住宅価格の高止まりや晩婚化などを背景に、定年を迎えても住宅ローンが残る世帯は珍しくありません。では、60代での平均残高はどのくらいで、完済年齢の目安はいつごろと考えればいいのでしょうか。本稿ではこれらを整理したうえで、老後資金や退職金との兼ね合いをふまえた住宅ローンとの向き合い方を解説します。

60代の住宅ローン平均残高は

金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、二人以上世帯で世帯主が60歳代の住宅ローン残高は、平均で697万円、より実態に近い中央値は300万円でした。

また、残高を階級別に見ると、1,000万円以上1,500万円未満が10.3%、1,500万円以上2,000万円未満が5.5%、2,000万円以上が10.3%と、約4世帯に1世帯は1,000万円以上の残高があります。完済に近づく世帯がある一方で、定年後もそれなりの残高を抱える層が一定数いることがうかがえます。

住宅金融支援機構の「2025年度フラット35利用者調査」によると、フラット35利用者の平均年齢は43.3歳でした。2015年度と2016年度の平均年齢は39.8歳で、そこから2017年度以降は上昇が続き、2024年度には44.5歳に達しています。

2025年度は30歳代以下の利用が増えたことで前年度より1.2歳下がったものの、長期的に見ると、住宅を購入してローンを組み始める年齢は上昇傾向にあるといえます。

何歳までに完済を目指すべきか

では、住宅ローンの完済年齢は何歳ごろを目安にすべきなのでしょうか。かつては「定年までに完済すること」がひとつの基準とされてきました。しかし、住宅ローンを組み始める年齢が上がり、返済期間も長期化する傾向にあることから、リタイア時点で払い終えるのは以前ほど当たり前ではなくなっています。

完済時期に上限がないわけではなく、多くの金融機関では返済を終える年齢(完済時年齢)の上限を80歳未満に定めています。ただ、これは制度上の上限にすぎません。老後は医療費が増えやすく、介護への備えも必要になることをふまえると、理想は65歳くらいですが、現実的な目安として70歳前後までには返し終えておきたいところです。

また、老後資金や退職金とのバランスについてもよく考えておきましょう。まとまった退職金があれば繰り上げ返済に回したくなりますが、全額をローンの返済に充ててしまうと手元資金が減り、その後の暮らしが不安定になりかねません。

まず、年金収入だけで生活費をまかなえるのか、医療や介護への備えは足りるのかを見通しておきましょう。そのうえで、手元にいくら残しておけば安心かを考え、そこから逆算して、退職金のうちいくらまでなら返済に回せるかを判断することが大切です。

定年後の毎月の返済負担を抑える方法は

ここまで、60代の住宅ローン残高や完済年齢の目安を見てきました。ただし、住宅ローンの負担は、残高だけで判断できるものではありません。住宅ローンで一般的な「元利均等返済」は、元金と利息を合わせた毎月の返済額を一定にする返済方法です。返済を続けることで住宅ローンの残高は減っていきますが、毎月の返済額は減らないという点に注意が必要です。

また、固定金利の場合は、金利が固定化されているため、毎月の返済額が変わることはありませんが、変動金利の場合は、一定期間ごとに金利見直しがあるため、返済額が更に上昇してしまう可能性があることも考慮しておく必要があります。そのため、定年後の返済について考える際は、残高に加えて、毎月の返済額が家計に与える影響も確認する必要があります。

では、退職金を使った繰り上げ返済以外に、定年後の返済負担を抑える方法はあるのでしょうか。住宅ローン専門金融機関である日本住宅ローンの担当者に聞きました。

「住宅ローンの返済において、繰り上げ返済以外の方法で負担軽減を考える場合、代表的な選択肢の一つが住宅ローンの借り換えです。一般的には、金利の低い住宅ローンに借り換えることが想定されますが、現在は金利上昇局面のため、変動金利を選択した場合、想定以上に将来の毎月返済額が上昇する可能性も考慮しなければなりません。」

「このような状況における新たな選択肢として、住宅版の残価設定型住宅ローンが挙げられます。住宅版の残価設定型住宅ローンは、将来の住宅価値(残価)をあらかじめ設定し、残価部分を除いた金額を毎月返済していく住宅ローンです。そのため、一般的な住宅ローンと比べて、毎月の返済額を抑えられるという期待が高い商品です。当社においても、2026年7月より『おうちの残価設定ローン』の取扱いを開始しました。」

「その他にも、毎月の返済を利息のみにすることができるリバースモーゲージ型住宅ローンを利用することも選択肢として挙げられます。まずは返済軽減の効果をシミュレーションでご確認いただきながら、比較検討していただければと思います。」

住宅ローン残高だけでなく、毎月の返済額や老後資金も踏まえ、自分に合った返済方法を検討しましょう。