近年、日本を取り巻くビジネス環境は大きく変化しています。
- 少子高齢化の深刻化 ── 優秀な人材を海外に求める動きが本格化
- インバウンド需要の拡大 ── サービス業界でも英語対応が不可欠に
- 国内市場の縮小 ── 成長戦略として海外企業を含むM&Aが増加
こうした流れを受け、私たちが英語に触れる機会は増えています。矢野経済研究所によると、国内の成人向け英語学習市場は年間約1,700億円規模。個人も企業も英語力向上に多額の投資を行い、それに呼応してサービスが乱立しています。
にも関わらず――国際的な英語力ランキングで日本は年々順位を落としている。
この原因はどこにあるのでしょうか?
- 目的やレベルに合わない学習法を選んでしまう
- 誤った方法で継続してしまう
- 習慣化の仕組みがなく途中で挫折してしまう
大人の英語学習における課題は多々ありますが、言えることは、学習法そのものは良くても、やり方と続け方を誤れば成果は上がらないということです。
本連載では、英語学習者が陥りがちな「英語学習の落とし穴」を取り上げ、第二言語習得論と延べ2万人超のビジネスパーソンの英語学習を支援してきたプログリットの知見から、実践的なヒントをお届けしていきます。
週1レッスンで英語は話せるようになる?
英会話レッスンは、スポーツで言えば練習試合。練習試合では今の実力を試したり、試合勘を養ったりすることはできますが、実力そのものは伸びません。野球で言えば、バッティング練習や守備練習なく試合ばかりしていても、バッティング力や守備力がアップしないのと同じです。
ところが英語学習では、この当たり前が意外と忘れられがち。語彙・文法・リスニング学習といったトレーニングをほとんどせず、週1回・30分のレッスンだけで学習を済ませてしまう人が少なくないんです。
目的思考が英語学習を変える
では、"トレーニング"と"練習試合"をどう組み合わせれば英語力が伸びるのか?
──この問いに答えるカギが「目的思考」です。
例えば、筋トレで鍛える部位を意識するほど効果が高まるのと同じで、「今は何を伸ばす時間か」を明確にすると学習効率が一気に上がります。
先ほどもお伝えした通り、英会話レッスンは練習試合。
ここで自分の力を試し、足りない点を見つけたら、その後のトレーニング(単語・文法・リスニング学習など)で重点的に鍛える──この流れで使うのが効果的なんです。
科学が示すインプット 8 : アウトプット 2
第二言語習得の研究では、効果的な学習配分はインプット 8 : アウトプット 2(あるいは 9 : 1)付近に集約されると言われています。インプットとは、単語・文法学習、シャドーイング、音読、多読など自分の中に取り込む学習。アウトプットは、英会話レッスンや英語日記のように自分で考えて外に出す活動を指します。
| 学習比率 | 典型的な学習 | 推奨モデル |
|---|---|---|
| インプット | 0~10% | 80% |
| アウトプット | 90~100% | 20% |
つまり、英会話レッスン(アウトプット)の効果を最大化するには、相当量の自習(インプット)が不可欠。週1レッスン(30分)のみでは、インプット0:アウトプット10という極端な偏りになり、伸び悩むのは当然なんです。
アウトプット 20%を"濃くする"には?
ここまでお伝えしたきた通り、英語学習はインプット重視が基本ではありますが、アウトプットの機会も欠かせません。
ただし、やみくもに英会話レッスンを受けても効果は限定的。限られたアウトプットの場をどう濃密にするかという観点も重要です。そこで今回は、多くの学習者が利用するオンライン英会話を"有意義な練習試合"に変える3つのコツを紹介します。
レッスンを"効かせる"オンライン英会話 3Tips
ポイントは、レッスンを"受け身"で終わらせず、 選ぶ・主導する・振り返るの3拍子で"試合効果"を引き上げること。ぜひ今日のレッスンから実践してみてください!
1:講師を厳選する
オンライン英会話は、講師の指導法などにばらつきが生じるケースも珍しくないですが、学習効率とモチベーションを最大化する上で講師との相性は重要。自分に合った講師を見つけましょう。
<実践方法>
- まず、5~6名の講師とレッスンを試す
- 自分が話すターンを多く作ってくれる、フィーリングが合う講師を3~4人見つけて、ローテーションに固定する
2. 自分でディレクションする
毎回のレッスンを有意義なものにするには、講師主導でレッスンを進めていくのではなく、自分で講師をしっかりディレクションしていくことが重要。レッスンの品質を均質化できるようにしましょう。
<実践方法>
- 自己紹介は1分程度で切り上げる
例/Hello my name is ○○. I work for a consulting firm in Tokyo. In this lesson, I’d like to practice conducting a meeting in English.
- 「文法ミスを最後に指摘して」など、冒頭にフィードバックをリクエストする
例/Since I am not so confident about my grammar and vocabulary, could you check carefully and give me your feedback afterwards?
- 話題が浅くなったら自らトピックを切替える
例/Sorry to interrupt you, but can we go to the next topic?
3. 当日復習する
本当は言いたかったけど言えなかった日本語は、平易な日本語へ言い換えて、自分が使える英語表現のレベルに変換できるようになることが重要。日本語のシンプル化力を鍛えましょう。
<実践方法>
- 言えなかった日本語フレーズをすべて書き出す
言えなかった日本語:「環境は多々変化するため、環境の変化に合わせて自分も変化するべきだ」
- シンプルな日本語に言い換える
シンプル化:「環境が変わった時には、私たちも自身を変化させるべきだ。」
- 言い換えた日本語を英訳する
英訳:「When environment is changed, we also have to change ourselves.」
まとめ
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。最後に、今回のポイントを振り返ると、
- 週1レッスンだけでは伸びない──試合外のトレーニングが欠けているから。
- 目的思考を持つと、自習とレッスンの役割が明確になる。
- 科学的黄金比は インプット 8:アウトプット 2。
次回も、学習者がつまずきやすい"英語学習の落とし穴" を取り上げ、すぐに試せるTipsも一緒にご紹介していきます!
株式会社プログリット
「世界で自由に活躍できる人を増やす」をミッションに掲げ、英語学習サービスを展開。短期で英語力を伸ばす英語コーチングサービス「プログリット」に加え、サブスク型英語学習サービス「シャドテン」「スピフル」「ディアトーク」も提供。英語コーチングサービス「プログリット」は、累計受講者数 2万名を超える。2022年9月、創業6年で東証グロース市場に上場。

