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ゲームの世界をリアルにまとう! ハミルトン×コジマプロダクションのタイムピース「ボルトン デス・ストランディング2」開発の舞台裏

Updated JUN. 27, 2025 16:06
Text : 倉本春
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ウォッチメーカーのハミルトンは、6月26日発売のPlayStation 5用ゲームタイトル『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』に登場する時計を現実のタイムピースとした「ボルトン デス・ストランディング2 リミテッドエディション」を発売した(限定2,000本、24万6,400円)。

初代の『DEATH STRANDING』(2019年発売)といえば、伝説的なゲームクリエイター・小島秀夫監督(コジマプロダクション)による世界的ヒット作。今回、最新作のゲーム内に登場するアイテムを現実世界でも自分の腕に装着できるようになった。ハミルトンとコジマプロダクションのコラボレーションは、いかにして生まれ、どのようにして形になっていったのか。ハミルトンのCEO、ヴィヴィアン・シュタウファー氏に話を聞きつつ、開発の舞台裏をひもといていく。

  • ハミルトンのCEO、ヴィヴィアン・シュタウファー氏。今回のコラボレーションについて熱く楽しく語ってくれた

  • 『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』のゲーム内に登場するリストデバイスを、リアルの機械式腕時計として実現した「ボルトン デス・ストランディング2 リミテッドエディション」

なぜハミルトンとコジマプロダクションがタッグを組んだのか?

ハミルトンの腕時計は、これまで多くのハリウッド映画に登場している。ご存じの読者諸氏も多いだろう。1932年の映画『上海特急』にてマレーネ・ディートリッヒが着用したことを皮切りに、500本以上の映画やTVドラマに時計を提供してきた。

とりわけ重要な転機となったのは、1968年の映画『2001年宇宙の旅』だ。それまでハミルトンは既存のモデルを映画に提供していたが、この作品ではスタンリー・キューブリック監督の要請によって、ハミルトンが映画のために時計をゼロからデザイン、制作した。

「(ハミルトンは今まで多くの映画に時計を提供してきたが)近年はゲームが映画のように情緒的で豊かな世界観を持つようになり、両者のボーダーがどんどんなくなってきています。ハミルトンは、映画やゲームとコラボレーションすることが大好きなのです」(シュタウファー氏)

そうした流れの中でハミルトンは、4年前(2021年)に初めてゲームの世界とリアルな時計の共演を決意(※)。コラボレーション第2弾のパートナーとしてラブコールを送ったのは、世界でもカリスマ的な人気を集める小島秀夫監督が率いるコジマプロダクションだった。

※:2021年の『Far Cry 6(ファークライ6)』に、「カーキ フィールド チタニウム オート ファークライ6 リミテッドエディション」を提供。現実世界では1983本限定で発売された。

  • 小島秀夫監督のインタビュービデオと、前作「DEATH STRANDING」のフィギュアとともに

小島監督がスタンリー・キューブリックの大ファンだったこともあり、ハミルトンからのオファーは実にスムーズに受け入れられた。

「今回のコラボレーションは、ハミルトンが映画と深くかかわった1968年のキューブリック作品から始まっているともいえます。半世紀を経て、ゲームという新しい舞台で再び実を結んだ象徴的なコラボレーションです」(シュタウファー氏)

ゲーム世界のこだわりをリアルな形に

「ボルトン デス・ストランディング2 リミテッドエディション」が形になるまでには、なんと2年以上の時間を要している。ハミルトンとコジマプロダクションのコラボレーションが決まり、制作の起点となったのは、コジマプロダクションのアートディレクター・新川洋司氏によるスケッチだ。

新川氏の初期案では未来的なデジタルウォッチだったが、小島秀夫監督がアナログ、しかも機械式への強いこだわりを見せたことで、最終的にアナログ時計として開発が進められることになった。

  • 新川洋司氏による最初のスケッチ。当初はより未来的な印象のデジタル時計だった。ちなみに、ハミルトンは世界初のLED式デジタル時計「ハミルトン パルサー」を世に送り出したメーカーでもある

ゲームの世界観を取り入れるため、ハミルトンとコジマプロダクションの間では約2年にわたって、試作を含む50以上のデザイン案がやり取りされた。

通常、時計メーカーはムーブメントやケースサイズなど仕様上の枠を前提に設計を行うが、映画やゲームのクリエイターたちはそのような枠に縛られない発想を持っている。シュタウファー氏は「そうした自由な視点に触れること自体が、私たちにとって刺激的で貴重な経験だった」と振り返る。

