オール電化で蓄電池を使用するメリットは?デメリットと種類も解説

オール電化はガスを使用しないため、基本料金を電気1本にしたり火災のリスクを軽減できたりします。しかし、一方で停電すると家電が使えなくなり、お湯を沸かすこともできなくなるデメリットがあります。

そんなデメリットを解消できるのが蓄電池です。蓄電池は電気を蓄えられる設備で、停電時には非常用電源として利用できます。また、料金の安い夜間に充電した電気を日中に使用できるため、電気代の節約も可能です。

この記事では、蓄電池の基本概要やオール電化で蓄電池を利用するメリット・デメリット、注意点について解説していきます。オール電化と蓄電池設置を併せて検討している人は必読です。

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目次

蓄電池とは

蓄電池とは

蓄電池といっても「大きな電力の充電器でしょ?」などと、漠然としたイメージを持っている人も多いかもしれませんが、実は種類もさまざまです。そこでまずは蓄電池とはどのようなものなのかについて、詳しく解説していきます。

蓄電池の能力と役割

蓄電池は、電気を充電して蓄えられる電化製品です。充電した電気は普段の生活時はもちろん、災害が起きた際の非常電源としても使用できます。さらに電力は基本的にコンセントから充電することが可能なため、一般家庭でも取り扱いしやすいです。

また、太陽光発電で作った電気を充電することもでき、災害時の電源の自給自足設備としても注目を集めています。

蓄電池の種類

蓄電池は素材によってリチウム蓄電池や鉛蓄電池、ニッケル水素蓄電池、NAS電池などの種類があります。中でもリチウム蓄電池が使用されていることが多く、今回解説している商品を含めて家庭用蓄電池の多くで使用されています。リチウム蓄電池は小型化できて寿命が長いことが特徴です。

種類名特徴使用される場面例
リチウム蓄電池
  • エネルギーの密度が高い
  • 小型化できる
  • 寿命が長い
  • 価格が高め
  • 携帯電話
  • ノートパソコン
  • 家庭用蓄電池
鉛蓄電池
  • 価格が安い
  • 安定性に優れている
  • 過充電に強い
  • 寿命が短い
  • 大型で重い
  • 自動車のバッテリー
  • 産業用蓄電池
  • フォークリフトの主電源
ニッケル水素蓄電池
  • 過充電や過放電に強い
  • 急速充電に強い
  • 自然放電量が大きい
  • 電圧が下がりやすい
  • 乾電池型二次電池
  • ハイブリットカーのバッテリー
NAS電池
  • エネルギー密度が高い
  • 寿命が長い
  • 低価格
  • 作動温度の300度に維持する必要がある
  • 大規模電力貯蔵
  • バックアップ電源

蓄電池の効果的な利用方法

蓄電池をより効果的に利用するためには次のポイントを押さえておくとよいでしょう。

  • 高温多湿にならない場所に設置する
  • 過充電しない
  • 残量0の状態で放置しない

家庭用蓄電地で使用されるリチウム蓄電池は、高温で使用すると電池容量が低下しやすい傾向にあります。また充電のしすぎや残量0での放置は、蓄電池に負荷を与えてしまうので注意が必要です。

蓄電池が向いている家庭

蓄電池は電気が溜められて、必要なときに使用できる便利な電化製品です。しかし、必ずしも自宅に蓄電池を導入したほうがよいとは限りません。蓄電池が向いている家庭は次の2つです。

  • オール電化の住宅に住んでいる
  • 太陽光発電を導入している

導入に向いている理由を詳しく解説していきます。

オール電化の住宅に住んでいる

オール電化の家は、すべてのエネルギーを電気でまかなっています。そのため、停電で電気が来なくなるとテレビや空調設備が使えなくなるだけでなく、料理をしたりお風呂を沸かしたりすることもできません。そのため停電などの緊急時に備え、オール電化の家は蓄電池を設置しておくのがおすすめです。

また、緊急時だけでなく普段の電気代節約にも利用できます。電気料金の安い深夜に蓄電して昼間は蓄電した電気で過ごせば、そのまま電気を使用するよりも電気代を安くすることが可能です。

太陽光発電を導入している

太陽光発電は、太陽が出ている時間しか電気をつくれないため、電気を溜めておける蓄電池があると便利です。太陽光発電ができない夜間や雨・雲の多い日も、蓄電池を充電しておくことで電力会社からわざわざ電気を購入せずに済みます。

