11月14日は、国際糖尿病連合と世界保健機関が創設し、国連も認定した「世界糖尿病デー」です。その前日の11月13日、「CGM×食事で挑む、一人ひとりの糖尿病ケア」と題された記者発表会が開催されました。
この発表会は、糖尿病患者が自身の体の状態を把握するために利用するCGM(持続グルコース測定)機器を販売するアボットジャパンが開催したもの。「日ごろの食生活と糖尿病との関係について多くの方に理解を深めていただきたい」という趣旨に賛同した藤岡弘、さんを特別ゲストに迎え、藤岡さんが開発した食事療法のオリジナルメニューのお披露目を行いました。
継続的に血糖値を測定する「CGM」
アボットジャパンは医療関連でさまざまな事業を展開しています。そのひとつが、ダイアベティスケア、すなわち糖尿病のケアです。今回の発表会のテーマに挙げられているCGMは、糖尿病患者が自身の身体の状態を把握するために行う検査/治療管理のひとつで、アボットジャパンが販売する「Freestyleリブレ」シリーズは、日本国内でも多くのユーザーがいるCGMデバイスです。
糖尿病患者/糖尿病予備軍の人は血糖値を管理する必要があるため、患者自身が指先に針を刺すなどして少量の血液を採取し、血糖値を測定するということを頻繁に行うのが一般的です。しかし、器具が改善されて負担が小さくなっているとはいえ、この穿刺による血糖値測定は痛みがあり、痕が残ってしまうこともあります。さらには穿刺器具や測定機器の携帯が必要という負担もあり、そして何より、この方法では測定を行うそのときどきの血糖値しかわかりません。
こういった穿刺測定の欠点を補うことができるのがCGMです。CGMは、センサーを上腕部に貼り付けて常時測定を行い、そのデータをBluetoothなどを介してスマートフォンで読み取るというものです。センサーを貼り付けていることで多少の違和感はあるといいますが、穿刺のような痛みはなく、継続的な測定ができるというのがメリットになります。
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今回の発表会のテーマであるCGM(持続グルコース測定)の詳細。穿刺測定のわずらわしさがないというのも利点ですが、糖尿病治療においては継続的な測定ができるというのが大きなメリットになります。なお、CGMで測定されるのは血液中のブドウ糖濃度ではなく間質液中のブドウ糖濃度であるため、厳密にいえば血糖値とは異なります。しかし間質液中のブドウ糖濃度は血糖値の近似値として利用でき、日常的な管理においては十分に有効であるとされています
このCGMが、糖尿病においてどういう意味を持つのかを説明してくれたのは、順天堂大学大学院 医学研究科 代謝内分泌内科学教授の綿田裕孝先生。綿田先生は、「CGMを装着すると、日常の行動が血糖値にどう影響しているか理解でき、行動変容に向かうことが期待できる」といいます。
例えば、食事について。CGMを利用すると、どんな食事をとったときに血糖値がどう変化するのかということがはっきりわかります。となれば、血糖値が上がるような食事を避けたり、食べ方を改めたりという対策ができるようになります。また、運動についても、食事をしたあとに適度な運動を行えば血糖値の上昇を抑制できるので、運動を継続するモチベーションが高まります。
もちろんこれまで糖尿病の治療を行ってきた患者・予備軍の人たちも、食事のとりかたによって血糖値が変化すること、運動によって血糖値の上昇を抑えられることは知識として知っていたでしょうし、食後などに行う血糖値の測定によってもそれを確認したはずです。しかし、CGMにより、食事や運動の際にリアルタイムで血糖値が変化するのを実感するというのは、モチベーション維持に非常に有効だというわけです。
日本糖尿病学会が5年ごとに作成している「対糖尿病5カ年計画」では2025年から2029年までが第5次計画の期間となっているそうですが、その中では「AIやCGMデータを活用した診療支援」が未来の糖尿病マネジメントにおいて活用すべき技術として挙げられています。
