しでも参考になる人がいると幸いです。

それでは今日はこの辺で。