また、蓄電池があれば余分につくられた電気を売電する必要がなくなり、太陽光発電でつくられた電気を自宅で効率的にまわすことが可能です。

蓄電池と併せて太陽光発電を検討しようとしている人は、以下の記事もおすすめです。

オール電化の家で蓄電池を使用するメリット

オール電化の家で蓄電池を使用するメリット

オール電化の家で蓄電池を利用するメリットは次の3つあげられます。

  • 電気代を安くできる
  • 停電時に電気が使える
  • 太陽光発電と併用できる

以下でそれぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。

電気代を安くできる

多くのオール電化向けのプランは、夜間よりも昼間のほうが電気料金が高く設定されています。そのため、電気を使用しない就寝時に電気を蓄電池へ溜めておき、昼間は蓄電池の電気を使用したほうが電気代を安くできます。テレワークなどで日中に自宅で活動することが多い人は、特に大きなメリットになるでしょう。

停電時に電気が使える

日本では停電を引き起こす災害が、いつどこで起きてもおかしくありません。災害で停電すると復旧までに何日もかかる可能性があります。しかし蓄電池を自宅に設置していれば、蓄電池に充電してある電気を非常用として使用できます。蓄電池の容量や電気の使用量にもよりますが、1日~5日程度は電力の維持が可能です。

ただし蓄電池によっては、電圧の違う家電に対応していない可能性があるため注意が必要です。100Vのみ対応の場合は、200VあるエアコンやIHコンロが使用できません。蓄電池の購入時には対応電圧を確認して選ぶとよいでしょう。

太陽光発電と併用できる

蓄電池と太陽光発電を併用すれば、太陽光発電が発電していないときは蓄電池の電気でまかなえるため、効率的に電力を使用できます。太陽光発電は、電力会社へ売電よりも購入する価格のほうが割高です。そのため、太陽光発電で発電した電気は、売電するよりも蓄電池に溜めて自宅で消費したほうがお得になります。

オール電化の家が蓄電池を使用するデメリット

オール電化の家が蓄電池を使用するデメリット

蓄電池をオール電化の家で使用すると、電気代を安くできたり非常用電源として使用できたりもします。しかし、メリットばかりだけでなく次のようなデメリットもあります。

  • 初期費用がかかる
  • 設置するスペースが必要
  • 蓄電池は劣化していく

これらのデメリットも把握しておけば、その点を考慮して購入・設置ができるため、あわせて確認してください。

初期費用がかかる

蓄電池は初期費用が高額です。メーカーや機種、容量により異なりますが、初期費用は平均で100万円以上かかります。もしそれに補助金を利用したとしても、約80万円~160万円はかかってしまうでしょう。

例えば、15年寿命の100万円の蓄電池の費用は毎月約5,500円です。蓄電池を利用して、月間20,000円の電気代が20%削減できるとすると、節約できる電気代は1カ月4,000円なので、初期費用が回収できないことになります。

そのため、初期費用としてはある程度まとまった額が必要になることを考慮し、さらに費用回収が後々可能かどうかもあらかじめ計算しておくことをおすすめします。

設置するスペースが必要

蓄電池を設置する場合は、ある程度のスペースを確保する必要があります。目安は屋内型の小型モデルでエアコンの室外機程度、屋外型は室外機2台分のスペースです。

また消防法や火災予防条例の規制により、設置場所は燃えにくい素材の床や土間でなければならず、10kWh以上の蓄電池の場合は建物から3m以上離す必要もあります。ほかにも、点検スペースを蓄電池の周辺に確保するなど、本体のサイズ以上のスペースを用意しなければなりません。

さらに設置後10年~15年は同じ場所に置くことになるため、将来的に邪魔にならないかも考慮して設置することが大切です。

蓄電池は劣化していく

蓄電池の寿命は、メーカーや機種により違いがありますが、使用耐用年数は約10年~15年とされていて半永久的に使用できるわけではありません。使用耐用年数を超えたからといって、すぐに動かなくなるわけではありませんが、充電と放電を繰り返すごとに蓄電容量が徐々に減少していき経年劣化します。

オール電化で蓄電池導入時に利用できる補助金制度

太陽光発電-ローン-専門家-解説

蓄電池導入にはコストがかかるため、補助金を利用して費用を抑えることをおすすめします。補助金を利用すれば負担が少なくなり、さらに後々の初期費用回収もしやすくなるでしょう。

