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5 不動産投資の節税術

不動産投資の節税スキームを実例のシミュレーションをもとに解説

JUN. 08, 2025 10:00
Text : 藤原正明
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株式、債券、コモディティなど、資産の守りを固めるために分散投資をされている方も増えましたが、その中で今注目されているのが不動産投資です。

不動産投資は、安定した収益を見込める魅力的な投資手段ですが、利益に対して課せられる税金が一つの大きな壁となることもあります。 特に、税負担が大きくなると、せっかくの投資効果が薄れてしまうことにもなりかねません。

そこで、本連載では全5回にわたり、不動産投資における節税術をテーマに、税金を最適化し、より効率的に資産を増やしていくための方法を解説します。

税金の仕組みを理解し、実践的な節税策を取り入れることで、投資の収益性を最大限に引き出すことが可能です。

このコラムを通じて、税負担を減らしながら不動産投資の魅力をさらに深めていきましょう。

投資事例をシミュレーション

全5回にわたる本連載も今回で最後の記事となりました。

第4回までは、不動産投資で節税できる税金の種類や節税に向いている人・物件・スタイルなどをご紹介してきました。

最終回の今回は、実際に当社で不動産投資を行った場合の投資事例をシミュレーション結果と共にご紹介します。

まず今回購入する方の属性は以下です。

【A様】
年齢:48歳
職業:商社勤務
年収:2,000万円(課税所得:1,580万円)
金融資産:3,000万円

3年前に役職に就いたA様。給与は大幅に上がったものの、その分重税感を感じるようになり、少しでもそれを軽減したいというお悩みを抱えていらっしゃいました。

A様自身は、株式や投資信託の経験はありましたが、不動産投資に関しては未経験でした。様々な節税方法を探していくうちに私が出版している書籍を見つけ、当社のプライベート相談に申し込みいただきました。

プライベート相談では、当社のコンサルタントがお客様のご状況や不動産投資の目的・目標などをヒアリングし、融資戦略も含めたお客様だけの不動産投資プランをご提案しています。

今回は、A様のお悩みを解消するため、一年あたりの減価償却費が大きく取れる築年数が一定経過した木造もしくは鉄骨造で物件を購入していくことを提案しました。A様にご案内した物件は以下の通りです。

【物件概要】
構造:軽量鉄骨造
築年数:築35年(減価償却期間:5年)
物件金額:8,000万円(土地:3,200万円、建物:4,800万円)
購入諸費用:250万円
年間満室想定賃料:560万円(表面利回り:7.00%)
※年間空室率 2%
※家賃下落率 毎年0.5%
運営費用:110万円

【資金計画】
自己資金:1,050万円
借入金額:7,200万円(金利: 2.85%、返済期間: 35年、元利返済金済)

【運用条件】
保有期間:5年
購入者:個人
税率:43%(所得税・住民税)
売却金額:7,700万円(利回り:7.13%)

この条件で実際に不動産投資を行った際のシミュレーション結果が以下です。

まず、物件の満室時の賃料を表わす年間満室想定賃料ですが、年間を通じて常に満室ということはあまりなく、また賃料滞納が発生することもあるため、その損失分を考慮した賃料を求める必要があります。これを「実効総収入」と定義づけます。

さらに、物件を保有しているとさまざまな「運営費用(ランニングコスト)」が発生します。実効総収入から運営費用を控除すれば、正確な収入を導き出せます。これを「純営業収益 NOI=Net Operating Income」といいます。この純営業収益 NOIが物件の本当の収益力を表しています。

空室リスクを考慮し、空室率を2%と仮定したうえで、まず当該物件の1年目におけるキャッシュフローを解説していきます。年間満室想定賃料560万円で実効総収入が548万円なら、ここから運用費用110万円を差し引いた438万円が純営業収益 NOIとなります。

