「横浜ヒストリックカーデイ」(YHCD)の会場で見つけた日産自動車「バイオレットバン」は、昔のクルマとは思えないほどの“現役感”を漂わせていた。どんな個体でどういう使い方をしているのか、オーナーさんに話を聞いてみることにした。
「横浜ヒストリックカーデイ」に集まった名車、旧車の写真ギャラリーはこちら
父が乗っていたバイオレット
日産「バイオレット」は、上位モデルである「ブルーバード」の後継として1973年に登場したコンパクトサルーンだ。当初はセダン、クーペ(2ドアセダンとも)、2ドアハードトップの3つのボディがあり、その後、バンもラインアップに加わった。
「バイオレット」という車名は花の「スミレ」を意味する英語だ。当時は紫系のカラーが流行色であり、若い世代を意識したクルマだったという。
バイオレットのセダンは今でも稀に見かけるが、バンにはめったにお目にかかれない。
このバイオレットバン、なぜ、どうやって手に入れたのか。オーナーのイダさんに聞いた。
「もともと父がバイオレットのセダンに乗っていて、親しみを感じていました。父の還暦祝いの際、私の兄がバイオレットのセダンを父に贈ろうとして、『今さらいらない』といわれていたのですが(笑)、そうしたやりとりを見たこともきっかけとなって、私自身がバイオレットに興味を持つようになりました。飲食店をやっていることもあり、セダンよりも実用性の高いバンを探すことにしたんです」
2004年に偶然、雑誌の個人売買欄でバイオレットバンを見つけ、その4時間後には自宅に持ち帰っていというイダさん。まさに即断即決、そのスピード感には驚くばかりだ。当時乗っていた三菱自動車工業「ギャランGTO」から乗り換える形で、1974年式のバイオレットバンを40万円ほどで手に入れた。
バンならではの使い勝手は現代にも通用
購入当初は約1年をかけてサビ取り修理を実施し、日産純正色である「サンオレンジ」にオールペンで再塗装。2019年には台風の影響で瓦礫がボディに当たって損傷したこともあった。一昨年には夏の猛暑の影響でコンプレッサーが故障するなど、数々のトラブルにも見舞われた。
ただ、着実に修理や改修を続け、傷んでいた純正のフロントシートも2025年には補修が完了。その後もさまざまな改良を続けているが、リアシートや内装フロアマットなどは当時のまま、キレイな状態を保っているそうだ。
走行性能や使い勝手はどうなのか、イダさんはこう話す。
「駆動系は、熊谷から横浜まで高速道路で問題なく走行できるほど良好でした。乗り心地もよく、現在でもその走行性能は健在です。荷物をたくさん積めるので、飲食店の仕入れなどでも大活躍しています。52年も前のクルマですが、現代でも充分に通用するほど高い実用性が魅力です」
バイオレットバンは非常に希少な個体だ。中古車情報サイトを調べてみたが、バイオレットバンは1台も出てこなかった。個体数が少ないため、今後は純正部品での修理や改修が難しくなる可能性もある。
この点についてイダさんは、「将来的には、日産が旧車を管理・展示する『ヘリテージコレクション』に譲渡することも検討しています。ただ、今すぐというわけではなく、クルマが動く限りは乗っていこうと考えています」と話していた。
残念ながらバイオレットは1982年に生産が終了し、現在はその車名すら残っていない。ただ、日本の高度経済成長期を陰ながら支えたバイオレットバンが、今もこうして現役でいること自体、いちクルマファンとしてはとても嬉しい。今後も末永く、バイオレットバンで街を駆け抜けていただきたい。