ここからは蓄電池導入で利用できる補助金制度を紹介します。

マイナビ編集部

蓄電池導入の際、月々の負担が不安な場合はローンを利用する方法もあります。補助金の他にローンを利用することで、コストの負担を減らせます。

国からの補助金

国の蓄電池の補助金として「蓄電池等の分散型エネルギーリソースを活用した次世代技術構築実証事業費補助金」が公募中です。一般社団法人のsii 環境共生イニシアチブが運営しており、期間は2022年4月8日~12月23日までです。(※公募は終了しました)

設備区分 家庭用蓄電システム
条件
  • 蓄電システム購入価格と工事費の合計が目標価格以下であること(目標価格:設備費と工事費・据付費が16万5,000円/kWh)
  • SIIで事前に登録されている機器であること
補助率 3分の1以内
補助金上限額 (設備費・工事費)
40,000円/kWh
初期実行容量
【TPOモデル】
(設備費・工事費)
55,000円/kWh
初期実行容量

”参考:sii 一般社団法人 環境共創イニシアチブ令和4年度 蓄電池等の分散型エネルギーリソースを活用した次世代技術構築実証事業費補助金」”

なお交付申請期間内であっても、補助申請金額の合計額が予算額に達した場合は受付を終了するので注意してください。

自治体からの補助金

補助金は国だけでなく、地方自治体でも行っている可能性があります。蓄電池を設置する家がある自治体の窓口やホームページを確認してみてください。ここでは例として東京都と京都市の補助金制度を紹介します。

【東京都の補助金:家庭における蓄電池導入促進事業 災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大事業

令和3年度申請受付期間2024年5月31日~(予算額に達し次第終了)
対象機器蓄電池システム
要件
  • 都内の住宅に新規に設置された助成対象機器であること。
  • 令和6年4月1日から令和11年3月30日までの間に助成対象機器を設置すること。
  • 国が二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業)における補助対象機器として一般社団法人環境共創イニシアチブ以下、「SII」という。)により登録されているものであること。
  • 助成対象機器について、都及び公社の他の同種の助成金を重複して受けていないこと。
  • 助成対象者のうち、独立行政法人、地方独立行政法人並びに国及び地方公共団体の出資、出えん等の比率が50%を超える法人については、公社が求めた場合、住宅のエネルギー消費量削減に関する普及啓発を行い、当該普及啓発について報告すること。
補助率機器費の4分の3
補助金上限額以下のうちいずれか小さい額
蓄電容量(6.34kWh以上):15万円/kWh(100kWh未満)
蓄電容量(6.34kWh未満):19万円/kWh(最大95万円)

”参考:家庭における蓄電池導入促進事業 災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大事業

東京都の補助金制度では太陽光発電の設置が必要です。自治体によって細かい要件が異なるため注意しましょう。

【京都市の補助金:令和6年度京都市建築物の太陽光発電設備等上乗せ設置促進補助金】

令和3年度申請受付期間2024年4月8日~2025年7月31日(予算額に達し次第終了)
対象機器
  • 蓄電システム
  • 太陽光発電システム
要件
  • 本補助金で導入する太陽光発電設備の付帯設備として設置すること。
  • 導入価格(工事費込み・税抜き)が次の価格以下であること。
      家庭用:15.5万円/kWh、業務用:19.0万円/kWh
補助金額(定額)導入費用の1/3
(工事費込、税抜)

”参考:京都市情報館令和6年度京都市建築物の太陽光発電設備等上乗せ設置促進補助金」”

京都市の補助金は、蓄電池以外に太陽光発電や太陽熱利用システムも補助対象設備になっています。

蓄電池の注意点

蓄電池の注意点

蓄電池は安い買い物ではない上に、長く付き合っていく相棒になります。そのため、導入するにあたり注意すべきポイントがあり、特に以下の4つの注意点を確認しておけば安心して購入できるでしょう。

  • 導入時の業者探しに注意
  • 定期的にメンテナンスを行う
  • 補償を確認して購入する
  • 太陽光発電と併用できるか確認する

ここでは各注意点を詳しく見ていきましょう。

導入時の業者探しに注意

蓄電池を設置するためには施工工事が必要になるので、確実に施工できる業者を探すことが大切です。業者を探すポイントは次の2つです。

  • 複数の業者から見積もりをとって比較
  • 補助金制度に詳しいか確認

業者はできれば3社以上見積もりをとって比較するとよいでしょう。比較する際は見積金額も大切ですが、見積書の明確さや担当者の説明の分かりやすさ、質問した際の受け答え、対応の速さなども確認してください。

また担当者に補助金制度について質問して、詳しく教えてくれるかどうかも重要なポイントです。補助金の申請はややこしく、個人だけでは難しい場合もあるので、慣れている業者がサポートしてくれれば安心できます。蓄電池は高額な機器なので信頼できる業者を選びましょう。