純営業収益 NOI
=実効総収入 548万円-運営費用 110万円
=438万円

その純営業収益 NOIに金融機関への融資返済である元利返済額を差し引きすると、113万円が税引前キャッシュフロー(以下:CF)となります。

税引前キャッシュフロー
=NOI 438万円-元利返済額 325万円
=113万円

ここからが本題、税金の計算をしていきます。

第4回までの連載でお伝えした通り、不動産投資は減価償却費などを経費としてマイナス計上ができます。それらの諸経費をNOIから差し引きすると、マイナス725万円となります。

一年目の不動産所得
=NOI 438万円-ローン利息 203万円-減価償却費 960万円
≒▲725万円

ここで、厳密には不動産所得がマイナスのときに給与所得など他の所得と損益通算する場合、土地取得にかかる支払利子分は損益通算から控除するという「土地等の負債利子の損益通算の特例」があるため、上記のマイナス所得をそのまま損益通算できません。

具体的には、「土地取得負債利子<不動産所得の損失金額」の場合には、不動産所得の損失金額から土地取得負債利子を控除した金額が損益通算の対象となります。

土地利子反映後の1年目の損益通算可能所得
=▲725万円+81万円(1年目の土地取得負債利子)
≒▲644万円

こうして不動産投資による約644万円の赤字を会計上でつくることができました。

赤字で計上した約644万円に対して、A様の所得税・住民税である43%が適用され、確定申告をすることで払いすぎた税金の一部である277万円の税還付を受けることができます。

このようにして個人の所得と会計上の赤字を損益通算することで課税所得を圧縮していく節税スキームが実現します。

税引前CF:113万円と、納税金額:277万円を足した390万円が一年あたりの税引後CFとなります。

税引後キャッシュフロー
=税引前CF 113万円-納税金額 ▲277万円
=390万円

今回のシミュレーションでは物件を5年間保有するので、税引後の累計CFは1,928万円となります。

出口戦略は?

では次に出口戦略について解説していきます。

前回お伝えしたように売却時に譲渡所得税がかかります。今回の場合は5年後に7,700万円になっているという想定で、長期譲渡所得である20%を納税しなければなりません。そして譲渡費用(仲介手数料)と売却時点の融資残債もこの段階で返済します。

売却時の税引前CFとしては、890万円となります。

5年間で建物金額4,800万円をすべて減価償却したので、この物件の5年後の簿価は物件金額から減価償却費の累計4,800万円を差し引いた土地価格の3,200万円となります。

※正確には建物の価値はゼロにはならないので、帳簿上では3,200万1円と記載されます。 簿価3,200万円の物件を7,700万円で売却できたので、譲渡益は4,246万円となり、これに対して長期譲渡税率20%が課税されます。

譲渡所得
=売却金額 7,700万円-土地建物簿価 3,200万円-譲渡諸費用 254万円
=4,246万円

譲渡所得税
=譲渡所得 4,246万円×長期譲渡税率 20%
=849万円

よって売却時の譲渡所得税として849万円を納税します。こうして売却時の税引後CFとして41万円が手元に残ります。

売却時の税引後キャッシュフロー
=税引前CF 890万円-譲渡所得税 849万円
=41万円

この売却による税引後キャッシュフローと保有期間中の税引後キャッシュフローを合算した最終キャッシュフローは1,928万円となります。もともとA様は1,050万円を自己資金として投下していたので、最終運用益は919万円となり、結果として効果的な節税が実現しました。

これが保有期間中の個人に課税される税率43%から、売却時に長期譲渡税率として20%が差し引かれて、結果23%の税圧縮が叶う、節税スキームの全貌です。

今回、全5回にわたる連載として、不動産投資における節税術をテーマにお届けしました。

不動産投資において節税を狙う場合は、築年数が一定経過した木造もしくは鉄骨造の一棟アパート・マンションをおすすめしましたが、一棟投資は容易にできるものではありません。不動産投資に関する知識を培い、ご自身の観点、視点でしっかり善し悪しを判断できる状態で、信頼できる企業を見つけることが大切です。

そのうえで、長期的な視点を持ち、節税だけでなく資産価値や収益性も考慮した投資判断を行うことが重要です。

当社では、YouTubeやコラムを通して、不動産投資に関する知識全般について、様々な情報を発信しておりますので、ぜひご覧ください。


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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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