  • 完成した「ボルトン デス・ストランディング2 リミテッドエディション」の裏を見ると、ムーブメントを固定するパーツに凹凸があるテクスチャーを刻んでいるのがわかる。これはゲーム内で象徴的に出現する「タール」を表現。通常では見えない部分にまでゲームの世界観を追及している

たとえば、コジマプロダクションからの案のひとつには、機械式の時計にLEDを組み込むといったアイデアまであった。時計メーカーの視点では、クオーツ式と違って電池を必要としない機械式時計に、わざわざデジタル部品を組み込むという発想はなかなか生まれない。こうしたアイデアに向き合い、実現可能なプロダクトに昇華させることはハミルトンにとっても挑戦であり、新たな創造の糧になったという。

  • 写真の最左のイラスト案では機械式の時計にLEDを配置しているのがわかる

  • 製品版のムーブメントには、3針の自動巻きで80時間のパワーリザーブを持つ機械式ムーブメント「キャリバーH-10」を採用。磁場や衝撃への耐性の高さが「終末期の過酷な世界」にぴったりとされた

身に着けるリアルな時計として高い完成度も実現

「ボルトン デス・ストランディング2 リミテッドエディション」のデザインは、約1世紀の歴史を持つハミルトンのアイコン的モデル「ボルトン」からインスピレーションを得たという。

ケースやブレスレットの素材には、ゲーム世界の終末的な印象を表現する頑丈かつ軽量で未来的な印象も与えるチタンを採用。そして、なんといっても目を引くのが、7つのパーツに分かれたサファイアガラスの風防だ。

  • ハミルトンのアイコンともいる「ボルトン」とともに

メインとなる風防は中央にカーブを持たせ、左右に3枚ずつ異なる角度でサファイアガラスを配置するという複雑な設計だ。風防を複数のパーツに分けることは、実際の「製品」としてのクオリティ、特に防水性や堅牢性の確保に高い壁となって立ちはだかった。

ハミルトンの開発陣は試行錯誤を重ね、克服。そうした苦労によって、「ボルトン デス・ストランディング2 リミテッドエディション」はさまざまな角度から光を反射し、見るたびに異なる表情を見せる唯一無二のデザインとなったのだ。

  • 太陽の位置や見る角度によって異なる表情を見せる「ボルトン デス・ストランディング2 リミテッドエディション」

  • 風防に使われる7枚のサファイアガラス。堅牢性と防水性の実現に苦労したという

もちろん、ハミルトン自身もアイデア創出の場に積極的に加わっている。一例として、「ボルトン デス・ストランディング2 リミテッドエディション」は縦長ケースゆえにありがちな、「手首の上で時計が回ってしまう」という装着時の不安定さを、ブレスレットの根本に絶妙な角度をつけることで解決している。随所に見られる使い心地の良さを高めるアイデアは、130年を超える歴史を持つハミルトンだからこそともいえるだろう。

  • 一見すると目立たないケースとブレスレットの角度にも、長年にわたる時計作りのノウハウが生かされている

  • 中留は観音タイプ

加えてハミルトンがこだわったのが価格。素材から厳選したコラボモデルだが、ハミルトンとしてはあくまで「2,000ドル以下」という販売価格で開発を進めた。これは「手の届く範囲で語れる時計を届けたい」というブランドの信念に基づくもの。

「100万円以上のモデルなら多くの仕様を盛り込めますが、ハミルトンを選ぶユーザーが実際に手に取れる価格帯であることが重要でした」(シュタウファー氏)

今回のコラボレーションを実現する際に、もっとも難しかったことは? と尋ねたところ、シュタウファー氏は「一番の難問は、いつを『完成』と決めること」と微笑む。今回のプロジェクトでは、最終形を決定することがもったいないと感じるくらい、次々とすばらしいアイデアが生まれ続けたという。

ゲームクリエイターの尽きない情熱と創造力、ハミルトンの技術力と実用的な視点――。それらを惜しみなく注ぎ込んで生まれたこのモデルは、まさにゲーム世界と現実をつなぐタイムピースだ。

「ハミルトンブティック 東京 キャットストリート」で特別展示

「ボルトン デス・ストランディング2 リミテッドエディション」の実機をはじめ、アートディレクター・新川洋司氏のスケッチ、開発過程の多彩なプロトタイプなど、貴重な資料を見られる。入場は無料だ。

  • 開催期間:2025年6月26日(木)~7月7日(月)
  • 営業時間:11:30~20:00 ※初日のみ15:00オープン
  • 場所:ハミルトンブティック 東京 キャットストリート

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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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