定期的にメンテナンスを行う

蓄電池は10年~15年と長い期間使用することになりますが、頻繁なメンテナンスは必須ではありません。しかし安心して長く利用するためには、定期的にメンテナンスを実施するのがおすすめです。蓄電池の設置業者を選ぶ際は、導入コストの安さだけでなくアフターメンテナンスの有無や内容も確認しましょう。

保証を確認して購入する

蓄電池の保証期間や内容は、同じメーカーでも機種によって異なります。特に保証の適用条件はよく確認しましょう。一般的に保証期間は10年で設定している場合が多いようです。

保証期間を長くしたい人は、プラス料金で延長保証が用意されている可能性もあるので確認することをおすすめします。また蓄電池を購入した業者や販売店が、独自に保証サービスを行っている場合もあるので、あわせて確認してみてください。

太陽光発電と併用できるか確認する

蓄電池と太陽光発電は、容量やスペックが合ったものを設置する必要があります。ほとんどの蓄電池は他社の太陽光発電に対応していますが、互換性がなく設置できないケースもあるので注意しましょう。

また、すでに太陽光発電を設置している場合は、異なるメーカーの蓄電池を設置すると、太陽光発電の保証が対象外になる可能性があります。後付けする場合は、メーカーとの相性や保証内容に詳しい業者へ依頼するようにしましょう。

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オール電化住宅の蓄電池利用でよくあるQ&A

最後に、オール電化住宅の蓄電池利用に関するよくある質問をまとめました。

蓄電池はどのくらいの時間使えるの?

蓄電池の使用可能時間は、使用する家電と蓄電池の容量によって変動します。以下のように家電を使用した場合は、10kWhの大容量の蓄電池なら約16時間、6kWh前後の一般的な蓄電池なら約8時間が目安です。

  • LED照明(2部屋):8時間
  • 省エネタイプ冷蔵庫:24時間
  • スマホ充電器:4時間
  • テレビ:4時間
  • IHクッキングヒーター:1時間
  • エコキュート:3.5時間
  • 省エネタイプエアコン(12畳):8時間

エアコンを使用しない場合は大容量蓄電池で約24時間、一般的な蓄電池で約16時間利用できます。

また、エコキュートを新たに使用せずに溜まっているお湯を使ったり、電力消費の激しい家電を使用したりしないなど節電を心がければ、大容量蓄電池で4日~5日持たせることも可能です。

蓄電池の価格は?

蓄電池の価格は機種や依頼する業者により変動しますが、機種代金と工事費用込みで80万円~200万円が相場です。蓄電池の費用はローンを組むことも可能です。また、補助金を利用して費用を抑えることもできるので、国や自治体の補助金を確認するとよいでしょう。

まとめ

オール電化の家で蓄電池を使用すると、非常時電源に利用したり電気代の安い夜間に充電して昼間に使用できたりなど、多くのメリットがあります。さらに太陽光発電を併用すればより効果的な使用が可能です。

ただし初期費用が高額で80万円~100万円ほどかかるため、国や自治体の補助金制度を活用するのがおすすめです。しかし補助金制度では対象機種が決まっている場合もあり、さらに多くは年度ごとに予算額が決まっています。そのため予算額に達すると受付期間中でも終了してしまうため、その点には注意しましょう。

また蓄電池の機種や設置業者を選ぶ際は、価格だけでなく保証サービスも確認してください。安くても保証がないと故障時に予想外の費用がかかり、結果としてコストが割高になってしまう可能性もあります。まずは本記事のポイントを参考に、複数の業者へ見積もりを依頼して条件を確認してみましょう。

※「マイナビニュース太陽光発電」は以下に記載されたリンク先からの情報をもとに、制作・編集しております。
東京都環境局
こどもエコすまい支援事業
葛飾区公式ホームページ
経済産業省

監修者情報

本記事の監修者 株式会社EX-World 代表取締役     髙島 岳彦

太陽光や蓄電池等の専門家。2017年より某外資系パネルメーカーに所属し年間1000件以上の太陽光を販売しトップセールスを記録。これまでの知見を活かしたYouTubeが業界NO,1の再生数を誇り、2021年に開業。現在は一般の方向けに自社で販売〜工事を請け負う。Youtubeチャンネル


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この記事を書いた人

マイナビニュース太陽光発電編集部は、太陽光発電の設置、補助金、運用における流れに関する様々な情報をわかりやすくお届けします。

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