自宅を売却して現金化し、そのまま賃貸として住み続ける「リースバック」が新しい選択肢として浮上しています。リタイア後の資金確保策として知られていますが、ほかにも多様な活用法があることが魅力です。リースバックのメリット・デメリットを解説します。
「リースバック」の仕組み:自宅を売って住み続けるメリット
リースバックとは、自宅を売却してから賃貸契約を結ぶことです。物件は売却しますが、そのまま自分自身で借りる状態になるため、引っ越しをする必要はありません。
リースバックのおもなメリットを4つ紹介します。
まとまった資金が手に入る
老後は介護などの費用を不安に思う方も多いのではないでしょうか。リースバックでは自宅を売却することで、数百万~数千万円のお金が手に入ります。
これだけの資金があれば、サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)、有料老人ホームといった施設に入居しやすくなるでしょう。
賃貸の借りにくさを回避できる
シニアになると、賃貸住宅を借りにくくなる傾向があります。少子高齢化の進行によって状況は改善しつつありますが、それでもシニアに対して貸し渋りをする大家さんは多くいます。
リースバックであれば、自宅にそのまま住み続けるため、借りにくさを心配する必要はありません。
税金や維持管理の負担が減る
リースバックにすると、固定資産税や都市計画税などの負担がなくなります。また、修繕などの維持管理費を負担する必要もありません。
売却したことを周囲に知られにくい
リースバックでは第三者が自宅に住むわけではなく、住人はそのまま住み続けられます。このため、売却したことが周辺にバレにくいのも特徴です。
リースバックとリバースモーゲージとの違いは?
リバースモーゲージとは、自宅を担保として、金融機関から融資を受けるサービスです。自宅に住み続ける点ではリースバックと同様ですが、売るわけではないため所有権は残ります。
返済は利息のみで、契約者が死亡すると自宅の売却などによって元金が返済される仕組みです。こちらも老後の資金確保を目的とした高齢者に利用されています。
リバースモーゲージは、必要な分を少しずつ借り入れることができるため、生活費や修繕費などを補いたい方に向いています。
一方、上述のリースバックはまとまった資金を手に入れて自由に使いたいというニーズ向け。賃貸物件や有料老人ホームへの入居に利用することも可能です。
意外な活用法!「攻め」の資金調達としてのリースバック
リースバックで自宅を売却して手に入ったお金は、融資とは異なり使い道に制限はありません。よって、老後資金だけでなく、事業資金・教育資金などさまざまな使途に使える天が大きなメリットです。
たとえば自宅で事業を営んでいる場合、リースバックであればそのまま居住しながら事業を継続できます。売却で得た資金を新たな事業展開や設備投資に回すことも可能です。もし借入金が多い場合は、まとまったお金で返済するのもよいでしょう。
知っておくべき落とし穴:将来的な家賃上昇と売却価格のリアル{#ID4}
リースバックはメリットだけではなく、デメリットもあります。双方をよく把握した上で、どちらが大きいかを判断することが大切です。
家賃上昇のリスク
リースバックでの家賃(自分が払う家賃)は、一般的な相場より高くなる傾向です。理由は、売却価格が賃料設定の基礎となるためで、売却価格が高いほど家賃も高くなります。
また、日本では都市部を中心に家賃が上昇し続けています。とくに首都圏では、シングル向け・ファミリー向けを問わず、家賃が上昇トレンドにあります。
リースバックで自宅に住み続けるとしても、将来は家賃の上昇が大きな負担となる恐れがあります。
売却価格が安くなる
リースバックで売却する場合、市場価格より安くなってしまう点も要注意です。一般的に、市場価格の70%程度の価格になるケースが多いとされています。
戸建てかマンションか、立地条件が良いかなどによって異なりますが、かなり安いと感じる方が多いのではないでしょうか。
ただし、すべての業者が同じ査定額を出すわけではないため、複数の業者に依頼して相見積もりを取ることが重要です。
住み続けられないリスクもある
賃貸借契約には、普通借家契約と定期借家契約があります。リースバックでの賃貸借契約では、定期借家契約となるケースも多いのです。
普通借家契約は契約期間が満了しても更新をするのが前提ですが、定期借家契約は、期間が満了すると契約そのものが終了します。
再契約ができなかったり、できたとしても家賃が大幅に上昇したりするリスクがあります。
リースバックを契約する前にここをチェック!{#ID5}
リースバックのデメリットに関しては、以下の対策が重要です。
契約期間や更新について確認する
リースバックでは賃貸借契約を結ぶことになります。契約の期間、更新時の家賃改定の有無、家賃が値上げされる条件などを、契約書でしっかり確認しましょう。
また、契約の種類が普通借家契約か、定期借家契約かも注意が必要です。
資金計画をシミュレーションする
将来の収入やライフプランを検討し、事前にシミュレーションをすることも重要です。業者から見積もりを出してもらったら、売却資金で家賃を払い続けられるのか、家賃がある程度上昇しても住み続けられるかを慎重に判断しましょう。