綿田先生の講演の中では、2型糖尿病(※)患者を対象に実施した調査のデータも紹介されました。「CGM経験者の8割が血糖管理ができていると回答し、理由に薬物・食事に次いでCGMを挙げている」「CGM経験者は血糖変動と食事・運動・睡眠の関係がわかりやすいことをメリットに感じている」「CGM経験者の約8割が前向きな姿勢を示している」といったように、CGMを利用することが負担を軽減し、治療へのモチベーションを高めているというのは、患者の側からも実感されているようです。
なお、綿田先生からは、糖尿病治療における血糖値の管理について、血糖値が下がりすぎる“低血糖”の状態も避けなければならないという話もありました。低血糖時にはCGMではなく穿刺で正確な血糖値を測定すべきですが、CGMデバイスには低血糖を警告する機能を備えているものが多く、機器によっては「このままいくと低血糖の状態になりそう」という予測に基づいて警告してくれるものもあります。低血糖リスクの高い患者さんにとっては、この点からもCGMの利用を検討したいところです。
藤岡弘、さんが開発したふたつのメニューは先生たちも高評価
さて、今回の発表会では、藤岡弘、さんが開発した「糖尿病患者さんのための食事レシピ」の発表がいわばメインイベントになっています。そのレシピ開発にあたって監修を務めたのが、医療法人社団青泉会 下北沢病院の栄養科科長である石田千香子先生です。
石田先生は「糖尿病の食事療法には『量を減らす』『好きなものを我慢しなければいけない』『自由を奪われる』という悪いイメージがありますが、量や食べ方の工夫で調整できることも多いんです」と言います。石田先生は、CGMを装着する患者さんとの栄養相談の際、献立や食事記録を持ってきてもらって血糖値の変動と照らし合わせているそうです。そうやって記録を確認することで、具体的で細かい栄養相談ができると話していました。
そして登場したのが藤岡弘、さん。藤岡さんは「未知の挑戦、初めての経験なんで、ちょっとドキドキしているんですが、今回はなんとか自信のある料理を考案できたかなと思っています」とコメントしながら、目的に合わせて考えたというふたつのメニューを紹介しました。
まず、「筋力維持と健康体重のためのたんぱく質メニュー」として開発したのが、「歩く力を支えるワンパン高タンパク蒸し鶏」。フライパンで蒸すだけでやわらかくしあがり、野菜と合わせて手軽に作れるのがポイントとのこと。石田先生は監修の際、「鶏むね肉で栄養のバランスがいい」「季節感を楽しんでもらえるよう、さつまいもや山芋のような旬の食材を取り入れる」ということを意識したそうです。
そしてもうひとつが、「『朝食や昼食がしっかり摂れない方』に向けた、夕食に不足分を補えるメニュー」となる「一椀で栄養満点!具材たっぷり野菜スープ」。野菜をたっぷり入れて、一回のスープでしっかり栄養を摂れるようにしたという一品。石田先生は、「不足しがちなたんぱく質と野菜をとれ、脂肪が控えめなのがポイント」と言い、「夕食は、朝食や昼食で取れなかった栄養素を担うという意識をもつといいんです」と付け加えていました。
藤岡さんはこの野菜スープについて、「豆乳スープにしたりカレーにしたりとアレンジも楽しめる」と話していました。藤岡さんのご家族がいちばん好きなのは、雑穀雑炊にすることだとか。
石田先生は、前向きに食事療法に取り組むヒントとして、「好きなものを我慢しなければならないと思い込んでる人が多いですが、絶対に食べてはいけないものというのはないんです。継続できる食事を提案することが重要。どう食べると、どういう血糖の変化が起きるのか、CGMを活用しながら一緒に見ていくことにしています。CGMを使って食事療法の負担感が減ったという患者さんは多い。否定的な思い込みがつきものなので、まず自身を知ることから始めてもらいたい」と話していました。
綿田先生も、「食事療法を継続しようと思ったら個人の嗜好に合わせる必要がある。無理して食事療法を突き詰めすぎると続かない。CGMをつけると自分の意識が芽生えて、自発性を促すことにつながる。そういう治療が大切」と、CGMで自発的に取り組む姿勢が生まれることを強調していました。
最後に藤岡さん。石田先生と綿田先生にレシピが好評だったことを受けて、「うれしかったです。食べるということは生きるということなんで、健康を意識しながらやってきてよかった」と笑顔を見せていました。











