お気づきの方も多いと思いますが、筆者の愛車「ゴルフⅡ」(VW:フォルクスワーゲン)はちょっと車高が高かった。それも、特にフロント側が高いので、フェンダーとタイヤの空間が大きく開いていたのだ。VWの足回りの調整となると、やっぱり日本一の対応力があると確信している件の「COX」に持ち込むのが最良であろう、という考えで秦野にやってきた。
熟練メカニックの診断は?
担当してくれたのはCOXのベテラン、栗原功メカ。最初に試乗した感想は「直進ではゆったりしているけど少し右流れ。ステアリングを切ると少し遅れて曲がりすぎるので、絶えずステアリングを修正しながら曲がっていく感じ。90年台のアメ車的な感じかな。ゴルフの乗り味が出ていない」とのこと。
原因として、車高がフロントは上がりすぎ、逆にリアは下がっていた。測定すると、その差は前後で右が30mm、左が40mmもある。数字の差は見た目以上に大きかった。そのままリアも上げて前後にガードを取り付ければ、「カントリー」(ゴルフⅡのリフトアップ4WDモデル)にできるかも(笑)、というほどだ。フロントのスプリングが、重いクルマ(ディーゼル用とか)のものに代わっている可能性がある。
四輪アライメントテスターを使用しなくてもこのクルマなら確認できるし(リアは調整できないので)、費用面から見てもこちらの方が安い、とのことで、従来の機械式でチェックを行うことに。
トーインゲージを使って測定すると、「トー」(タイヤの前後方向の向き)は前後とも問題なし。
タイヤの倒れ方である「キャンバー角」はポジテブキャンバーになっていて、正面から見ると「V」の字になっている。高い車高とポジティブキャンバーが、さっきの乗り味の原因と思われる。
まずは前タイヤのキャンバー角をネガティブ角の「ハ」の字型に戻す必要がある。タイヤを取り外してみると、ダンパーはノーマル形状のビルシュタインが入っているので、前の車高が上がっている原因はスプリングにある模様。リアは逆に下がっているので、4輪とも足回りを新しくする必要がある、との診断に。費用は20万円前後?
栗原メカから、お店にあるCOXチューンの「up! GTI」(2018年 1.0L直3DOHC ターボ 116PS)がゴルフⅡと同じサスペンション形式(前マクファーソンストラット、後トレーリングアーム)なので、乗ってみては、との提案。COXの”裏山“にある試乗コースで乗ってみると確かに、足は硬いながらも轍などでのゆすられ感がなく、段差通過の上下動も一発で収まる。コーナーでは、十分な接地感を伴いつつくるりと回頭する気持ち良い走りが楽しめた。コニの足回り(すでに在庫なし)やボディダンパーの効果が大きく作用していて、ゴルフが最終的に目指すのはこの感じ、という目標が認識できた
アイバッハのスポーツキットに交換
しばらく待って、やっと集まった各パーツ。アイバッハの前後バネとマイレのステアリングタイロッドはドイツ製、ザックスのアッパーマウントはブラジル製と中国製のものだった。車検も控えていたので、劣化していたブッシュ類やドライブシャフトブーツ、アッパーマウントなども新品に交換してもらった。
仕上がりは上々で、フロントがぐっと下がった姿はこれまでとは全く違う精悍なものに。COX周辺のワインディングを走ってみると、ロールが減るとともに、フロント荷重のままスイッと鼻先が向きを変えていく感じがステキ。サーキット走行にも安心して挑戦できそうな足回りになった。
一方で、助手席の妻からは、荒れた路面での乗り心地に不満の声が。足回りに手を入れたトレードオフの現象ではあるのだが、さあどうする。