「S800」はホンダがかつて生産していたコンパクトスポーツカーだ。今となっては貴重な1台だが、S800との日々の付き合い方や魅力、入手した経緯などをオーナーに聞いた。
本田宗一郎のクルマに乗りたい!
2026年2月、晴天のもと開催された「横浜ヒストリックカーデイ」(YHCD)で鮮烈なイエローボディのS800を発見した。あまりに綺麗で状態がよさそうだったので、近くにいたオーナーさんに話しかけてみた。
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S800は1966年から1970年まで生産されたホンダのスポーツカー。写真の個体は1966年式なので、今から60年前のクルマということになる。
当時の主要諸元を調べると、ボディサイズは全長3,335mm、全幅1,400mm、全高1,200mm、車両重量は720kg。総排気量791ccの水冷4サイクル4気筒エンジンを搭載し、最高出力は70PS、最大トルクは6.7kg-mとなっている。
ホンダ製の古いスポーツカーに乗りたいというのであれば、「S2000」という選択肢もあったのでは? そんな質問にオーナーのフクダさんは、「いえ、本田宗一郎が作ったクルマがよかったので」と即答。S800を入手した経緯をこう振り返ってくれた。
「私はもともと、本田宗一郎の大ファンです。宗一郎さんが手掛けたS800は、なんとしても入手したい1台でした。ただ、S800に憧れ始めた25年前は、マニュアル車の運転に自信がなく、購入を断念しました。マニュアルで運転免許を取っていながら、マニュアル車をほとんど運転したことがなかったのです。そこで、アウトビアンキのマニュアル車を購入して練習し、S800を迎え入れる準備を整えていきました」
フクダさんは約9年前、およそ300万円で念願のS800を購入したという。
維持費はそんなにかからない?
60年も前のクラシックカーとなると、維持費が気になる。フクダさんに実際のところを聞いてみた。
「かなり維持しやすい方だと思います。クラシックカーマニアは純正部品にこだわる傾向がありますが、私はそうではありません。サードパーティ製の部品なら比較的、容易に入手できますし、外観さえ当時のままであれば、中身は新しくても問題ないと考えています。クラシックカーを維持する負担を軽くするために必要なのは、純正部品にこだわらないことだと思います」
クラシックカーはメンテナンスコストがかかると思いがちだが、純正部品にこだわらなければ、いろいろと工夫のしがいがあるというオーナーさんの考えには賛同したい。
適切な改造を施すことで、現代のクルマに匹敵する快適性も確保できるという。例えば、トランク内に設置したクーラーだ。トランク内の容量はわずかに圧迫されてしまうものの、日本の夏を走るにあたり、冷房の有無は死活問題になる。
とはいえ、ソフトトップでは近年の夏の暑さには対応しきれないそうで、今年はハードトップを装着し、猛暑をしのげるか試す予定であるとのこと。S800に合うハードトップはすでに入手済みだという。
エンジンフィーリングはバイクと似ている?
S800で特に気に入っている部分は?
「私はバイクにもよく乗るんですが、S800のエンジンフィーリングは、自分のバイク(ホンダの4気筒)と一致しているんです。乗り心地がとても自然で、いつまでも乗っていられます。燃費は18km/Lくらいで、この年代のクルマとしてはかなり良好です。スマホと連携すればカーナビも不要ですし、愛好家同士のツーリングでは一度に400kmを走行したこともありますが、非常に快適でした」
入手が難しい純正部品にこだわるのではなく、クラシックカーでも安心して乗れる状態を優先しているというフクダさん。維持のハードルが下がれば、名車に長く乗り続ける難易度も下がる。
憧れのクルマを長く所有して楽しんでいくためには、ある程度の妥協が必要なのは確かだが、クラシックカーが持つ文化的価値と維持のしやすさを両立させている寛大な心持ちと行動力はいろいろと参考になった。フクダさんのS800への愛着は、これからも消えることはないだろう。




















