戦略コンサルタント、投資銀行・ファンド、外資系エグゼクティブ、起業家など1000人を超えるビジネスリーダーのキャリアチェンジを支援してきた渡辺秀和氏(株式会社コンコードエグゼクティブグループ 代表取締役社長CEO)が、キャリアアップを目指すビジネスパーソンの疑問・お悩みに答えます。
今回のお悩みは「わが子が社会人として良いスタートを切るために、学生時代に取り組むべきことについて、親はどのようなアドバイスができるでしょうか」です。
Q. わが子が社会人として良いスタートを切るために、学生時代に取り組むべきことについて、親はどのようなアドバイスができるでしょうか
A. 数十年前に比べ、「安定したキャリア」の築き方が変わってきました。今の時代に即したアドバイスをしないと、ミスリードにつながる危険があるため注意が必要です
実は25年以上も解消されていない「新卒社員の早期離職」問題
「せっかく採用した新卒が、あっという間に辞めてしまった」 「若手が入ってきても、すぐにいなくなってしまう」
毎年5月になると、こうした嘆きの声があちらこちらから聞こえてきます。学生を子に持つ読者の皆さんの中にも、心配されている方が多いと思います。
実は、新卒社員の約30%が入社から3年以内に離職する状況は、近年だけに限ったものではありません。バブル崩壊後25年以上も続いており、決して、今の若い世代だけの現象ではないのです。
しかも、この現象は企業の規模に関係なく起きています。キャリア支援を行なう私たちのもとには、総合商社やメガバンクなど、就職人気ランキング上位の企業に勤める20代前半の方からも、毎年多くのご相談をいただいています。
日本の就職活動に潜む「2つの問題」
この現象の背景には、日本の就職活動に潜む「2つの問題」があると私は考えています。
1つめは、多くの学生が自分の「好きなこと」「やりたい仕事」について十分に掘り下げないまま、就職活動を始めてしまう点にあります。もちろん、大半の学生は、エントリーシートや面接の準備に力を入れ、企業説明会に積極的に参加するなど、就職活動そのものには熱心に取り組んでいるでしょう。しかし、ポイントはそこではありません。
当然のことですが、自分の価値観や志向を把握してから就職活動をしないと、自分にフィットする企業には出会えません。もし、企業のブランドや知名度、年収の高さにばかり気を取られて就活をしているのだとすれば、本末転倒と言えるでしょう。
実際に、私たちの会社へご相談にいらっしゃる20代の方々からは、「本当にやりたい仕事ではなかった」という転職理由をよく耳にします。なかには、自分で十分に考えることなく、親や家族の勧めに流されるまま、就職先を決めてしまった――というケースも少なくありません。
内閣府発表の「就労等に関する若者の意識」調査でも、初職の離職理由として1番多いのは「仕事が自分に合わなかったため」となっており、43.4%を占めています(※)。
――2つめの問題は「社会に出る準備不足」